四天王
「勇者よ、魔王の討伐頼んだぞ」
シャルマは王に見送られて王都を発つ。
「このまま魔王城に向かって平気だと思う?」
「あんたの心配も最もね。大臣が怪しいって言いたいんでしょ」
「さすがエイル。そう、さすがに大臣の言動が気にかかる。一度実家によって魔王城に向かうことにする」
「オッケー」
シャルマは一度実家に戻り、両親に万が一のことがあったときは魔王城に向かってほしいと告げ、再び魔王城へ向かう。……どう転んでも万が一のことしか起きないが。
魔王城の近く、魔王山の麓にてシャルマは四天王の一人と出会う。
「我は四天王の一人、炎の魔人なり。勇者よ、覚悟せよ!」
魔人はそう言うや否や手に炎を集め、シャルマに向かって魔法を放つ。
予備動作が大きくわかりやすかったため、シャルマはそれを何なくかわし、魔人に氷の魔法を叩きこむ。
相手が魔人であったため、シャルマは手加減などせず、全力で魔法を放った。
すると当たり一帯は氷の柱でおおわれてしまう。
「……まあ魔素が十分なところで全力つかえばこんなもんなのか」
「こんなものか……、じゃないわよ。こんなに派手に一撃でやっつけちゃ相打ちなんて夢のまた夢よ。どうすんのよあんた」
エイルに言われてシャルマはハッとする。
「困ったな……。ならこうだっ」
シャルマはそういうと氷の柱に向かって炎を放つ。すると今度は打って変わって辺りは炎柱に包まれる。ところどころ岩が解け始め、溶岩になっている。
急にあたりを炎に包んだシャルマに対し、エイルが疑問の声を上げる。
「いや、何してんのよあんた!」
疑問の声というより怒声のほうが近いかもしれない。
「互角の戦いを演出してみようかな、なんてねっ」
シャルマはそういうと今度はあたり一帯を水で包む。炎は鎮火され、溶岩は一瞬で固体に戻る。
「こんなもんでいいかな。最後にもう一発」
最後に巨大な氷塊を墜落させ、演出を終わる。
「あんたそれはやりすぎよ……」
ドン引いた様子でエイルがつぶやく。
「でもこれだけやらないと王都と魔王城から見えないでしょ?」
「……はぁ。わかったわよ」
「よし、じゃあ次に行こう」
そう言ってエイルとシャルマの二人は再び魔王城へと歩を進める。
「それにしても流石魔族って感じだな。魔力操作が全然わからなかった」
「まぁそもそもが魔素のかたまりだし。体内の流れなんてわからないわよ。まあシャルマなら持ち前の技術で見切れるでしょ?」
「油断は良くないけどね。集中していけば何とかなりそう」
その後シャルマは残りの四天王を一撃で倒して行った。……当然互角を演出するために辺り一帯に災害をまき散らしながら。シャルマ曰く、
「どうせこの辺は魔王山で生物がいないからどうなったところで気に
する人はいないでしょう」
とのこと。後で来るであろう人達にも少しは気を使ってほしいものだ。