どうして
「で、どうすんだよ」
説明の続きは諦めた。
ぶっちゃけどうでもいい。
下に行くなというのならどうすればいいのだとランガリーに聞いた。
「校舎の下にあるのはアキトの魔法工房だよん。魔法を補助する魔法陣だって描かれているだろうし回復用のポーションだって絶対ストックしあるじゃん? ただでさえ強大な相手に、相手有利な場所に行く必要はないと言ってんの。おびき出そうよ」
「どうやってだ? エレミアでも裸にひん剥いて磔にして晒すか?」
知り合いだろ?
案外助けに来るかもしれない。
「ひっ……」
エレミアが小さな悲鳴をあげてランガリーの後ろに隠れた。
「それもいいけど、もっといい案があるんだよね」
「ひいぃぃぃっ!!」
ランガリーの言葉を聞いた彼女は大きな悲鳴をあげて今度はアイレットの後ろへと向かう。
アイレットが震えるその頭を優しく撫でていた。
……そんな目で見んなよ……。俺が悪者みたいじゃん。
「アキトが何をしたいのかは知らないけど、どうやら高魔力を宿した肉体が必要みたいだね。だから私を殺したらしい」
「ふーん」
「けどそんな安い女じゃないんだ私は。アイレットの友達だぜ?」
「おう」
「だから嫌がらせをしておいたんだ。死ぬ直前に私の体内の内包魔力を全てぐちゃぐちゃに暴走させておい――」
「俺馬鹿なんだよね。IQ3に伝わるように話してもらっていい?」
「……。つまり私の死体には一切の魔力が宿っていない。アキトは目的を果たせていないし、未だに高魔力の宿った肉体を探しているはずだ」
高魔力の人間を餌に誘き出そうって訳だ。
「なるほど……。つまりエレミアを裸にひん剥いて磔にすればいいんだな?」
この学院の生徒なんだし、魔力高いはずだろう。
ちらりとエレミアを見た。
完全にアイレットに隠れてしまっていて見れない。
恐らく拒絶の意思表示だろう。
ほらね? 殺すの邪魔してきた。
あーぁ。あーぁ。あー嫌だ嫌だ。
仕方ないな。
気絶させてひん剥こう。
そう思って立ち上がるとランガリーに止められた。
「彼女じゃ駄目なんだよ。内包する魔力が少なすぎる、いや、彼女が特別劣っている訳ではないんだけど、最低限私と比較できるレベルじゃないと餌にはならないでしょ?」
「あ? そんな奴いんの?」
周りを見てみる。
禄なやつがいない。
特になんだあの黒髪の男……。
マジでクソみたいな雰囲気じゃねえか……。
「なぜ鏡をじっと見てるんだい?」
アイレットが聞いてきた。
……。
………。
なんでこんなとこに鏡なんて置いてんだよ。
あとズンズンラーって言わねえのかよ……。
ルリーがバカみたいじゃん……。
方言らしいけども。
ランガリーがペタペタと歩き出す。
彼女はナーリンの前で立ち止まった。
そしてその横で倒れ込むボトリクの方を向いて――
「頑張れ! ボトリク・ボルボ! 男の見せ時だぜ!」
今にも死にそうな男にウインクしながらそう言った。
――
「……」
作戦は簡単。
ボトリクが見晴らしのいい校庭の真ん中に魔力を放出しながら立つ。
それにアキトが寄ってくるっていう作戦だ。
「虫じゃねえんだぞ。こんなんで捕まえられんのか?」
今更ながらにそんな疑問を抱いた。
俺達は校舎の屋上からそれを見ている。
ここで隠れて待ち、アキトがやってきたら皆で襲いかかる予定だ。
「多分いけると思いますよ」
俺の言葉に返してきたのはエレミア。
ちょっと距離が遠い。
なんでだろうなぁ……。悲しいなぁ……。
「根拠は?」
「アキト君はプライドが凄く高いから……。こんな挑発ともとれる作戦、真正面から向かってきて叩き壊しにくると思う」
「なるほど」
納得した。
確かに高そうだったな。
俺達の視線の先にいるボトリクが、もう好きにしてくれといわんばかりに諦めの表情を作っていた。
「いいよ……。これが皆の為になるならいいよ……。あぁ……。そうともさ。喜んで引き受けるとも」
スキルで強化された俺の聴覚がそんな呟きを拾った。
『勇者の血族』万能過ぎるんだよなぁ……。
ちなみにナーリンは置いてきた。
未だに目を覚まさないピンクルを見てもらっている。
肉体を失ってしまってはいるが、簡単な魔法なら使えるらしいランガリー。
横のエレミアと万全には程遠いが戦える程度には回復したボトリク。
そして俺とアイレット。
エレミアには前衛に出てこられると足手まといなので後方支援に徹して貰う事になっている。
これだけ揃えばまぁ、どうにかなるだろ。
というかするしかない。
「喧嘩をうっているのか?」
「もちろん」
ふと後ろから聞こえた言葉に振り返らず答えた。
「――ッ!!」
全員に緊張感が走り、アイレットに関しては声の主に斬り掛かっていた。
――アキトだ。
恐らくスキルで現れたであろう彼がそこに居た。
「っと」
剣鬼の攻撃を躱してみせた彼は後ろへ跳んで俺達から距離をとる。
「いったん戻ってこい、アイレット」
「わ、わかった!」
一人飛び出していたアイレットを呼び戻す。
四人並んでアキトへ向かい合った。
騒ぎに気づいたらしいボトリクがジャンプして、この屋上に降り立つ。
これで五人。
「くだらん……くだらんな貴様らは……」
「ばーか。なんだお前、作戦なんてお見通しですって感じで俺らの後ろに現れやがってよ。元からバレるの前提だっつの、なんですかー? 隠れてるの見抜いてますーって感じでドヤ顔しちゃってさぁ。だっさ。うわだっせぇ!!!」
「……」
元の世界で友達をことごく消滅させた俺の口撃がアキトを襲った。
友達を消滅させた……?
いや違うな友達いないし。
友達になるかもしれなかった同級生を――だな。
「ほらエレミア! お前もなんか言ってやれ!!」
「えっ……? わ、私ですか……?」
「おう!!」
「……ね、ねぇアキト君……。どうしてこんな事したの……? 理由を聞かせて……? 知りたいよ……」
「いや、そういうガチなのじゃなくて――」
「私はアキト君と一緒にいたいの……。私……っ私……っアキト君が好きだったんだよ!? どうして何も相談してくれないの!? もし望むんだったら……私だって世界の敵くらい演じてみせるのに……っ!!」
駄目だ聞いてねえ。
面倒くせえな。
さっさと戦闘に移ろう。
アイレットへ視線を送った。
「うっ……ぐぅっ……うぅ……っ」
泣いていた。
どうやら今の話が彼女のトラウマを刺激したらしい。
ユウイチロウユウイチロウと泣いている。
「理由――だと? ……黙示録を再現し、俺は俺になる。それだけだ」
「あっそ!!」
興味ない。
埒があかないので俺が先陣を切った。
俺の剣と魔法で生み出した彼の剣が交錯し、甲高い音が響いた。




