共同作業♡
全力で目の前の敵に斬りかかる。
一撃では収まらずニ、三、四と剣戟を重ねていく。
「ふっ!!」
アイレットはそんな俺に発生する隙を埋めるように攻撃していた。
いい感じにフォローしてくれている。
流石剣鬼だ。
「やるじゃん」
アキト先輩とやらから距離をとって横にいるアイレットに言う。
「はぁ……はぁ……ユウイチロウぅ……。私ユウイチロウと踊ってるよぉ……っ」
駄目だ聞いてない。
というか俺がもうこいつの言葉を聞きたくない。
顔を赤く染めた彼女は剣鬼というよりただの変態だった。
「俺はユウイチロウじゃない」
「!?」
「いやそこは驚くなよ……」
こいつには一体何が見えているんだ。
「流石に二対一じゃあキツイか」
目の前のアキトが言った。
「よく言うぜ。まだ一撃も当たってないじゃん」
「辛うじてな。お前凄いな? 名前はなんて言うんだ? 十聖剣なんて超えてるじゃないか」
「ユウイチロウ」
「ちげえよ」
変態は口を挟むなややこしくなる。
「……? まあ名前なんてどうでもいい。さて、……それじゃあな。バイバイだな」
「おいまて」
さも当然のように帰ろうとしたアキトを引き留める。
「何だ?」
「何だじゃねえよ。何勝手に現れて勝手に消えようとしてんの? アホなの? 張られてる結界にもどうせなんか関係あるんだろお前。逃がす訳ないだろうが」
「関係あるというか張ったのは俺だな」
「なおさらだ……ッ!!」
走りながら剣を振るう。
身を翻した彼にその攻撃は避けられ、蹴りを喰らった。
「ぐは――っ!!」
その衝撃に吹き飛び、思わず尻餅をつきながら倒れ込む俺。
そんな俺を見下ろしながらアキトはつまらなさそうな顔をしていた。
「知らん。俺はただケルベロスが消えたから様子を見に来ただけだ。貴様らの事情など知った事ではない」
「ちょ、ちょっと待ってくださいよアキト先輩! 私何が何だかわからなくて……っ」
後方からピンクルの泣きそうな声が聞こえた。
混乱しているのだろう。微妙に呂律が回っていない。
「黙れ喋りかけるな下等生物が」
「――え」
ピンクルが何か言うより早く、俺の反応より疾くそれは放たれた。
肌を撫でた熱気にその正体を悟る。
ファイアボール。
この世界の人間ならば誰しもが使える簡単な魔法。
それがピンクルの体を直撃していた。
「ピ……ッピンクル!?」
俺は慌てて駆け寄る。
返事がない。ぐったりと倒れ込んでいる、が息はあった。
全身に軽い火傷を負った程度ですんだようだ。
着ていた制服が所々焼け焦げ、下着を覗かせていた。
「全く……バカが俺に話しかけるからこうなるんだろうが……」
「……」
「なんだ? 怒っているのか?」
俺の視線を受けたアキトが肩をすくめた。
「いーや? 別に。こいつとはさっき会ったばっかなんでな」
「そうか。あ、貴様は気にせず話しかけていいぞ? こっち側の人間だからな」
「お前頭おかしいんじゃねえの?」
爆音が響いた。
やけにスローモーションになった俺の視界が迫りくる火球を認識した。
先程と同じくファイアボール。
しかし威力が段違いだ。怒らせてしまったらしい。
(やべ)
完全に虚をつかれた。
避けるだけなら訳ないのだがそうすればピンクルが再び焼けてしまう。
流石にこの火力は不味い。多分死ぬ。
かといって抱きかかえて逃げようにも、その間に着弾してしまうだろう。
俺の体の魔法防御力に期待するしかない。
「せい――ッ!!」
アイレット。
横から現れた彼女が剣でその魔法を切り裂いた。
「大丈夫かい?」
いつもの変態のそれではなく剣鬼の顔をしていた。
「わ、わりぃ。助かった」
言いながら立ち上がってアキトの方を向く。
つまらなそうな顔をしている彼と目があった。
「当たっても死なない程度に加減してやってるだろうが……。大袈裟なんだよ」
俺こいつ嫌いだなぁ……。
吐き捨てるように言われてそう思う。
こいつ絶対友達いないわ。
いなかった俺が言うんだから間違いない。
「アカキ君。まだやれるかい?」
「勿論」
さて、どうやって攻略したものか。
そんな事に思考を巡らせていると、アキトはこちらに背を向けた。
そのままコツコツと足音をたてて歩いていく。
「くだらん。もう用などないんだ、帰らせてもらう」
「あ、テメェ! 逃さね――」
追いかけようとするが遅かった。
ぶれたかと思うと一瞬で姿が消えた。
移動系のスキルだろうか。
何個持ってんだよ……。
化物野郎が……イライラするなぁ。
「助かった……のかな?」
アイレットがほっと胸をなでおろしていた。
「とりあえずはな。けどこの騒動をどうにかしようっていうなら、あの男をどうにかするしかないみたいだぜ?」
「ははは……」
「で、なんなの? あの男。お前より強いってヤバくね?」
「うん。ヤバイ」
マジで何なんだよあの男は……。
「ザンタボルトより強かったりすんのか……?」
「いや、それはないよ。ザンタボルト様とハリュッケン様の強さは異次元だから」
「……へぇ」
あれっ。
これこのまま王都に行っても返り討ちの可能性……?
……。
後だ後。難しい事は後で考えよう。
まず今考えないといけないのは、やらないといけないのは
「こいつらの治療かな」
全身火傷のピンクルと全身に刺傷だらけのアイレット。
アイレットは体が痛む度にユウイチロウ、ユウイチロウと呟いて楽しんでいるようだがピンクルは普通に苦しそうだ。
意識がないながらに苦悶の表情を浮かべている。
適当に校舎をぶらついて回復魔法持ちでも捕まえよう。
「ふふふ」
顔を上気させた変態と目があった。
「な、なんだよ」
怖いからやめてほしい。
「どうでもいいとかなんとか言ってたのに当たり前のようにこの事態を解決しようとしてるんだ?」
「……そういう事言うやつは親父の好みじゃないなぁ」
なんかアイレットの顔にイラッとしたので適当な言葉のナイフを投げつけた。
かなり効いたようで、大きな泣き声が校舎に響きわたっていた。




