0008 カイフク
「秘技の運用について、今後の方針が決まりましたのでお伝えに参りました」
イイノさんが皇帝とその他の偉い人たちの会議の結果を伝えに来てくれた。
「どんな感じなんでしょうか?」
どうなんだろうね。使わないわけにはいかないだろうし。どんな感じに使うのかがメインの会議だったとは思うけど。
「古代帝国の秘技を使い、魔物を倒すことが正式に決定しました。そのために騎士団、魔法使団から希望者を募ることになりました」
希望者に命を削らせて秘技を使わせ、魔物を退治する。残酷なようだが、使わなければそれ以上の犠牲がでる。犠牲を最小限にするためには必要なことだろう。
「そうですか」
始めから命を削ること前提で戦うというのは、軍属の人でもなかなかできることではないだろう。補償とかはちゃんとしてあげて欲しい。
「私の友人たちも希望し、帝国のために秘技を使い戦うと言っていました」
なんて、声をかけていいかわからない。
「友人たちが命懸けで戦場へ行くのに、私だけ安全な場所にいる。私も騎士なのに」
そういえばイイノさんも騎士団の人だったなあ。騎士なのに俺の補佐とかわけのわからん仕事に就かされたのでは屈辱だろうな。
「魔物に腕を喰い千切られてさえなかったら、私も命を懸けて戦える」
左腕は魔物の戦いで失ってたんだ。気にはなっていたけどさすがに聞けなかった。魔法がある世界なのに治さない理由も。お金がないとか、階級が上の人から優先して治すとか、ルールがあるのかな。
「悔しいです」
イイノさんの目から涙がこぼれ落ちた。
「すみません。お見苦しいところを」
「いいえ」
難しいことはわからないけど、とりあえずイイノさんの左腕を治せば解決するのかな。
「イイノさん、少しいいですか?」
俺はイイノさんへ手をかざす。
「『カイフク』」
18歳未満の処女にしか効果がない回復魔法をイイノさんにかける。イイノさんの左腕が完全に再生した。
「腕が治った…」
「これで戦えると思います」
がんばってください。イイノさん。
8日連続投稿達成! がんばります。