一章 幕間 『長かったチュートリアル』
「ミツキーーーーーーーッッ!!!」
感情が抑えきれず、オレはミツキに抱きついた。
「だ、だ、大丈夫なのか!?腰は、腰は体とくっついてるか!!!?」
「ちょぉ、ミキオ?何をそんなに泣いてるのぉ?あ、やめてちょっと、鼻水がぁ」
「うわぁーーーーん!!!ゴメンなぁ!オレがミツキに構わず逃げちまったから!!ミツキはトラにパックリとぉ!」
「逃げた?トラ?ミキオ、何をいってるのぉ?」
「ーーーーーーー」
「ミツキ、覚えて、ないのか」
「・・・うーん、クラスに入って、そこからの記憶が無い、かなぁ」
「実は、ーーーーーーーーーーーーーー」
「・・・・・・・・・・・・・・・つまり、仮面の男に飛ばされてココまできて、ココは異世界で、ボクはトラに殺された筈だった、てことぉ?」
「・・・・・・概ね、そうだ」
流石に、ミツキの死に様の事は少しボカして伝えた。
オレの口から説明するには凄惨すぎるし、何より今ミツキが目の前にいる以上、それを言うには憚られた。
いや、それよりも今はやらねばならない事がある。
「ミツキ、動かないでくれよ」
そう言ってオレは手を伸ばし、ミツキの頬を摘んだり、伸ばしたりした。
「・・・・・・何を、やってるのぉ?」
「いや、化けて出たわけじゃないことを、確認」
「誰が幽霊だぁ」
ミツキはオレの頭をゲシッとチョップした。
ーーーーー痛い!夢でもないしミツキもちゃんと触れる!!
「・・・良かったぁ。オレ、ミツキが死んだと思って、本当に、本当に」
「ミキオ・・・・・・」
ミツキに見えるように、オレは指を引っ張った。
「ビックリ人間になっちまったよ」
ジャラジャラと音を立ててオレの指は鎖へと変貌した。
「・・・・・・ッッ!!うわぁ・・・!」
「この弱いリアクション!間違いなくミツキだぁ!!」
ガバッと両手を掲げるとオレはミツキに再び抱きつこうとした。
「この鎖、どうなってるのぉ?ミキオの指から繋がってるみたいだけどぉ」
しかしミツキはスルリと躱してオレの指、というより鎖をつまみ上げた。
「グスッ、グスッ、なんか、仮面の男に変な世界でもらった」
「扱い方とかも?」
「いや、自分の力だから何となく分かった」
まるで最初からこの異能があったかのように、オレは異能を受け入れていた。
「・・・・・・まぁ、今は置いとこぉ。それよりも、気になってる事があるんだぁ」
するとミツキはオレが肩から下げているポシェットを指差した。
「そのポシェット、膨らんできてない?」
「ーーーーーーへ・・・?」
そういえばさっきから肩が重い気がする。
いや、思えば物凄い重量だ。
アレ?これ、ともすりゃ笑えないくらい・・・。
嫌な予感がして、ゆっくりとポシェットに視線を移す。
ーーーーーーパンパンに膨らんだポシェットは今にもはち切れんばかりだった。
「重ぉッ!!ちょ、痛たたたたッッ!痛い痛い、ミツキ助けてぇ!!」
「この煩わしいリアクション、間違いなくミキオだねぇ」
ーーーーーーさっきの意趣返しか!
ミツキはニコニコしているだけで、手伝おうとしない。
「ーーーーーーハァッ、ハァッ、なんだよコレ、さっきまで大した重さじゃ無かったのに・・・」
ポシェットを肩から下ろすとオレはポシェットを開けた。
するとポシェットの開け口から、おびただしい枚数の金貨が溢れて出てきた。
「・・・コレは、金貨かなぁ、見たことも無い打刻だけどぉ」
ミツキはヒョイと1つ金貨を摘んで金貨を精査する。
オレの記憶では、ポシェットの中身は謎の箱(光る)、
縄(首絞めかける)、金貨(一枚ぽっち)、しかなかった筈だ。
「何でまたいきなり・・・」
そうぼやくと金貨の隙間から光が垣間見えた。
「コレは、謎の箱?また光ってる・・・!」
ぼんやりと発光する謎の箱を手に乗せる。
するとーーーーーーー
『やぁ、諸君。おめでとう、トラ退治は完遂したようだね』
突如、目の前に現れた仮面の男。
「なッ・・・!!」
突然のあまり、体が強張り、緊張が走る。
しかし仮面の男は、オレのそんな気も知らず、話し始めた。
『ーーーーーそれではこれより、諸君らがこれから受け続ける事になる、ミッションの概要について説明していく』
『なお、一度しか言わないのでよく聞いておくように』
『・・・まず、諸君らは神によって、恣意的に呼び出された事を念頭においてほしい』
「恣意的・・・?」
「偶然、って事だよぉ、誰でも良かったって事」
発するミツキの声は固かった。
『まず、ミッション中に死亡した冥護人、つまり諸君らはミッション完遂後、生き返りの権利を得る』
『ミッションは個人の意思で拒んでもいい、今まで死んだ事の無いものにはペナルティは無い』
『つまり、ミッション中に死に、生き返った経験のあるもののみペナルティは適応される』
『諸君らが1人につき1つ持っているこの箱だが、これよりこの箱を媒体にしてミッションを伝達する』
『ミッションを受ける者は、これより先、私ではなくこの箱を通して指示書を配布する』
『もう一つ、この箱の役割は諸君らの『孵化』を促す為の物である』
『『孵化』とは覚醒の様なものという理解でいい』
『『孵化』のタイミングは個人差があり既に『孵化』したものもいる』
『ミッション達成者、準達成者には報酬が与えられる』
『例えば、今回の達成報酬は金貨250枚だ』
『報酬はミッションごとで毎回異なるが、確実に諸君らの役に立つものだ』
『ミッションには2種類あり、1人がクリアしたら全員達成した事になる全員参加型』
『あくまで個別に指示書を与えられ、各々でクリアしなければならない個人型だ』
『最後に、箱は所有者が死んだ場合消失する』
『これは所有者が生き返っても戻ることはない』
『以上だ。後は諸君らの検討を祈る』
長々と、ミッションの構造を大まかに説明した仮面の男は、言葉を終えるとその体を霧散させた。
と、同時にーーーーーー
「うわっ!箱からなんか出てきた!!」
A4用紙ほどの小さい紙と、1平方メートルはある、大きな紙が出てきた。
「こっちの小さい方が指示書で、大きい紙はーーーー」
地図だった。
多分、この草原を含めた、ここら一帯の地図。
『武具を一式揃えよ。制限時間 20日』
紙いっぱいに印字された文字は、明らかに日本語ではなかったが、何故か読めた。
「地図によると、ここから一番近い町は真っ直ぐ7キロの所だねぇ」
「うしっ、取り敢えず、そこ行ってから考えるか」
正直、仮面の男の説明には思うところがあったが、今は人気のある所に行こう。
なんにせよ情報が欲しかった。
この世界の情報を。
「じゃぁ、行こうか」
「おー!・・・いやちょっと待ってくれ!金貨が大量にあること忘れてた!ミツキちょっと持ってくれ!」
「ミキオー。早く来ないと置いてくよぉ」
「ちょ、ミツキさん!?金貨持ってくれません!?こんなもの7キロも背負ってけないんですけど!!」
「ミキオー」
「ああぁぁ!!全部持つよ!持ってやるよ、ふんだぁぁぁぁぁ!!」
ともすれば姦しく、なんにせよ確かにミキオとミツキはまだ見ぬ町へ歩を進めていった。
どうも!キズミ ズミです!!
幕間くらい短くまとめようと思ってました、はい、過去形です・・・。
超えましたね、2千字。
いよいよ作者の構成力の無さが浮き彫りになってきました。
2章ではなんとかします。