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ラト姫との出会い

「シャルマ殿の栄光をここに称える! この王国において最強が今決まったのだ! このものは勇者である! この国の命運はこの勇者に託された!」


 シャルマは宮廷で盛大に表彰され、その夜は盛大な宴が開かれた。



「勇者殿、何か望みはあるのかね」


 宴の最中、シャルマは大臣に話しかけられる。

 シャルマは反射的に膝をつこうとするが、


「よいよい、そなたはこの国を救うものだ。膝まづかせでもしたら私の方が王から裁かれてしまうわい」


 と制止をかけられてしまう。

 少しポカンとした様子のシャルマだったが、意識が帰ってくると同時に立ち上がる。


「して、そなた、何か望みなどはないのかね?」

「私の望み……、ですか。でしたらこの王国の外側にあるという世界の果てに行ってみたく存じます」

「あっはっは。勇者殿はなかなか面白いことを言う。この王国の外に世界なんぞあるわけがない」


 大臣は笑いながら外の世界はないと言い切る。この王国の外側には世界はないと広く信じられているのでこの発言自体に違和感はない。しかしシャルマは別のところで違和感を覚えた。


(今一瞬、殺気を感じた……)


 そう、シャルマが外の世界と言った瞬間に大臣は一瞬殺気を溢れさせた。勘違いかと思う程度に一瞬だったが、剣に手を伸ばそうとしてしまった体を制止したので間違いない。


「宮廷騎士団長として迎えても良いぞ、あっはっはっ」


 その後も大臣は様々な提案を出してくる。そのどれもが王宮で暮らせるという好待遇なものだった。


「まぁ、そう焦って決めてもらう必要もあるまい。勇者殿のためにこさえる特別な鎧と剣ができるまではここでゆっくりしていると良い」


 大臣はそう言ってシャルマのそばから離れてゆく。


 


 シャルマは鎧と剣が出来上がるまでの約一ヶ月の間、王宮で過ごすことになった。

 王宮の一室を与えられ、訓練のための施設を与えられ、様々な好待遇を受けた。

 そして驚いたシャルマの下にお姫様も通うようになっていた。


「勇者様! 今日はお料理はしないのですか?」


 シャルマを王宮に引き留めるための政略か、と思うかもしれないが、そういう訳ではない。



 時はある日の夕方。

 シャルマはエイルとの契約を果たすべく、王宮の厨房を使う許可を得ていた。そして、シャルマがいつも通りにエイルのための食事を作っていた時、厨房でたまたまお姫様と遭遇してしまったのだ。

 普段ならば誰も利用していない時間にシャルマが調理をしていたため、


「あら、こんな時間に人がいるなんて……。驚きましたわ」


 と、お姫様も大層驚いた様子だった。


「ラト姫……。なぜこんなところに……」


 シャルマが問うとお姫様、ラト姫は少し俯きつつ口を開く。


「大変お恥ずかしい話なのですが、少々間食を……。勇者様は何を?」

「私は……、似たようなものです」

「うふ、ではお仲間ですね」


 これからだったろうか、二人はたまに厨房で料理をする仲になったのだ。

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