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山脈の外側

 時刻は少し戻って魔王討伐直後。

 シャルマとエイルは、ラト姫に別れを告げた後に、魔王山の裏にある王国を囲っている険しい山を登っていく。斜面はほぼ地面に対して垂直になっており、山と言うよりも崖と言った方が正しいかもしれないが。


 シャルマ達が暮らしている王国はこの険しい山々によって囲まれている。そのために外との交流なんて物はなく、むしろ王国の外に世界があるというのは昔話ぐらいでしか語られない。王国としてもわざわざ兵力を割いてまで山脈を攻略して、外の世界を探索する気もなく、いつしか人々は外の世界があるかどうか、すら考えなくなっていた。

 そういう意味ではシャルマはかなり特異な人間だったと言えるだろう。そもそも世界の果てに関する本が残っていたのも驚きではあるが。……そんな本があったからシャルマの祖父母は王都から離れて暮らしていたのかもしれないが。


「まったく、何でこんな崖を自力で登らなくちゃならないんだよ」

「あらあら、人間様は不便ですわね」


 崖をよじ登りながら文句を垂れるシャルマに対し、エイルは余裕綽々といった様子で対応する。


「まったく、何のために魔法を使えるようになったのか……」

「しょうがないでしょ、魔法を使ったら観測されちゃうかもしれないんだから」

「分かってるよ」


 シャルマは不満げに重ねる。そう、シャルマが魔法を使えるのに人力で崖をよじ登っているのはシャルマが死んだことになっているからである。シャルマが魔力操作を察知できるように、王国にいる魔法使いにも魔力操作を察知できる人がいるかもしれない、ということを懸念して魔法を使わないでいる。よほど近くにいない限り察知できないが、保険を掛けておくに越したことはない。


 シャルマが崖のぼりを初めて一時間ほどして、やっと王国を囲う山脈の頂上に着く。

 下から見上げていた時にはわからなかったが、山頂は平坦になっており、十分に休憩ができそうな広さがあった。


「さっきまでの険しさが嘘みたいだよ」

「ほんとね」


 シャルマとエイルは山頂で小休止を挟む。休憩をしている、といってもシャルマはそわそわして落ち着きがなかった。


「まったく、あんたも少しは落ち着きなさいよ」

「これが落ち着いていられるかってエイル! ほんとに王国の外に世界が広がってたんだぞ!」

「はいはい、そうですね」


 そう、シャルマの眼前に広がるは外の世界。振り返ると見えるは王国の景色。

 王国を取り囲むように続く山々の頂上はここと同じようにずっと平坦に続いている。平坦に続いていることが分かるということは、ここから反対側の様子が見えるということに他ならない。

 しかしシャルマが今見ている王国の外側は果てが見えない。あまりにも遠くてぼやけてしまう。


「ここから目指すのが……世界の果てなんだ」


 シャルマは期待に満ちた声でそう呟いたのだった。

 ということで後半戦です。残りもよろしくお願いします。

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