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一年間の異世界転移  作者: 茜霞殿 姫太郎
第四章 もう一つの仇:前
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ショッピング

 カルカロスの翼の二人が去ってから一夜が明けた。  

 

 俺がベッドで寝るはずだったのだが、魔物少女とアイレットの二人に取られてしまい結局床で寝た。


 そのせいかな?

 背中が痛い。  


 心なしかな?

 胸も痛い。

 

「次の目的地はどこなんだ?」


 ベッドに座るアイレットを見上げながら問いかける。


 床に座って下から見てると彼女の顔のシワがよく見えた。

 年相応だなぁ……って。


「次はアネーロン、その次がバラソ、それで最後にウルガアインタイを経由して王都へ向かう旅路だね。遠回りにはなるけど、これらの街の責任者は知り合いだから最も都合のいいルートだよ」

「じゃあ早速アネーロン? に行くか」


 善は急げだ。 

 まあ俺は善でも何でもないが、悪が急いだっていいじゃんね。


「その前にナーリンの服を買おうよ」

「ナーリン……?」

「私……名前……!」


 俺の疑問に答えてくれたのは少女――ナーリンだった。

 顔は見えない。

 ベッドで寝転がったまま返事をしてくれたらしい。


「もう名前まで決めたのか……」


 呼び方に困ってたから丁度いいか。


「うん。で、服を買いに行こうよ」


 やけにノリノリな口調のアイレット。


「いらなくね? 俺の服着てるじゃん」


 まあ全裸の上に上着羽織ってるだけだけど。

 普通にノーパンだから風とか吹いたらやばいけど。


 別にいいじゃんそれで。

 何か新発見あるかもしれないじゃん。


「流石にこの格好は目立つからね。何かしらの服は買わないといけないし、どうせ買うなら可愛いの買ってあげたいじゃない?」

「ふーん。まあ、行ってら」

「アカキ君はこないの?」

「行かない」


 だって興味無いし。

 

 それにこの世界のお洒落の事なんてわからない。

 なんだったら前の世界のお洒落の事もわかんねえし……。


 俺的にはお洒落したつもりなのに「ダサい、オタクみたい」って妹に言われてたもんなぁ……。


 それに女の子のそういう店って入りにくいしね。


 行かない理由は数あれど行く理由がなかった。


「何なら君の服もお姉さんが買ってあげるよ?」

「……?」

「いらないの? じゃあ、ナーリンと二人で行ってくるよ」


 首を傾げる俺を見た彼女はベッドに寝転んだナーリンをおんぶして、そのまま部屋から出ていった。


「お姉さん……?」


 一体何を言ってるんだろうか。



――



 誰もいなくなった部屋に静寂が訪れていた。


 久しぶりな気がするな、こういうの。

 

 元の世界にいた頃は毎日がこうだった。

 学校に行っても誰とも話さなかったし……。

 家でも基本部屋に引きこもってたしな、


 振り返ってみればこの世界に来ていろんなことがあった。


 ルリーと出会って、ルリーが殺されて、アーランドを殺して、奴隷の女の子を傷つけて。


 そしてノリスを殺した。


 ルリーの敵を、グロータル村の皆の仇を一つ成した。


 後はザンタボルトを殺すだけ。

 

 革命を起こし、実質的な国の支配者となった彼は王宮に鎮座している。

 偉そうにふんぞり返る奴を殺せばもう、この生きにくい世界を無理に生きる事も無くなる。

 解放されるんだ。


 胸につけた赤いペンダントを見ると、涙腺が緩んでしまう。


 ルリー。

 彼女が俺にくれた、今ではたった一つの形見。


 正しさを求められる正しくない世界。

 ちょっとした綻びから歪み糾弾される世界。


 皆が皆生きるのに必死な世界。


 そんなんだ。

 皆必死で、そこに善悪は介入していない世界なんだここは。

 ただ死を待つ俺が肩並べて生きていい世界じゃないんだよここは。


 こんな世界においても、ルリーだけは俺の拠り所だった。


 彼女の為だからまだ生きていられる。

 彼女の仇をとるためだから生き抜いていける。


「……もう帰ってきたのか」


 窓から外を見下ろせばアイレットとナーリンの姿が見えた。


 景色が真っ赤に染まっている。


 それは夕刻の証。

 思っていたより時間が経っていたらしい。


 どたどたどたとやかましい足音が聞こえ、部屋の扉の前で止まった。


「ほら、なんて言うの?」


 促すようなアイレットの声が扉越しに聞こえてくる。


「ただい、まーっ!」


 元気な声をあげて部屋に入ってくるナーリン。  

 俺の上着を羽織っただけの破廉恥な服装から一転、露出度の少ない格好になっていた。


 ロリータファッションっていうのかなこういうの。

 

 全体的にふりふりしていて非常に可愛らしい。


「はいよく言えました」


 そんな彼女を見て、アイレットは優しげな笑みを浮かべていた。


「みて……っみろ……! 私、服装! セクシー! セクシー!!

!!」

「はいはいそうだね」


 ナーリンは、誰が教えたのかは知らないがグラビアアイドルみたいなポーズとっていた。

 それを適当に流しながらアイレットへ視線を向ける。


 だって教えた犯人こいつしかいないじゃん。


「そんなに拗ねないでおくれよ。ちゃんと君の服も買ってきたから」

「別に催促のつもりで見たんじゃなかったんだが……」

「ほら、これだよ! 早速着てみて!」


 言って彼女が袋から取り出したのは貴族が舞踏会とかで着てそうな綺羅びやかな服だった。

 

 何買ってきてんだこいつ。


 どうみてもちょっとした買い物のレベルを超えてるだろこの服。


「何これ」

「衝動買いしちゃった……。一千万ウルだったよ」

「……なんでそんなの買っちゃったの」


 日本円にしたら五百万円くらいかな?

 

「その……あの……、ね♡」

「は?」


 赤面でもじもじしている彼女を見て思わずそんな威圧的な声が出ていた。

 

「この服ね……ユウイチロウが来てた服と似てるから……。着てほしいなって……。それでアイレットって呼んでくれないかなと思って……ね♡」

「あ、うん」


 俺は何を見せられているのだろうか。


 目の前の幸せそうな顔を浮かべる物はなんだ……?

 惚けた声を上げる物はなんだ……?


 一体俺の目の前で何が起きている……?


「嫌……かな?」

「うん嫌」

「何で……!!?」


 何でじゃねえよ。  

 むしろお前が何でだよ。


 何でこうなっちゃったんだよ。

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