勇者を決める大会-予選(前編)
シャルマが十五歳になったときの話だ。
シャルマは未だ田舎で暮らしていたがとある事件が起きた。この世界に魔王が発生した。
この国にはある伝承があり、それによると定期的に魔王が発生するらしい。そして魔王を倒すために、王国は最強の人間を派遣してきた。
そのため世界に魔王が発生した今回も王都で会議が行われ、国中の実力者が集められることになった。
シャルマも道場で一番の実力を持っていたので王都に召集をかけられた。
「この中で一番の実力を持つものを決める大会を行う。優勝した者には、魔王と戦いに行ってもらうが、優勝した時点で栄誉と褒美をやろう。皆のもの、ふるって優勝を目指すのだ」
王が高らかに宣言する。王の言葉に呼応するように、そこに集められた実力者たちは大きな声を上げる。
ルールとして殺し合いはなし、それで以外であれば何をやっても許されるということになった。
大会には魔法を使えるもの、筋力にモノを言わせるもの、制止をかけられてもなお攻撃を続け、対戦を相手をあわや殺してしまうところだったもの、様々な人間がいた。
「うわぁ、みんなすごいな」
「まぁ、みんな張り切ってそうだしね。全くそこまでして名誉がほしいのかね」
「うーん、僕としては父さんに最強を示してこいって言われただけだからあんまり興味はないかな」
「あはは、あんたらしいね」
シャルマとエイルが観戦をしていると、遂にシャルマの順番が回ってくる。
「よろしくお願いします」
「見たところ剣士の様だね。ワガハイの魔法に勝てるかな」
「やれることはやってみますよ」
シャルマが礼儀正しく挨拶をしても、対戦相手……魔法使いは傲慢な態度を崩さなかった。
シャルマと対戦相手が定位置に着く。
試合場は円形で、足元は砂だった。観客席は一段高いところに設けられており、試合場からは見上げる形になっている。
「では用意……始め! 」
試合開始の号令が掛けられる。
と同時にシャルマは横にはねる。
するとさっきまでシャルマがいた場所を炎の海で包み込まれた。
「ほう、これを避けられるのか。やるではないか」
シャルマの対戦相手は少し驚いた顔をしながら言う。
それもそのはず。通常の人間であれば魔法使いの奇襲に対応できないからだった。
(号令の前から用意していたくせに、卑怯者め)
シャルマは心の中で悪態をつく。
彼は剣士でありながら魔法使いでもあるから、魔法使いの動向も分かるのだ。彼は相手の魔力操作も分かるようになるまでエイルに能力を叩きこまれている。というよりむしろ課題を求めすぎたシャルマにエイルが無理難題として叩きつけたものだったが。シャルマは持ち前の忍耐力で、根気よくトレーニングを続け習得してしまった。エイルもさぞ驚いたことだろう。
シャルマはその後も相手の魔法を次々と避け続けた。試合が動いたのはしばらく後だった。