黙示録の再現
丑三つ時。
人はおろか草木も眠る時間。
オカルト部の部長をやってた時に部員総出で肝試ししたのを思い出す。
神社の前で合わせ鏡しながら五寸釘打ったっけ。
楽しかったなぁ……。
まあ部員って俺一人しかいなかったんだが。
ナーリンのいびきのせいかな?
目が覚めた俺は夜の街を歩いていた。
「いてえ……」
また壁にぶつかった。
暗すぎる。
街頭なんてねえし、月も雲に隠れていて光源と呼べる物がない。
(しかたねえか……)
スキルを発動した。
最近気が付いたのだがスキルを発動すると夜目が効くようになるのだ!
戦闘をスムーズに行う為なのかな?
気配も何とかなくわかるようになるし、全く優秀なスキルである。
ユニークなぺったん神さまから貰ったスキルより俺の持ってたスキルの方が使えるっていいんですかねそれ。
神の威厳とかねえのか――って無さそうな奴だったなぁ……。
「ん」
微かに魔力を感じた。
確かこの方角には学院があるはずだ。
こんな時間まで魔法の訓練か? 偉すぎるだろ。
一瞬だけその偉い学生の顔を拝もうと思ったが面倒なのでやめておく。
「ふわーあ」
あくびがでた。
夜も遅い。
宿に帰って早く寝よう。
……寝れるかなぁ。
うるさいんだよなぁナーリンのいびき。
――
アネーロン魔法学院の校舎。
その地下に作られた彼しか知らない魔法工房に招かれざる客が訪れていた。
「ランガリーさんですか」
彼、アキトは工房の入り口に立つその客へ視線を向けた。
「いやしかし驚いたよ。この私の目を掻い潜って学院の地下にこんなものを作っていたとは……」
「それはどうも」
ランガリーはこの学院の学院長である。
魔法の真髄に最も近づいている人間の一人と言っていいだろう。
それを欺くというのがどういう事なのか、それは彼女の表情が物語っていた。
「流石はウルアンの双剣かな」
「……」
武のサニ。
知のアキト。
同世代と比べ余りにも突出した才能を持った二人の事をウルアン王国ではそう呼んでいた。
間違いなくこの国を牽引していくだろう力、それに期待を込めてつけられた名前。
しかし――
「そんな君がここで何をしている? ……この血の臭いは私の気のせいかな?」
ランガリーの追求。
それを受けて彼の空気がガラリと変わる。
「いや、気のせいじゃねえよ。なんてことは無い有象無象を使った人体実験を行っていたというだけの話」
その態度に先程までの教師を敬う生徒の姿はなかった。
いや、元より敬ってなどはいなかった。
表面上敬語を使っていただけで、この少年は決して他の人間を自身より上だなどと思ってはいない。
こちらが素なのだ。
「もしかして最近の若い子は人体実験は禁忌とされているのを知らないのかな?」
「知っている。その上でだ」
この魔法工房の作りは至って簡単。
一辺十メートル程の正方形の部屋の真ん中にずっしりとした大きな机が置かれ、その上に研究器具と思われる物が散らかっている。
部屋の隅には人間を固定するために使ったであろう血の染みた磔台が二つほど置かれていた。
「じゃあお仕置きしないといけないね」
ランガリーの言葉に呼応するし、一帯の魔力濃度があがった。
ただの魔力行使でその空間の魔力濃度があがるなど本来ならばありえない。
しかしありえてしまう。
それが彼女のいる頂だった。
しかしそれと対峙する秋人に不安の顔は見受けられない。
「お得意の雷魔法でもつかうのか?」
「ご名答。特級の雷魔法なんて中々受けれるものじゃないから、光栄に思いなさいね?」
言いながら彼女が手を前にかざす。
その掌の前で、まるで空間が歪んでいるかと錯覚するほどの魔力圧縮が行われ姿を見せたのは小さな玉だった。
小指の先程のサイズしかないそれをアキトへ向けたままランガリーが言う。
「知っているだろうけど見くびらない事だよ。このサイズでも破壊力は一級品だ」
「みくびる……? 俺がか? ……それは貴様だろう?」
「何?」
「貴様は俺の工房を自力で発見して俺を捕らえに来たつもりなのかもしれない。が、それは違う」
「……」
「俺の完璧な魔力隠蔽が貴様に見つかるような無様な真似をする訳ないだろう? あえてだよあえて。俺が貴様をここに誘い込んだんだ」
「……それはありえない……。私だぞ……? この私をたかが学生が魔法で化かせる筈が――」
「俺の計画に貴様の高魔力を宿した肉体が必要だったんだ。無論、こうして戦闘になるのも想定済みだ」
言って彼は手を前に出した。
その掌の前で、まるで空間が歪んでいるかと錯覚するほどの魔力圧縮が行われた。
姿を見せたのは小さな玉。
「それは私の――」
「お互いに同じ魔法を展開したんだ。威力勝負といこうか。まあ、俺が負ける事はありえないがな」
――
「うるせえええええ!!!」
たまらず隣のベットで寝るナーリンを蹴飛ばした。
大きな音をたてて床に転がり落ちる彼女だったが目覚める気配はない。
不快ないびきを気持ち良さそうにかき続けていた。
駄目だ。
ノイローゼになる。
なんで昼間にはアイレットにユウイチロウユウイチロウと、夜にはこのいびき。
いじめかなにかだろうか。




