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大魔術師をお菓子で釣りました

そして、翌日、私は侯爵家の馬車でイングリッドとエルダの3人で馬車で王宮に向かった。

私と一緒に乗れなくてフィル様は不満タラタラだったが、アルフたちの馬車に乗ってもらった。

空は今にも雨が降りそうなお空なんだけど。ちょっと幸先が悪すぎない?


「大丈夫だって、アン! あなたならできるわ」

エルダが根拠のない慰めくれるんだけど、機嫌の悪いガーブリエル様に、お菓子食べさせる事なんてできるんだろうか? 私は全く自信がなかった。




魔術の塔の空は今にも雨が降りそう、いや、違う、火の粉が本当に降っているんだけど。


「あちいいい」

火達磨になって飛び出してきたのはヴィルマル師団長だった。


イングリッドが躊躇なく頭の上から水魔術をぶっかける。


「ありがとう、助かったぜ」

濡れ鼠になりながら師団長がお礼を言った。


「大丈夫ですか?」

「これが大丈夫に見えるか」

確かに大丈夫には見えない。


「あのう、ヴィルマル様」

「嫌だ。絶対に無理」

私は声をかけただけなのに、聞くまでもなく断られてしまった。


「ヴィルマル様、まだ、何も申しておりませんが」

「どのみちガーブリエル様を呼んできてくれっていうんだろ? それは絶対に無理だ。いくら俺でも、怒ったガーブリエル様に殺される!」

せっかく火の粉を被らないで、慣れているヴィルマル様にガーブリエル様を呼んできてもらおうと思ったのに、あっさりと断られてしまった。


魔術師たちも皆、腫れ物を触るような感じで、ガーブリエル様の部屋に近づこうとはしていなかった。

と言うか、全員魔術の塔から避難しているんだけど。


そんな中、やれっていうの?


私はエルダとイングリッドを見ると

「アン、あなたがやるしか無いわ」

「そうよ。魔術師の皆のためにもぜひとも行くべきよ」

二人は他人事だ。


「ええええ! それは私でも無理なんじゃ」

「大丈夫、あなたなら出来るわ」

「ちょっとエルダ、何よ、その根拠のない理由は!」

「でも、このお菓子は母の自慢の逸品なのよ。ひとくち食べてみてよ」

私は誤魔化された上に、爪楊枝に刺された葛菓子を口に強引に入れられた。


それは半透明のプヨプヨ震えた外見だが、口の中に入れるとふんわりと溶けてとても甘かった。

「これ、むちゃくちゃ美味しい」

私は思わず口に出していった。


「でしょ! アン、あなたにはこのお菓子5つ上げるから、頑張って」

エルダが言うんだけど。


「ちょっとエルダ。そらあこのお菓子は美味しいけれど、お菓子5つと命とどちらが大切だと思うのよ」

私が文句を言うと


「判った。10個上げるから」

ええええ、倍になっても、行くわけ・・・・いや、これ10個なら価値があるかも・・・・障壁を張っていけば良いだろう。


私はあろうことか、命よりもお菓子10個を取ったのだった。



イングリッドとエルダは能天気にも手を振ってくれるけど、こちらは命がけだ。

私は火の海になっている魔術塔1階を歩いてガーブルエル様の部屋の前まで歩いた。


そして、ノックをする。


返事は当然のごとくなかった。


仕方なしに、扉を開けると次の瞬間火の玉が飛んできたのだ。


「げっ」

私は一瞬でそれを避ける。後ろは魔術師団長以下歴戦の兵がいるのだ。なんとかしてくれるだろう。


「えっ」

「アン!」

「避けるなよ!」

何か言っているが、当然被害は皆で被らないと。私一人で対処するのは無理だ。

後ろが大声で騒がしくなるが、爆発音がした気もするが、気にしない。怒り狂ったガーブリエル様の前にか弱い女の子を一人で行かした罰なのだ。


まあ、なんとかしてくれるだろう。


次々に火の玉が飛んでくるがそれを全て避ける。


「おい、アン」

「いい加減にしろ」

後ろが煩いが無視だ。



「ガーブリエル様」

私が声をかけるが、


「今忙しいのじゃ。部屋に入ってくるな!」

ガーブリエル様の罵声が聞こえる。


「ええええ! でもこのお菓子美味しいですよ」

私は盆に載せてきたお菓子のうちの一つを食べた。


「美味しい」

本当に美味しいのだ。私はニコリと笑った。


ガーブリエル様の手が止まってこちらを見た。よしよし、その調子だ。


「でも、忙しいのなら仕方がないですよね。エルダのお母様の自慢の逸品ですのに、あっ、本当に美味しい」

もう一つ食べる。


「私は忙しいのじゃ。菓子なら置いていけばよかう」

「ええええ! でもこんな熱いところではすぐに溶けてしまいます。冷やして食べないと」

「なんじゃと」

「美味しいです」

私は次々にお菓子を食べる。もう殆ど残っていない。このお菓子食べだしたら止まらない。


「儂の分はどこじゃ」

「ヴィルマル様のところにおいておきましたけど、でも、周りに魔術師団の方々が群がっておられましたから、早くいかれないとなくなるかも知れません」

「な、なんじゃと」

私の言葉を聞いたその瞬間だ。


ガーブリエル様が、私の目の前から転移で消えた。


「ギャッ!」

後ろからヴィルマル魔術師団長の悲鳴が聞こえた。

後ろを振り返るとガーブリエル様は倒れたヴィルマル魔術師団長の上に座って、お菓子を食べようとしたいた。


私はホッとした。これで少しはガーブリエル様の機嫌も直るはずだ。



外に出るとヴィルマル様を椅子にしてガーブリエル様はお菓子を美味しそうに食べていた。


それからヴィルマル様ら魔術師達は最高級の緑茶を準備しろとか、食器が足りないとか、ガーブリエル様の為に王宮に使い走りさせられていたのだった。


ここまで読んで頂いてありがとうございます。

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私の

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しかし、フランはそもそも前世は病弱で、学校にはほとんど通えていなかったので、女たらしの王子の事は諦めて青春を思いっきりエンジョイすることにしたのだった。

しかし、その途端に態度を180度変えて迫ってくる第一王子をうざいと思うフラン。
王子にまとわりつく聖女、
更にもともとアプローチしているが全く無視されている第二王子とシスコンの弟が絡んできて・・・・。
ハッピーエンド目指して書いていくので読んで頂けると幸いです。
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