Chapter1-5:城内
もしかしたら、今日はあと1話更新するかもしれません。
「こちらが客室の間となっております」
エレインが案内してくれた場所はかなり大きい部屋だった。
俺の家かつ仕事場であるオンボロ小屋の3倍ほどの広さがある。
1つの家が1つの部屋の広さに負けるとは世の中理不尽だな。
「では、私は一旦失礼します。何かあったら部屋を出て近くを歩いている人に声をおかけください」
「あ、はい。分かりました」
俺の返事を聞くとエレインはお辞儀をして出て行った。
1人で広い部屋に残された俺は落ち着かず部屋の中を適当に歩いていた。
貧乏性というやつだろうか。妙にこういう場所は落ち着かない。
とりあえず、はやくナターシャが戻ってきてくれることを祈ろう。
1時間は待っている。
それなのに俺は依然と部屋に一人ぼっちだ。
なんとなく忘れられてるんじゃないかと心配になってくる。
「1度、この部屋出てみようか?でも迷子になったら・・・」
俺は多少の心配もあったが一応出てみることにした。
このままだと当分、この部屋に閉じ込められることになるからな。
俺は部屋の扉をあけそーっと外の様子を窺った。
別にこんなことする必要はないのだがやってしまう。
理由は知らない。
「俺、怪しい奴みたいだ・・・」
そう思いながらも俺は十分に怪しい移動の仕方で城を移動し始めた。
そして10分後・・・。
「早くも迷子って訳か・・・」
一体、ここはどこなのだろうか?
俺が分かってることは室内って事だけだ。
上に屋根が見えるからなそれは間違いないわけだ。
それにしても、この広さは一体何なんだ・・・。
生活をしていくうえでこんなもの必要あるのか?
まったく金の無駄遣いもいいところだ。
「それにしても・・・。どうして誰とも出会わないんだよ」
10分以上歩いてるし既に隠れるのはやめにしている。
それなのに未だに一人ぼっちってどうよ?
いじめられっ子みたいじゃないか。
「部屋から出るべきじゃなかったって訳か・・・」
とりあえず、そこらへんにある部屋で適当に休んでるか。
こんだけ部屋があれば、空き部屋なんてたくさんあるだろう。
よし、それに決定。ということで、この目の前の部屋にさっそく入ろう。
ガチャ
鍵はかかっていなくドアは普通に開いてくれた。
ふかふかのソファがあるといいななんて思いながらドアを押した。
「あれ・・・?」
そこには予想外に人が居た。
しかも、俺がここに来ることになった原因の人が。
着替え中なのか上着に手をかけているところだった。
ナターシャは俺を見て固まっている。
「キャー」
ナターシャの叫び声が城内に響き渡る。
俺は逃げなきゃと思いながらその場から動くことが出来なかった。
だけど、頭だけはしっかりと動いていて俺は自分の命が危険に晒されていることを理解していた。
「死刑だ、死刑だ」
今、ひたすら死刑を連呼しているのはナターシャのお父様である。
つまりアルレイン国の王様ウィリアム・アルレインだ。
王様のくせに国民を簡単に死刑にしようとするとは・・・。
まぁ、自分の大切な娘の着替えを覗かれたんだからしょうがないか。
やったの俺だけど・・・。
「お父様、ルークはわざとじゃないのよ」
「そんなことは関係ない。覗いたことには変わりはない」
「でも、ルークは私の恩人よ」
「それを考慮しても死刑だ。あいつに生きる資格はない」
「駄目よ。それに、どんな罪状で死刑にする気なのよ」
「お前の着替えを覗いた。それだけで十分だ」
「駄目よ。とにかく、もう静かにしてよ」
「・・・・・・・。チッ」
「王様のくせに舌打ちしない」
なんか、これ見てるとあの人が王様でこの国大丈夫なのかと思ってしまう。
実際は国民にしっかりと信頼されてる人だけど。
「分かった。小僧、今回だけはナターシャに免じて許してやる」
「はぁ・・・。ありがとうございます」
小僧って何だよ。俺は18だから成人をしてることになってるんだよ。
「おいおい、何だその目は?文句でもあるのか」
「いえ、ありませんが」
「つまらん。口答えしてきたら死刑にしてやろうと思ったのに」
この人はどんだけ俺を殺したいんだよ。
もう、これからは心の中でこいつって呼んでやるよ。
「あの、これから俺はどうすればいいんでしょうか?」
とりあえず俺としては報酬を貰って帰りたいんだけど。
「帰れ。さっさと田舎に帰れ」
「それはいいんですけど。まだ報酬をもらってないので」
「報酬?娘の着替えを見といてなんだそれは?」
「え、でも、あれはわざとではありませんし」
「関係ない。お前にやる物なんて何もないわ」
この野朗、お前が王様じゃなきゃ今すぐ殴ってるのに。
「でも、報酬がないと色々困るんですが・・・」
こっちは餓死寸前なんだよ。
良く考えたら3日何も口にしてねぇし。
よくここまで護衛できたと自分で自分を褒めてもいいぐらいだ。
「ははは。金がないのか?そこら辺で餓死でもしとくんだな」
「・・・・・・・・・」
こいつは本当に王様なのか?
愛すべき国民に向かって餓死しろだって。
そろそろ俺の堪忍袋の緒も切れるってもんだぜ。
切れないけど。
「お父様、ルークに意地悪はやめて」
「お前、まさかあんな変態野朗の見方をするんじゃないだろうな」
「ルーク、報酬はあとで渡すから」
「駄目だ、そんなの絶対に渡すな。こいつは餓死させるんだ」
「あとで、もう1度私の部屋に来てくれる」
「ナターシャ、お前は何を言ってるんだ。こんな変態を部屋に連れて行くなんて」
「そこで、ちゃんと報酬は渡すから」
「おい、ナターシャ。聞いてるのか?」
かわいそうなことに王様しかとされてるよ。
まぁ、いい気味だ。俺を餓死させようとした罰だ。
もしかしたら、今日はあと1話更新するかもしれません。