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妖精と出会う

 少年はとある武術に優れた家系に生まれた。父親は宮廷の騎士、母親は地元の近接格闘技の道場の師範だった。

 少年は親に強制されるまでもなく、武術に興味を持ち、父親の真似をして剣を振り、母親の真似をして立ち回りを覚えた。

 少年はそのまま宮廷に仕える身になるかと思われたが、しかしそうはならなかった。彼の父親が負傷してしまい、宮仕えをやめ、とある田舎にある父親の実家へ引っ越したからである。母親は王都の道場を弟子に引継ぎ、その田舎で新しく道場を立ち上げた。

 少年が五歳になろうという時だったか、彼は田舎でとある本にであう。その本はこの人間の住む国の外について書かれていた。


 ──


 『山々はこの国を取り囲むように連なり、一般的に、この山の外側に世界はないとされてる。しかし私は、それは偽りであると考える。山の外にも空は広がっているし、水も山の外側からもやってきている。これがすべて魔素によって引き起こされている、と考える学派があるが、私はそうは考えない。魔素からなる水と、魔素からならない水には明確な違いがあるからだ。王国には魔素からなる水しか存在しないが、山際、特に王国と離れた魔王城と呼ばれる城がある地域には魔素からならない水があることが分かっている。この水は突然沸くことはなく、また、突然氷になったりすることはない。

 この水のことは王国では隠されている。これを知られると王国にとって不都合があるのだろうか。私はこの山の外に広がる世界を世界の果てと呼ぶことにした。私はどうにかしてこの世界の果てに行ってみたいものだが、どうしても王国の監視が強くて出ていくことができない。行けるとしたら、死んだ後になってしまうだろう。あぁ、口惜しい』


 ──


 少年はこの本を読んで、世界の外側に興味を持ってしまった。

 いつか世界の外側に出てみたいと。

 それからまた一年も経たないうちに少年の人生を変える出来事があった。

 少年がいつものように朝稽古のために森を走っていると、不意に誰かの気配を感じる。


「誰だ?」


 少年が警戒心を(あらわ)にする。


「あら、私の気配が分かるの?」


 少し高めの、女性らしい声があたりから聞こえてくる。

 しかし、少年が辺りに気を配ってもどこにも実体を感じられない。


「どこ見てるよの、上よ上」


 少年がそう言われて上を見上げると、そこには小さな生き物がいた。


「妖精……?」


 これが少年と妖精の出会いだった。

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