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23話 帰還

 俺が目を覚ました所は見知らぬ部屋のベッドの上。上半身だけを起こして、視線を下に向けるとカレンが椅子に座ったまま、俺の腹の上に上半身を預けてスヤスヤと眠っていた。

 

 すぐに俺が動いた事を察してカレンがバッと飛び起きる。瞳に涙を浮かべながら抱きついてきた。


「コウヘイ~!!」


 抱きつかれるままの状態で俺は声を掛ける。


「俺は眠っていたのか?」


「うん。私達を助けてくれた後、倒れて2日間も……このまま目を覚まさないんじゃないかと思って……ウエェェェン!!」




 カレンは安堵した途端に緊張の糸が切れて泣きだしたようだ。顔や露出部から生傷が見えている。自分も怪我をしているのに俺の心配をしてくれる優しさが嬉しいと思う。けれど、この最強の女が泣くなんて想像出来る筈もない。俺は呆気にとられ固まってしまう。


-----------------------

 

 時間が立つとカレンも落ち着き、俺は眠っている間の事を教えてくれた。どうやらここは協力者の商人が用意してくれた部屋の様で、カレン達は敵から無事逃げ出し今は身を潜めている。

 王女達も無事街から脱出したみたいで、これは早急な合流が必要だと思えた。

 次に俺達を襲った傭兵達は壊滅状態となっているとの事だ。棟梁や多くの傭兵達は煙を吸うを呼吸困難になってしまい。今後は傭兵家業を続けていくのは難しい。

 

 状況が分かると、次は自分自身の事を考える。俺が倒れた後2日間も眠っていたようで、何故倒れたのか検討が付かない。

 

 スキルの使いすぎ? それなら村の人や街の人に結構使った気がする。それとも何か別の要因があるのか? だが案外、単純に疲れていただけの可能性もある。


 時間が出来次第、一度検証してみる必要がありそうだ。幸い目覚めてからの身体の調子も悪くない。2日も眠っていたのなら工程が大きく遅れている。すぐに遅れを取り戻さなければいけない。


「大丈夫か!? 目が覚めたって聞いてな!!」


 ドアを開きながらダンが部屋へと入ってくる。ダンは目の周りを真っ赤にさせたカレンの表情を見て、少し驚いていたが、小さく笑みを浮かべている様にも見えた。


「お陰様で。それより王女との連絡は取れているのか?」


「あぁ、それは大丈夫だ。王女様たちは今、グロッグの街で身を隠している。スミス商会所有のホテルにいるらしいので安全だろう。だがこの街から逃げ出す時に兵士と戦闘になって数名程けが人も出たみたいだ」


「すまない……今回は俺の責任だな」


 ベッドの上で上半身をダンに向けて傾け、頭を下げた。


「おいおい、止めてくれよ。誰もアンタのせいだとは思ってないさ。逆に命を助けられて感謝している位だ。俺以外の奴等はお前さんの事を神の使いだと思っているみたいだぜ。確かに俺から見てもアンタは異質だ。一体何者なんだ?」


 ダンは真剣な眼差しを向けていた。けれどおいそれとは正体を言う訳には行かない。


「詳しくは言えないが。この世界にはアンタ達の知らない事もたくさんあるって事だ」


「確かに……助けて貰った人に対して野暮な詮索をするのも間違っているよな。また気が向いたら話してくれよ」


 砕けた笑みを浮かべてダンは右手を差し出してきた。どうやら握手を求めているのだろう。

 俺がダンの手を握ると、力強く握り返してきた。


「コウヘイ。本当に助かった。感謝する!!」


「気にするな。俺達は仲間だろ?」


 その後は、今後の動きについて話し合う。取り敢えず俺達もグロッグの街へ移動し、王女と合流する事に決めた。街からの脱出は商人が強力してくれるので難しくは無いだろう。


 翌日、俺達は荷馬車に身を潜めてグロッグの街へと向かった。


------------------------------------------


 俺達が隠れ家に姿を見せると、大きな喝采が湧き上がる。部屋の奥にいた王女は突然走り出して俺に飛びついてきた。


「コウヘイさん。よくぞご無事で!!」


 更に横からはサラが同じ様に抱きついてくる。


「コーヘイ兄ちゃん!!!」


 俺はコイツ達に特にスキルは使って居ない。ならどうして抱きつかれるのか検討が付かない。背後から視線を感じて振り返ってみると、ニコニコと笑うカレンがいた。


「こっこれは違う!! 俺は悪くないぞ!!」


 咄嗟に弁明していたが、今の所、弁明する様な間柄でもない。しかもよく見てみるとカレンは嫉妬している感じでもなかった。


「あぁ、解っている。みんなコウヘイが生きていて嬉しんだ。その気持よく理解できる!!」


 カレンは大海原の様な雄大な心の持ち主であった。

 その他の仲間からは注目されている。色んな視線を向けられて公開処刑を受けている気分だ。

 

 ヤバイ!! このままじゃ駄目だ。俺はすぐに2人を引き離すと早速本題へと移る。今後の予定はこの地方で唯一回っていない場所。ブルグ地方最大の街【ブルグ】。


 この街にはこの地方を治めるブルグ卿が住んでいる。流石に警戒しているだろう。危険度を考えれば無視するのも一つの手ではある。けれどカレン達に怪我を追わせた奴を許せる筈もない。


 俺は決着を付けるために大声で叫ぶ。


「さぁ、俺達に手を出したブルグ卿を後悔させてやろうじゃないか。やられたら、やり返すぞ!!」


 全員が大きな声で俺に応える。ブルグ卿には悪いが次は今回の様にはいかない。演説は敵を打ちのめしてから、ゆっくりとやらせてもらう。


「今度は俺達から仕掛けてやるぞ!!」


 力の使い方も応用の仕方も大分と解ってきた。ならば使わない手はない。本気を出した俺がどんなものか目にものを見せてやる。


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