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15話 王女の願い

 プリースト国には大小数多くの街や村などが存在し、その全てを王が統治していた。王の下では貴族制が敷かれ爵位の高い貴族達が与えられた領土を治めている。自領を持つ貴族の数はおよそ20領。

 今回クーデターを起こしたのは首謀者がマクレーン卿と呼ばれ公爵の爵位を持つ男。それに続き爵位だけの貴族と自領を持つ10の貴族達。


 過半数に反乱を起こされ王都も数日で陥落したらしい。半数も造反するなんて王は一体どれだけ無能なんだと感じてしまう。けれど色々調べていく間に、クーデターを起こされた理由も判明してきた。


「なるほどな、王は国民の為に税を極限まで軽くしてやっていたのか……」


「はい、税率は王が決めおり。貴族単位で設定する事はできません。それに国民から徴収する税の上限も決めておりました。お父様は全て国民の為に……。王は貴族達をずっと抑えていたのです。だから私腹を肥やしたい貴族は歯がゆい思いをしていた筈です」


「それで、今回加担した貴族はどんな奴らなんだ?」


「今解っているのは、マクレーン卿と彼と懇意にしていた自領持ちの貴族。それに最近当主が代わったばかりの当主が若い貴族が連なっております。若い当主達はきっと騙されているのでしょう……」


 潜入してから1週間が経過しているが、俺達は目立った行動は取っていない。現時点は情報収集に徹している。ペドロとサラ、それに半数の傭兵達が各街や村を渡り情報収集をしてくれている。彼等が持ち帰る情報を元に作戦を修正していかねばならない。


 一応、裏切り防止を考えてスキルは使わせて貰っているので、敵にリークされる心配は無いだろう。


 全ての情報が揃い次第、次の行動に移る予定だ。


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 それから10日後、情報収集に出ていた全ての者が帰ってくる。情報をまとめて見ると、地方の貴族より王都周辺の貴族達が反乱に組みしている。今回クーデターに参加していない貴族たちは自領を守るだけで精一杯となっており、今は様子を見ている感じだ。


 けれどこの半年間でマクレーン公爵の力が更に増しているようで、3ヶ月後の建国記念日に国王就任の儀式を執り行うと情報が入ってきた。


「そんな暴挙を行わせる訳には行きません! 私が必ず阻止してみせます!!」


 王女は荒々しく答える。日頃、冷静な王女が声を荒げるのも珍しい。それだけ憤りを感じているのだろう。


「そう声を荒らげなくても、国は絶対に取り返してみせる。情報も集まった事だ。そろそろ行動に移すぞ!」


 俺は修正した情報を元に作戦を開始させた。


------------------------------------


 翌朝、まだ日も昇っていない時間に俺達は街を抜け出した。向う先は隣国との国境線に近い小さな村。

 街位の規模になれば領主も兵士を配置しているが、基本的に村には村民しかいない。なので最初はこの国にある全ての村を回って有志を集めるつもりだ。


 俺達を載せた馬車は最初の目的地となる遠方の村へと向う。メンバーは王女一行と護衛として傭兵が10名。残りのメンバーは引き続き情報収集に当たって貰っている。


 馬車を休ませながら走ること10時間。やっと最初の目的地の村へとたどり着いた。時刻はすでに日が傾き夕方前と言った所か。俺達が村の中へ馬車を侵入させると、物珍しさから村人たちが集まってくる。

 

 俺達は村の中心部に馬車を止めた。


「商人の方ですか? それともお役人様で?」


 年配の男性が声を掛けてくる。他の村民たちは少し遠巻きから見つめているので、彼は村長的な人物なんだろう。


「そうじゃないんだけど、村人を全員集めてくれ。王女様が皆に話したい事がある」


 男性は半信半疑ならがらも、村人たちに声を掛ける。

 これは俺達が領主の使いだった場合、指示を聞いておかないと後でペナルティを掛けられると思っているからだろう。そうでなければ、見知らぬ者の言う事を聞く筈がない。


 暫くして村人が全て集まる。村人は全員で80名前後、子供や老人の姿もある。

 準備が整い。王女は村人の前に立ち演説を始める。その凛とした姿は決意の現れでもあった。


「私はこの国の第一王女、アクア・プリーストです。皆さんも御存知でしょう。半年前の反乱を! その結果、王は行方が知れず。この国は混沌と化しています。今まで以上に重い税を課せられ国民全てが苦しんでいると私は聞いています。私は……命を掛けてこの国を取り戻し、以前の様に国民全てに笑顔を取り戻してみせます。どうか私にお力をお貸し下さい」


 王女の演説が終わった後、誰もが声を発せずに居る。俺が見た感じで言うと状況について行けずに絶句している感じか?


 村民に対して王女が突然こんな演説を始めても、自分達はどうしたらいいか解らない筈だ。ずっと領主の指示で動いてきた人に判断させるって事自体が無謀。


 けれど俺には【中毒】のスキルがある。ほんの小さな波を起こさせれば後は簡単な事だ。

 俺は言葉を発せずにいる村人の側に近づき声を掛けた。


「王女様も言っていたが、反乱が起こった後にあんた達の暮らしは楽になったのか?」


「いや……以前より重い税を掛けられ、その日の飯にも困る時がある……」


「そうだろ? その苦しみから王女様は救って下さると言っているんだ。どうだ少しでいい力を貸してくれないか?」


「そりゃ、暮らしが楽になるなら……」


 その言葉を待っていた。今この村人は自分の意思で楽になるなら力を貸すと言った。

 その瞬間に俺は男の肩に手を載せ、スキルを使用する。すると男の顔に文字が現れる。

 

【俺達を救ってくれるなら、王女に力を貸す!!】


 その後、最初に俺がスキルを掛けた男が大きな声で叫びだす。


「皆も苦しいだろ? 王女様に力を貸して元の暮らしを取り戻すんだ!!」


 男は何度も叫けぶ。すると少しづつ同調する者たちが現れだした。俺は同調した者達にもスキルを掛けて行くとその小さな波は次第にうねりとなって最後は大声援へと変わる。


「王女様ーーー!!!」


「共に戦うぞーー!!」


 村人の声を受けて、王女が涙ぐんでいる。けれどこれは俺のスキルで作り出した洗脳に近い状態。

 本当なら村人達は尻込みしてしまい。行動に移さないだろう。


 もし彼等が兵士達と戦えば、ゴミくずの様にその生命を失うかもしれない。けれど俺の考えでは数の勝負でもあった。彼等をただ単に突っ込ませて命を失わせるつもりもない。

 俺が考えつくどんな手段を用いても、最小の被害で圧勝してみせる!!


 それが俺にできる唯一の償いだろう。


 俺達は村長に話をつけ国王就任式典の前まで、無闇に動かない事を約束させた。動く時は全ての準備が終わった時だ。


 最初の村を後にした俺達はそのまま国中の村をまわり、同士を増やしていく。

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