魔王襲来
シャルマが剣と鎧を受け取って自室に戻った夜。シャルマはエイルに問う。
「エイル、大臣の様子どう思う」
「ん? 別にあれくらいいるんじゃない?」
「だとしてもあんな言い方ないじゃないかっ」
「まぁあんたは納得できないかもねー」
「まったく、エイルは気楽なもんだね。僕が王宮の騎士団長にでもなってみろ。もう料理なんかしてやれないぞ」
シャルマがそういうと、
「それは困る!」
エイルは食い気味に言う。
「……生きて帰ったら困るんでしょ。なら死んだことにすればいいのよ」
エイルが少し考えてから口を開いた。
「なんだって?」
シャルマは何を言っているのか理解できない、といった顔つきで聞き返す。
「魔王と相打ちにでもなればいいのよ。そしたら死んだことになってきっと自由よ」
「そうは言ってもなぁ……。っていうか当たり前のように倒した後の話をしてたけど相手は魔王だぞ。勝てるかどうか分かんないぞ」
「あんたなら何があっても勝てるわよ。あたしが保証する」
「エイルの保証をもらってもなぁ……」
その後もしばらくエイルと魔王討伐について話し合う。そして時間も遅くなってきたのでシャルマは寝床に着く。
夜も更けていき、城中が寝静まった頃、場内に不穏な空気が流れ始める。急に当たりの空気が重くなる。
「……魔素濃度が急に上がった?」
眠りについていたシャルマも起きだし、辺りを警戒する。
シャルマが部屋を出ようとした次の瞬間、城に爆音が響き渡る。それと同時に甲高い悲鳴も響く。
「この声は……。あっちだ!」
シャルマは悲鳴の下へと走る。
シャルマは懸命に走り、爆音と悲鳴が聞こえた方向へ走る。
シャルマが着くとそこには、崩れた城壁と、そこから差し込む赤い光が見えた。
「ひ、姫様が……」
すっかり腰を抜かしてしまったメイドがシャルマに助けを求める。
「ラト姫がどうした」
シャルマはメイドが指さす方向を確認する。
するとそこには、
「その魔力の色、貴様が勇者だな。姫は預かった。返してほしくば我が城、魔王城まで来ることだな。フハハハハハ」
そういうと姫を抱えて魔王は飛び去って行く。
「間に合わなかったか」
シャルマの後ろから声が聞こえる。
「大臣……」
「勇者殿、気負うことはない。魔王を倒して無事に姫と帰ってくれれば良いのだ。頼んだぞ」
そう言うとやけに落ち着いた様子で大臣は去っていく。
シャルマは今すぐにでも魔王城に向かおうとしたが、多方面から止められてしまい、朝まで休むことにした。
シャルマも寝床に入った直後は緊張ゆえか、眠りにつくことができなった。
「まったく、しょうがないわね。ほれっ」
エイルはそう言い、シャルマに睡眠魔法をかける。魔法をかけられた瞬間シャルマは眠りに落ちる。
シャルマが深い眠りに落ちた後、エイルは部屋に置いてある魔法の鎧と向き合っていた。
「魔法の鎧、ね……。ふーん……」
そうつぶやきながら鎧に触る……。
そして夜は更けていく。