0009 あれあれ
「無くなった腕を治せるのですか?」
腕くらい治せますよ。相手は限定されますが。
「まあ、条件があえば治せますね」
「どんな条件ですか?」
説明するのに少し抵抗がある。俺の力はあれだが、軽く口にできることではない。
「18歳未満のあれです」
「ああ…」
それで納得されるのもなんか嫌だな。
「腕以外でも治せたりしますか?」
イイノさん、近いです。顔を近づかせすぎです。
「生きていれば怪我とか病気は治せますよ。それがどんな怪我でも病気でも。死んでても髪の毛1本とか、爪の一かけらでもあれば1日で復活できますね。まあ、魔法の効果があるのは18歳未満のあれなんですけど…」
魔法の説明をする度にあれを言わないといけないのかなあ。
「花太郎様、私と一緒に友人のところまで来ていただけませんか?」
「いいですよ」
断る理由もないですし。
「コオリという魔法使に会っていただきたいのです。少し遠いのですが…」
魔法使のコオリさんか。俺の頭の中に彼女の現在の場所が浮かぶ。
例によって、あれである。この世界のあれの居場所ならすべてわかるというやつ。ああ、確かに少し遠いかもしれない。
「馬車を用意しますので、お待ちください」
「いや、転移魔法で行きましょう」
馬車の準備大変でしょうし。
「転移魔法…!? 転移魔法が使えるのですか?」
転移魔法くらいできますよ。ただ、条件はあれですが。
「ええ。条件付きですけど」
「条件というのは」
「まあ、あれです」
正直、何回も言いたくなかった。
一応、俺はまともな人間のつもりなんだ。18未満の処女を連呼するのは異常者以外の何者でもない。
「何か持って行く物はありますか?」
「特にはありません」
「では、参りましょう」
魔法使のコオリさんのところへ。
「『テンイ』」
俺は転移魔法を使った。
描くべきことを描いて、描かなくていいことは描かないというのは小説でも絵でも基本だとは思いますが、難しいですね。地の文の安定と生きた会話。課題はいっぱいです。