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9話 赤髪の少女とスキルの使い方。

 地下室には4つの檻が作られており各檻の中には数人の子供達が閉じ込められていた。檻の中に居る子供達はグッタリとした様子で俺を見ても反応が薄い。劣悪な環境で精神が弱っているのかもしれない。


「お前たちもう大丈夫だ。今助けてやるからな」


 俺は壁のフックに吊られていた。牢屋の鍵を手に取ると一つづつドアを開けていく。


「さぁ、もう大丈夫だ」


 ドアが開いた事により、やっと助かると解った子供達が泣きながら飛び出してきた。

 順番にドアを開けていくと、最後の檻には少女が一人だけ閉じ込められていた。


「ふんっ。遅いじゃない。このノロマ!! この私を随分と待たせて悪いと思わないの? これはお父様に報告しないと駄目ね」


 サラと同じ歳位の少女は他の子供とは違って豪華な服を来ていた。赤い髪を伸ばしクルクル状に巻いたヘアースタイル。エリザベス宮殿に出入りする貴族に近い感じだろうか。

 隔離されていたと言う事は、特別扱いを受けていたと言う事になる。可愛い顔をしているのだが、頬を膨らませて随分とご立腹の様子。

 助けるのは構わないが、この言葉遣いには少々腹が立つ。


「お前、助けてくれる人に対して何ていう口を聞くんだ? 教育がなっていないぞ」


「貴方、私に向かってなんて口を聞くのよ。どうせお父様に雇われた傭兵か何かなんでしょ? さっさと助けなさい」


 少女はビシィィッっと俺に指をさして偉そうに指示を出す。


「生憎と俺はリンダって言う子供を助けに来たんでね。他の子供達は可哀相だからついでに助けているだけだぞ」


「なっ。それじゃお父様の手の者じゃ無いって訳? ぐぬぬぬ……それでも良いわ早く助け出しなさい」


「俺は知らん。鍵は開けてやるから自分で出てこいよ」


 生意気な子供には躾も必要だろう。


「サラ姉ちゃんが家に連れてきた人だよね? 助けてくれてありがとう」


 俺がクルクル巻髪少女と話をしていると一人の女の子が近づいてくる。その顔は薄っすらとだが見覚えがあり、彼女がリンダなのだろうと予想ができた。


「もしかして、君がリンダちゃんか?」


「うん」


「そっか、もう安心だ。ペドロやサラも心配している。早く顔を見せて安心させようぜ」


「うん!! でもソフィア姉ちゃんも助けてあげて……ソフィア姉ちゃんは私達が捕まって泣いている間、ずっと励ましてくれてたの」


「ソフィア姉ちゃん?」


 リンダが頷き指を指したのはあのクソ生意気な女の子だった。今は俺に背を向けて膝を抱えて座っている。

 仕方なく近づいてみると、ヒックヒックと声を殺して泣いていた。


(全く……プライドが高いにも程があるぞ)


 ガンとしても動かないつもりの少女を、俺は仕方なくお姫様抱っこで持ち上げる。


「なっ女性に対して無礼よ!! 放しなさい」


「五月蝿い。お前が歩く気が無いんだから仕方ないだろ?」


 ジタバタと抗うソフィアを無視して歩きだしていると、他の子供たちが羨ましそうな声を上げる。


「いいなー。お姫様見たい」


「うぅぅぅ。自分で歩けるわよ。早く降ろしなさーい!!」


 子供達の声を聞いたソフィアは、リンゴの様に顔を赤面させてジタバタと暴れだす。

 降ろした後もブツブツと文句を言っていたが俺には関係ない。けれど子供たちをずっと励ましていたと聞く。心が優しいのは確かなのだろう。


「よく頑張ったな」


 俺はそう言いながら、頭を撫でた。俺は仕事が出来る男で飴と鞭の使い方は心得ている。

 子供を褒めるのは頭を撫でる位が丁度いいだろう。


「女性に断りも無く。頭を撫でるなんて……もぅ」


 ソフィアは更に頬を赤面させたまま下を向き俺が撫でるのを、甘んじて受け入れている。プライドが高いと言っても、やはり子供だ。


 1階の地下へ入るドアの前にはカレンが仁王立ちの状態で立っていた。カレンの前には流し見しただけでも10人以上のゴロツキ共が床に転がっている。


「カレン、大丈夫だったか?」


「ん。そっちは終わったか? 私の方は問題ない」


 10人以上のゴロツキを倒して、息一つ切れていないカレンの姿を見て俺は冷や汗を流す。


(やっぱり、カレンを敵にまわすのだけは止めておこう……)


「それじゃ作戦は無事成功って事だな。後は外で待っているサラを連れて帰るとしようか!」


 けれど俺達が意気揚々と外へ出ると、予想外の状況が待ち受けていた。


「よくもやってくれたな。お前達のおかげで俺の面子は丸つぶれだ!!」


 外に出てみると、3人の男がサラを捕まえた状態で俺達を待ち構えていた。サラは首に腕を回され身動きが取れない。面子と言っている事から判断するとコイツがグリード一味のボスだろう。運が悪い事にどうやら外出していたみたいだ。

 それにしても面倒な事になった。家でカレンに殺されていれば良いものを!


「おおっと【不死身のカレン】さんよ、ちょっとでも動くと仲間の命は無いぞ」


「くっ卑怯な!!」

 

 グリードは動けないサラにナイフを突き刺している。サラの頬に刃が食い込み少量の血が流れていた。


「コーヘイ兄ちゃん。アタシがドジッち待ったせいだ。アタシの事は良いからコイツ達を倒してくれよ」


 健気なサラは強気にそう言っていいるが、そんな薄情な事が出来る位なら元から子供達も助けてはいない。


「へっへっへ。どんな手を使っても勝てば良いんだよ」


(これって悪党の定番文句だよな……まぁ、仕方ないあの技で行くか)


 俺は隣に立つカレンに小声で作戦を伝える。


 今日カレンに追いかけられてスキルを使った時に、自分の目論見とは違う中毒症状に掛かっていたのを思い出す。

 俺は自分が今まで思考錯誤してきた経験と、予想を照らし合わせて、自分のスキルの使い方を何となく把握しつつあった。


「カレン、3人の意識を今から一瞬だけ引きつける。その間にあの3人を倒せるか?」


「注意さえ引いてくれれば大丈夫だが……そんな事が出来るのか?」


「じゃあ、突っ込む準備だけしておいてくれよ」


 そしてポケットから一枚の銅貨を取り出して相手に見せた。


「抵抗はしない。でもお前達これを見ろ!!」


「あぁ、単なる銅貨じゃねーか? それがどうした?」


 その銅貨を一度手の平で握り込み、再度一度指先で掴み男達に見せつける。


「もう一度、よく見ろ。これは何だ?」


「お前ふざけてやがるのか? だから銅貨だろうがぁ。おい! そんなつまらない事していると、本当にこの女を殺すぞさっさと武器を捨てろ!!」


「あぁ、武器は捨てる。だがもう一度だけ見てみろ。これは何だ?」


 3回目でやっと3人の男の顔に【銅貨を見る】と言う文字が浮かびあがる。それを確認した俺は、ニヤリと笑みを浮かべ、銅貨を空に向かって高く放り投げる。

 男達は銅貨を目で追う為に顔を空へと向けている。


 予想通りの中毒症状だった。俺が思い描く状況に相手を中毒症状にさせる為には、相手に意識させなければいけない。

 ボディーガードから逃げていた時に俺は大声で【右だ!】と叫んでいた。けれどカレンに追いかけられて居る時はただスキルを掛けただけ。その違いがスキルの中毒症状を変えていた。


【相手に意識させる事】それが大きく意味を持つ。


「カレン。今だ!!」


「任せろ!!」


 疾風の様な素早さで飛び出し、自身の間合いに男達を収めると電光石火の剣さばきで3人を一瞬で倒していた。


 俺がもう大丈夫だと安堵して一息を吐いた時、ドッと疲れが身体を襲う。


 それは今まで感じた事がない疲労感だった。何とか倒れるのを堪えて、気丈に振る舞い俺達は助けた子供達と共にペドロ達が待ついえばへと向かった。

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