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チート無しクラス転移〜〜Be chained(ベチーン)〜〜  作者: キズミ ズミ
1章 連綿と紡がれゆく者たち
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一章 4話 『今は亡きエチュード』



オレがミツキと出会ったのは、高2の1学期だった。


高校生の第二学年とは言っても、クラスは1年時の持ち上がりだからクラスメイトは全く変わらず、さした新鮮味も無かった。


始業式を終えて、一人足早にクラスに向かうと、見慣れない顔の、線の細い巨体が先生と話していた。


後からそいつは転校生なのだと知ったが、自己紹介も、どこか事務的で感情表現が貧しいやつなのだと、一見して感じた。


事実、ミツキはホームルームが終わった後、クラスメイトから様々なことを質問されていたが、どれも素っ気なく、希薄で無難な答えしか返してなかった様に思う。



とはいえ、クラスで若干浮いた存在のオレはそんな彼らとミツキの質疑応答を尻目に一人帰る準備をしていたのだが。



ミツキが転校してきてから数日経って、本格的に授業が始まった。


この辺りからミツキの『転校生』という物珍しい属性は霧消し、結果としてクラスに浮いた存在が一人増えるという事になった。


一人はオレと、もう一人はミツキ。


オレは別にそんなミツキに連帯感など感じていなかったし、転校生という分かりやすいレッテルを貼られ、勝手に期待されて勝手に失望されたミツキに哀憐の情を感じているわけでも、無かった。


高2の、1学期中間テスト。


テスト返し時に、クラスが大きくどよめいた。


渦中の人物は、ミツキだった。


テスト返しが終わり、何気なくミツキに点数を聞いたクラスメイトの一人が、大げさに騒ぎ立てたのだろう。


「安倍クン、全教科100点!?」


「マジかよ・・・合計平均、オレの3倍はあるじゃねえか!」


「いやそりゃ100点だぞ!そのくらいは・・・え?3倍・・・?」


喧々諤々とミツキを中心に喋り立てるクラスメイトたち。


オレはといえば、仰天していた。


ミツキの点数に、ではなく、自分の点数に、だ。


「・・・全9教科、合計平均18点・・・・・・」


控えめに言って、酷すぎる。


もともと頭が良い訳でもないが、今回は完全に油断した。


まさかテスト期間中に好きな文庫本が二巻同時刊行するなんて、夢にも思っていなかった。


無論、発売日当日に購入し、読みふけった。


それだけじゃない。


うっかりそのシリーズの本全巻一気見してしまい


「新刊まだかよ!作者仕事しろ!」


などと、のたまった記憶がある。


「はぁー、こりゃ母さんにどやされるな・・・」


今から気が重く、胃がキリキリしていた。


とはいえ、テスト返しだけで6限目が終わったのは重畳だった。


家に帰って、風呂入って寝るか。


そんなお爺さんみたいなことを考え、帰路につこうとしていたオレに


「ねぇ、一緒に帰らないかなぁ?」


ふと尋ねられた気がして、見上げた。


身長180はある線の細い体。


切れ長な瞳に七三に分けられた髪型。


ミツキだった。


オレはこの時まで、ミツキと話したことがなかった。


何故いきなり話しかけられ、帰宅の同伴を求められたのかは今でもよくわかない。


ただ断る理由も無いし、登下校路も同じだったため、結局一緒に帰る事にした。


そこから、急速にミツキと仲良くなっていった気がする。


何分、人との距離の取り方に不慣れなオレだったので、最初は裏か何かがあるのではと疑ったこともある。


でもミツキは、話してみるとどこか知的で、それなのに無邪気な一面を持つ、カッコいいヤツなのだと思った。


ある時、話題が途切れて、会話の接ぎ穂を探していた時に、こんな事を言った覚えがある。


「ミツキってさ、スゲェよな」


「・・・?何がさぁ?」


「どんな時でも冷静でさ、頭もキレるし、オレが持ってない所を、大体持ってるだろ?」


だから、スゲェなぁって思った。


ミツキは一瞬照れたような顔をして、すぐにいつもの冷然としたポーカーフェイスに戻してから


「・・・そんな事、ないよぉ。ボク、あまり多くの人の前では喋れないし、足だってそんなに早くない。それにーーー」


「それに?」


一拍おいて、ミツキが口を開いた瞬間、車のクラクションが鳴り響いた。


「ーーーーー憧れてるのは、ボクの方だ」


やっとクラクションが収まり、辺りに静寂が戻った時、

既にミツキは言い終わった後だった。


「すまんミツキ。聞こえんかった。もう一回頼む」


と言うとミツキは冗談めいた顔で


「友達が少ないからねぇ。君みたいに」


と言って冷然としていた。


ーーーーーーーーーーーーーどうして!?


思い出すのは何気ない日々の事。


想起されたミツキとの思い出が、走馬灯のように駆け巡っている。


グルグルと、グルグルと、グルグルと、グルグルと廻っている。


ーーーミツキは、死んだ。


至極簡単に、アッサリと『トラ』にかじり取られて生き絶えた。


いいヤツだった。学校でただ一人の、オレの親友だった。


人の事をやたらと聞いてくるわりに、自分の事は何も話さない、そんなやつだった。


だから、まだ余地はあった。


まだ、まだ、まだまだまだ!


アイツの、良き理解者になれる余白は、もっとあったはずだった!!


見上げるほどの大虎を前に、本当はただ足がすくんで、漏らしそうなほどビビっていただけだった!


オレがもっと早く、ほかのクラスメイトの様に逃げていれば!


ミツキが死ぬ事は無かったはずだ!!


・・・・・・オレが無力で、腰抜けで、ただ意気がっているだけの間抜けで無かったら!!


ミツキはーーー


『力が欲しいか?加藤ミキオ』


「ーーーーーぇーーー?」


ふと、我に返った。


ここは、どこだろう。


暗いのか、明るいのか、寒いのか、暑いのか、呼吸はしている、のか?


とりあえず、意味のわからない空間だった。


そんな空間の真ん中で、オレは大音量で泣いていた。


『加藤ミキオ、君は無力だ。当たり前だ。ただの高校生が、着の身着のまま異世界に飛ばされて、あまつさえトラなんかと戦わされている』


『何のために?』


『しかし理解してくれ。この世界は理不尽だ。絶え間なく人が死ぬ』


『理不尽で、理不尽で理不尽で理不尽で理不尽な世界で!!!』


『君は、生きなければならない』


『とはいえ、只人のままでは可哀想だ』


『力を与えよう。無論、慢心はいけないがね』


「あんたは、何のーーーーー?」


『仮面の男でいいさ。今はね』


そう言うと、男は、仮面の男は、ゆっくりと会釈をして、踵を返した。


「ーーーッ!!待て!」


追いかけようとしても、足がもつれて動けない


『私に拘泥している場合かね。卵は与えた。君の随意に

扱いたまえ』


意識がーーーー暗転しかけている。


既にーーーーーーー仮面の男の姿は判然としない。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーぁぁぁ。


気がつくと、オレは大草原に屹立していた。


意識が繋がって、すぐに分かったのは体から湧き出る万能感だった。


「今なら、大トラにでも勝てそうだ」


ボソリと言って、オレは『トラ』のいる方角へ、疾走した。



<hr>


どうも!キズミ ズミです!




全く話が進まなくて本当に申し訳ないです!


次回あたりには『トラ』戦は決着です!!


・・・・・・多分。

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