Chapter1-4:到着
俺とナターシャは暗闇の中を走り続けていた。
本当は休憩したいところだけどナターシャに何かがあってからじゃ遅い。
とにかく今は早く目的地につかなければならなかった。
「そういえば、ナターシャを誘拐した奴らって誰なの?」
「・・・・・・。ヴィシュラート一族よ」
「え・・・・」
ヴィシュラート一族。
何千年も昔から外の世界の住人とは交流せず生きてきた一族。
大昔は奴隷のように扱われていた為、長い間アルレインを恨んでいる。
そして15年前。その恨みは1つの事件を引きおこした。
それがヴィシュラートの乱。
当時、一族の長だったジョナサン・ヴィシュラートが中心に引き起こした乱。
彼は一族の中で歴代最強の力の持ち主だといわれていた。
彼はその力を使い禁断の魔法で何匹もの悪魔を呼び出した。
この事態にアルレインだけでなく世界中が危険に晒された。
世界各国はお互いに協力して国からなるべく多くの優秀な魔法使いを集め応戦した。
魔法使い達は多くの命を犠牲にしながら何とか勝利を収めた。
犠牲になった人たちの中には俺の両親もいた。
「・・・・・・・」
「ルーク、どうしたの?」
「いや、なんでもないよ。少し考え事してただけ」
「そう」
俺達はその後、無言で走り続けた。
俺の中では昔感じた怒りが渦巻いていた。
太陽も昇り始めだんだん明るくなってきた頃。
俺達はやっとのことで首都に辿り着いた。
長い道のりだった。一睡もしないで走り続けたぐらいだから。
「ルークありがとう。あなたのおかげで助かったわ」
「気にしないで。何度も言うようだけどこれが仕事だから」
「とにかく1度お城に来てくれる。お礼もしたいから」
「うん、まぁそれはいいけど」
実を言うとさっさと帰りたいがまだ報酬を貰ってないし。
お城という場所はあまりにも恐れ多いがしょうがないだろう。
貰えるものを貰ってさっさと家へ帰ろう。
「ここがアルレイン城よ」
「へぇ・・・。なんというかでかいね」
これは既にお金の使いすぎのレベルなんてもんじゃないと思うけど・・・。
俺はボロ小屋に住んでいるというのに、理不尽にもほどがある。
「ナターシャ様?ナターシャ様ですね」
突然、どこからか若い女性の声がした。
声の方向を向けるとメイドさんらしき人がこちらへ走ってきた。
「ナターシャ様、ご無事で良かった。本当に心配したんですよ」
「ごめんなさい、エレイン。突然の出来事だったから連絡も取れなくて」
「あなたがご無事なら構いません」
エレインと呼ばれた女性はそう言いながら俺に目を向けた。
なんだか胡散臭そうな人物を見るような目になっている。
失礼なやつだな。俺はナターシャの恩人だというのに。
「あ、紹介するね。彼は私を助けてくれたルークよ」
「そうなんですか。私はエレイン・ブラウンと申します」
「あ、ルークです」
「よろしくお願いしますね」
「はぁ、こちらこそ」
俺はお辞儀するエレインを見て慌てて真似をした。
やっぱりこういう場所は苦手だ。
「ナターシャ様、早く王様にお会いになってください。昨日からずっと心配なさってるのです」
「えぇ、分かってる。今から行くわ。エレイン、ルークをお願いしてもいいかしら」
「はい。客室の間へと案内しときます」
「ありがとう。じゃあ、私は行くわね」
「はい」
エレインの返事を聞くとナターシャは走って城内へと入っていった。
俺はまだ会ったばかりのエレインと2人きりにされてしまった。
なんか気まずいな・・・。