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一年間の異世界転移  作者: 茜霞殿 姫太郎
第三章 新たなる出会い
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新しい仲間

「あの場で何をやってるかっていうのは、まぁ、察したよな」

「そりゃあ……。わかりますよ」

 

 老人の言葉に頷いて返した。

  

「別に身構えなくても何もしやしないよ。これは暗黙の了解なんだ。国に密告されても、お前さんの首がとぶだけさ」

「ご親切にどうも……」

 

 つまり余計な事すると俺の身が危ないって事だろ。

 脅しじゃねえか。

 

「あの場で二人、奴隷を拾ったな?」

 

 彼は、嘘を拒絶した目で問いかけてくる。

 

「拾いましたけど、別に保護しただけで盗ったわけじゃないですよ……。すぐ返しますから」

「いや、返す必要はない」

 

 奴隷を盗難したと思われてると思ったが、そうではなかったらしい。

 

 老人は手元にあった紅茶をすすり、一息ついてから言葉を続けた。


「その奴隷は俺からの餞別だ。女は回復魔法を使えるし、男の方も戦闘用のスキルを持ってる。かなりの粒物だぜ? ザンタボルトを殺すのに必ず役に立つ筈だ」

「ありがたいですけど……。俺に奴隷を渡す理由は?」

 

 タダ程高い物は無い。

 

「お前さんがザンタボルトを殺してくれたら情勢は大きく変わる。そういう転換期には情報が高値で売れる。それとまぁ……。拗らせたようなその目が個人的に嫌いじゃないのよ」

 

 最後の一文はよくわかんねえが、つまりギブアンドテイクって事。

 

 でも俺に有利すぎる話だよな……?

 

 奴隷の相場ってわかんないけど、あの二人のスペックを考えたらかなり高価な筈だ。

 それを捨てて逃げ出したんだからブータって奴はどんだけ慌ててたんだって話だが。

 

「……」

「そんなに疑うなよ。若者には素直さも必要だぞ?」

 

 黙って考え事をしていると、老人が呆れたように言った。

 

「……ありがたく受け取らせて貰います」

 

 そうだな。

 ザンタボルトを殺すのに仲間は多いに越した事はないんだ。

 

 この男が何を企んでるのかは知らないが、奴隷の二人にあまり隙を見せず、あくまでも戦闘用の駒として使えば問題ないだろう。

 

「話ってのはこれだけだ。……これであんたはうちのギルドの一員になった訳だが……。ザンタボルトの情報だったよな? しばらく待て、三日以内に情報を整理して持っていかせよう」

「お願いします」

「情報料は高いぜ? 相手が相手だからな」

「わかってます」

 

 何はともあれ、これで奴の情報が手に入る。

 もし現在地がわかるようなら殺しにいける。

 そうで無くても殺す為の一歩は踏み出せる。こっからやっと復讐を始める事ができるんだ。

 

 ……一段落ついたからか? 疲れがどっときた気分だ。

 

 扉を開け、老人に会釈しながら部屋をあとにした。

 

「じゃぁ……俺はこれで」


 早く帰って休もう……。

 

 

――

 

 

 休める――訳がなかった。

 

「……そんなに睨むなよ」

 

 宿に戻った俺は、溜め息混じりに言った。

 

 備え付けのベットの上には怯えて小さく縮こまる少女がいて、それを庇うように少年が立っている。

 

「それ以上近づいたら殺す」

 

 殺意の籠もった瞳で睨みつけてくる少年。

 

 ……。

 

 彼等は俺が闇ギルドに行く前に、宿屋に寝かせておいたんだ。

 両方共意識なかったしな。

 

 意識が戻ったら逃げると思ったけど逃げなかったらしい。いや、逃げれないのか。

 こいつら奴隷だしな。

 

 多分体のどこかに奴隷刻印がある筈だ。

 

 それは言うならば脅し。

 

 刻印を発動させれば、その距離に関係なく奴隷を苦しめたり殺したりできる。

 

 反抗防止の抑止力だ。

 

 こいつ、今「殺す」とか言ってたけど。

 今の持ち主は俺だから、やろうと思えば刻印で苦しめる事ができるんだ。

 多分俺が主人って事を知らないから言ってるんだろうな。

 

「お前らは今日から俺の奴隷になった。精々頑張ってくれ」

「な――っ」

 

 二人の目が開かれる。余程驚いているらしい。

 少女の方なんか今にも泣きそうな顔をしている。

 悲痛な表情。


 そんな彼女が涙声で言う。

 

「……ごめんなさい。ごめんなさい。だからお兄ちゃんを苦しめないでください……。貴方がご主人様だって知らなかったんです」

「ユスラ……やめろ……。俺なんかの為に……」

「私にはお兄ちゃんしかいないんです。お願いします。私は何でもしますから」

「ユスラ……」

 

 ユスラっていうのはこの娘の名前か?

 

 俺が少年に何か処罰をすると思っているらしい。

 必死な懇願だった。

 

「す…いません……でし……た……。だから、ゆるして、もらえ……ませんか。妹を悲しませたくないんです」

 

 そんな妹の思いに動かされたのか、途切れ途切れの声を少年は出して頭を下げていた。

 プライドがあるのだろう。

 歯を食いしばり、肩を震わせている。

 

 保身の為じゃなく、妹の為に言っているというのは嫌でもわかった。

 

 ……まあ、俺がこいつらにやってきた事考えたらこうなるよな。

 完全に悪役じゃないか。

 

「別に……どうでもいい」


 ばつが悪くなった俺は、吐き捨てるように言って部屋を出た。

 

 人手が増えたのはいいけど、やり辛なぁ……あの空気。

 今更そんな事言っても仕方ないか。俺の行動の結果ああなってるんだし。

 何よりザンタボルトを殺すために手段を選ぶ余裕なんてない。

 

 使い捨てだろうがなんだろうがやってやろう。

 悪魔にだって魂を売ってやる。

 

 だから、誓え。

 

 自分に誓うんだ。

 

 もう迷わない、躊躇わない、邪魔をする奴は問答無用で殺すし、目的の為には犠牲も問わない。

 

 何度も誓って、何度も破りかけてきた。

 

 だから、今度こそ誓うんだ――。

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