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探偵・志木仙水  作者: キチ右衛門
鮮血の病棟
2/10

魔が蠢く病院

入院してから一週間が経とうとしていたが、歳のせいか怪我の治りが遅いらしい、そう私は感じていた。


何事もなく過ごす平日の昼間、いつもなら自身の探偵事務所で煙草をふかしているか、たいして好きでもないコーヒーを格好をつけて飲んだりしている時間帯だ、まぁ自身の探偵事務所とは云ったが、私自身、日本中を飛び回っている人間なので決まった定住地などは無い。


その地に長期滞在をするだけであり、住むわけではない、周期的に云うと、3か月に一回程のペースなのだが、今回の滞在日数は間違いなく過去一番になるだろう。


毎回、安くて古びた物件を特別に3ヶ月契約で借りて、志木探偵事務所として活動している。


私が日本中を飛び回っている理由は、特と言って理由はないのだが、強いて言うとするならば、単に旅行したいなーと思っているからである、仕事関連で引っ越しをしたことは一度もない。


そうとなると私は探偵ではなく旅人が本業なのでは……?でも答えはnoなんだ、だって旅人は職業ではないでしょう?だからしがなく、まぁ仕方無く探偵をやっている訳だ。


こうやって自分の事を振り返ると、色々な事件に巻き込まれたな、と思い出してくる。


猟奇殺人事件から下着泥棒の追跡などホントにオールジャンルで依頼を引き受けてきたなぁと思う。


しかし、そんな色濃い人生を送ってきた私にとって一番死を意識したのが、つい先日軽自動車に撥ね飛ばされた時である。

なんとも言い難く、滑稽だな、と自分でも思う。


思わず、笑ってしまっていたのだろう、天井をただ眺めながら笑みを浮かべている所を、看護師さんに見られてしまった。


看護師は苦笑いをして病室を後にする。


おいおい、何かに用があったから来たのに、何も言わずに去るって………よっぽど気持ちが悪かったのか………?


しょうがないじゃないか、今私に出来る事は妄想か寝る事しか出来ないんだから、分かってるだろ、なんて考えている内に急激に睡魔が襲ってきた、うん、抗わないでいよう、身を任せるしかない。


そんな日が、私の曜日感覚が完全に狂う程に過ぎていった。


入院してから2ヶ月程だろうか、血の滲むようなリハビリの末、

松葉杖をつきながらだが、多少歩行が可能になり、ついにあの閉塞的な空間から抜け出すが出来るのか、そう考えるだけで涙が出そうだった、いや、もう実際出ている。


久方ぶりに出た外は酷く鮮明で、一つ一つの色が際立って、互いに主張し合っているように見えた、今、絵を描いたなら素晴らしいものが描けるだろう、と思ったが、私は絵が不得手なので残念極まりない。


病院付近で献血もしていたり、積極的にボランティア活動をする若者が多い町らしい。


それ程長く外に居られる体力もないため、早々と病室に戻る事にした。

今は手が使えるので、スマホも使えるし、煙草も吸える。

やはり良いな、手が使えるって、時々痛むが、耐えられるくらいの痛さなのでどうってことは無い。


消灯時間もとっくに過ぎ、そろそろ眠気が襲ってきそうな頃だった。


さあ、布団を被り眠りにつこうとしたその時、廊下の奥の方の病室から悲鳴が聞こえた。


最初はほっておいて、眠りにつこうと思ったが、どうしようも、気になってしまい、ベッドの横にかけている松葉杖を両脇に挟み、ぎこちない歩みを悲鳴の方へと進めた。


その悲鳴に駆けつけた野次馬や、医師、看護師が多数集まっていた、それを掻き分けて、志木は奇妙なものを見る。


ベッドに倒れ込んだ、喉元がパックリと綺麗に割れている、老人の死体だった。


そして不思議と血が一滴も流れていない。

というか、血が飛び散ってもいないためか、周りは綺麗なままだった。


どういう事だ?喉元を切る時には、動脈を切ってしまうことが多く血が大量に流れる筈だ、動脈を傷つけなかったどしてもこれ程深く、しかも喉仏を切り取るほどの行為をしたとなると……………。


もう一つ気になる事があった。

少しだが焦げ臭い匂いがするのだ、この病室全体で、しかし、物が燃えた痕跡も無い。


とにかく、明日からは情報収集開始だな………。


周りが悲鳴や恐怖で青ざめているなか、志木は一人、この不可解な出来事の真相を探ろうとしていた。






細々と続けて行きます。

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