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妖精と契約

「妖精……?」

「せいかーい。その年でよく私のことが分かるわね」


 妖精と言われた生物は、嬉しそうに言う。自分のことを知る人に会えたことを喜んでいる様だ。


「本で……、見たことあるから」

「だとしても、よ。ある程度精神的に成長してないと魔素の塊は人間には感知できないはずよ? と言ってもそこまでたたずまいがしっかりしていれば十分、なのかもしれないけど、あなたなかなか見込みがあるわね」

「お父様と、お母様のおかげです」

「うんうん、私そういう子大好きよ。君、名前はなんていうの?」

「僕はシャルマ、妖精さんは?」

「……あら、あなたそれは知らないのね」


 少年、シャルマは何を言われているのか理解できずに首をかしげる。


「妖精が人間に名前を教えるのは、その人間と契約をするときよ。だから残念ながら名前は教えてあげられないわ。契約する、というのなら別だけどね」

「けいやく?」

「妖精と人間の間で交わす約束事よ。人間に魔法を使えるようにする代わりに、妖精にも何か嬉しいことをしてあげてねっていう」

「僕魔法使えるようになりたいっ」

「だとしたらシャルマは代わりに何をしてくれるのかしら?」

「……おいしいご飯とかどう?」

「ふーん……。悪くないわね。いいわ、契約してあげる」

「やった!」

「私の名前はエイル。妖精のエイルよ、よろしくね」


 こうしてシャルマとエイルの契約は成立した。



 次の日もまた、シャルマはいつもと同じように朝稽古をする。その様子をエイルは退屈そうに眺めていた。


「よく飽きもせずにずっと同じことできるわね」

「習慣だからね」

「ふーん……、ねぇ折角だから魔法の練習しないかしら」

「あ、やりたいっ」

「うふふ、威勢がいいわね。じゃあ始めましょうか」


 シャルマはエイルの教えに従い魔法の練習を始めた。

 彼は最初に一番簡単な風魔法を教わった。風魔法は干渉対象が軽く操作しやすいために妖精の間では基礎魔法として扱われている。

 しかし当然シャルマは上手くは使いこなせない。


「エイル、うまくできないよ」

「そんなにすぐできる訳ないでしょう。そもそもあんたまだ子供なんだし、気長になりなさい。無理だったらいつもの朝稽古に逃げてもいいのよ」


 そういわれるとシャルマは少しムッとした顔で言い返す。


「僕は逃げないもん」

「あらそう、じゃあ頑張ってね」


 そうしてこの日からしばらくの朝稽古は魔法の練習に吸収されてしまったのだ。

 しかし、朝稽古が魔法の練習にだけになって普段の稽古をしなくなったため、少し動きが鈍ってしまいシャルマは一度、父親に体調不良の疑惑をかけられてしまった。だからシャルマは父の不安を払拭するために泣く泣くいつもの朝稽古の時間も確保したのだった。

 

 ……そのときエイルに散々バカにされたとか。


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