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一 ぴっぽ

 青~いお空にぽっかり浮かぶ白い雲。

 そこにちっちゃなおうちがちょこんと乗っかってます。

 住んでるのは、ちっちゃな妖精さんたち、ぽっぽの一族。

 今日はちっちゃなぴっぽの誕生日。


「ぴっぽは幾つになったんじゃ?」

「六つだよ、ぱっぽじいちゃん。」

「じゃあ、そろそろ下へ出かけても良い頃じゃな。」

「下?」

「そうじゃな、こっちへおいで。」


 ぱっぽじいちゃんはぴっぽを外に連れていきました。

「ここから雲の下を見てごらん、落っこちるんじゃないぞ。」

 ぴっぽはそ~っと覗いてみました。

「うわ~、何か色々あるんだね、ぼくんちの回りは白い雲と青~いお空だけなのに。」

「あれが森でこっちが川、それから人間達の家…。」

 ぱっぽじいちゃんはぴっぽに色々教えてあげています。


「下って、楽しそうなのがいっぱいあるんだね、早く行ってみたいな~。」

「そうじゃのう、今日準備をして、明日早くでかけるとするか。」

「うわ~い、楽しみだなぁ~、早く用意しようよ、物置へ行くんでしょ?」

「これこれ、そんなに慌てるでない。」

 ぴっぽは物置へぴゅ~んと行っちゃいました。


「一等賞! ぱっぽじいちゃん、早く早く。」

「そんなに急がなくても物置は逃げはせんぞ。」

「ね~、早く戸を開けてよ~。」

「待っとれよ、さあ、よっこらせっと。」

 ぎぎ~、と戸が開きました。

「ねぇねぇ、何を持ってくの?」

「そうじゃなぁ、まずはトンボのメガネ。」

 ぱっぽじいちゃんはメガネを取りました。

「とんぼのめがねは♪ 水いろめがね♪ 青いおそらを♪ とんだから~♪ と~んだ~か~ら~♪」

「ふふ、ぴっぽはお歌、上手じゃな。」

「へへ、かあちゃんに教えてもらったんだ、でもトンボのメガネって何に使うの?」

「下へ行ってのお楽しみじゃな。」

「何かどきどきだなぁ~、他には何持って行くの?」

「雲の命。」

 ぱっぽじいちゃんの手にはガラス瓶があります。

「あれ? 中で雲みたいなのがゆっくり動いているね、上のボタンを押すと出てくるの?」

「そうなんじゃがここで押しても何も起らないんじゃよ。」

「やっぱり下へ行ってのお楽しみってことなんだね、ねえ、下へ行ってのお楽しみばっかなの?」

「いやいや、これはちょっと違うんじゃ。」

 ぱっぽじいちゃんは、小さな小さな雲みたいなのを二つとりました。

「何なんだろう、これ。」

「雲風船じゃ。」

「雲風船?」

「さあ、右の一つを手に取ってごらん。」

「うわ~、ふわふわだ~。」

「その雲風船はこれから、ぴっぽの友達じゃよ。」

「うわ~い、お友だちなんだ。」

「ぽっぽ一族にとっても、とても大切な友達だから大切にするんじゃぞ。」

「うん、わかった、でも、何をすればいいの?」


「まずはな名前を付けてあげるのじゃ。」

「名前?」

「そうじゃ名前はとっても大切なんじゃよ。」

「う~ん名前かぁ~、う~ん、う~ん、迷うなぁ~、そうだ、もくもくしてるからモックってどう?」

「ふむモックか、雲風船が喜びそうな良い名前じゃな。」

「じゃあモックに決定! で、どうやっておともだちになるの?」

「まずは両手の上にそっと乗せて、ゆっくり揺すってやるんじゃ、乱暴はいかんぞ、自分の両手がゆりかごになったと思うのじゃな。」

「その後は?」

「しばらくすると目を覚ますから、おはようモックと声をかけてあげればいいんじゃ。」

「ぱっぽじいちゃん、もう夕方だよ。」

「まぁ気にするな、細かいことを気にする奴は大物にはなれんからな。」

「よく分かんないけど…、やさしく揺すってあげて、おはようモック、なんだね。」

「そうじゃ。」

「じゃあやってみるね。」


 ぴっぽは両手で雲風船を揺すり始めました。

「ねえ、ぱっぽじいちゃん、子守唄でも歌ってあげた方が良いのかな?」

「今から起こすのに、子守唄はまずいじゃろう。」

「あっ、そっか。」

 ぴっぽがしばらく揺すっていると、雲風船はプルンと震えて少し大きくなりました。

「そろそろお目覚めのようじゃな。」

「おはようモックって声をかければいいんだね。」

「そうじゃ、もういいじゃろう。」


 ぴっぽは雲風船に向かって声をかけます。

「おはようモック。」


 おや、雲風船はなんかつぶやいているようです。

「おはよう? モック? モックって誰だ? 誰が声をかけた?」

「モックは君の名前だよ、ぼくはぴっぽ。」

「おや、ぽっぽ族の子だな、おいらに新しい名前を付けてくれたのか。」

「そうだよ、ねえお友だちになってくれる?」

「おいら雲風船は、ぽっぽ族の仲間さ、ふむ、モックかぁ気に入ったぞ、ぴっぽはおいらの大切な友達だ。」

「うわ~い、なかよくしようね、モック。」

「もちろんさ、ぴっぽだったな。」


「ぱっぽじいちゃんモックがお友だちになってくれたよ。」

「そうか良かったなぴっぽ、モック、わしの孫をよろしく頼むぞ。」

「おう。」

「ところでモック、明日ぴっぽを下まで連れて行きたいのじゃが、連れて行ってくれんかのぉ。」

「お安い御用だ、じゃあ今からごはん食べに行ってくらぁ。」

 ピュウ~。

 モックは雲の中へ飛んで行ってしまいました。

「あれ? モック行っちゃったよ、いいの?」

「大丈夫、明日になったら、おなか一杯になって帰ってきてるよ。」


「ぼくもおなかすいた~。」

「そうじゃな部屋へ戻るとするか。」

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