Chapter1-3:戦闘
2時間ほど移動し続けただろう。
辺りは既に暗くなっている。
俺とナターシャは今日は移動をやめ野宿することにした。
王女様に野宿をさせるのは嫌だがしょうがない。
「遅くても明日の昼までにはつけそうだね」
「えぇ、あなたのおかげで助かったわ」
「仕事だから気にしないでよ」
もし俺が有能ななんでも屋だったら瞬間移動だけで依頼達成だったけどね。
でも、よくよく考えたら首都まで行ったことないし無理か。
「とりあえず、今夜敵が襲ってこなければ簡単だろうね」
「えぇ・・・」
ナターシャの返事はどこか暗かった。
まるで、敵が襲ってくるのは予期しているような感じだ。
そんな時だった。
ザワッ
「何だ今の音?」
まるで木の葉が風に揺られたような音だったけど。
今は風なんて少しも吹いてない。
つまり、ナターシャの予感が当たったということらしい。
「ナターシャ、聞こえたよね?」
「えぇ。近くにいるわね」
「厄介だな。数はそこまで多くはないみたいだけど」
「とにかく戦う準備はしないといけないみたいね」
「あぁ、とりあえずこの暗さだと厄介だし。光眼」
俺が魔法をかけると俺達の暗かった視界は次第に明るくなった。
昼の時のようにはいかないけど戦うには困らない程度の視界はある。
ザワッザワッ
音が聞こえる回数が多くなってきた。
もう相手は俺達に攻撃が届く範囲内にいるだろう。
おそらく、誘拐していたナターシャには手を出さないはずだ。
つまり最初の攻撃は絶対に俺にしかけてくるはずだ。
しっかりと集中して相手の気配を感じ取れば避けられるはずだ。
「ふぅ。おそらく敵は2人みたいだね」
ナターシャにも聞こえるかわからないほどの小声でそう言った。
なんとか聞こえたらしくナターシャは頷いた。
そして、まるでその頷きが合図かのように相手の攻撃が始まった。
「おっと」
避けることに専念して集中していた俺は相手がしかけて魔法を簡単によけた。
しかし、そこにまるで狙っていたかのように違う魔法が襲ってきた。
「守盾」
俺に向かってきていた魔法はナターシャがかけてくれた呪文で俺に届かなかった。
護衛を担当してるのに依頼者に助けられるとは。
とにかく、そろそろこっちからも攻撃をしかけないとな。
俺は2つめの攻撃が飛んできた方向を見て敵を1人見つけた。
そいつをしっかりと見つめ魔法を唱える。
「魔法手」
俺が魔法を唱えた瞬間、敵はまるで何かに引き摺られてるかのように俺の元へやってきた。
俺はそいつに向かって持っていた剣で峰打ちを決める。
これで1人は気絶だ。で、あと1人はどこだ。
俺が周りを見渡すとナターシャが魔法に襲われていた。
どうやら、俺の予想とは違いナターシャにも攻撃をしかけているようだ。
つまり、どんな状態だろうと連れて帰ればいいということか。
俺は急いでナターシャの元へと駆け寄り声をかけた。
「大丈夫?」
「えぇ。ほんの少し攻撃を受けただけよ。回復呪文で直せるわ」
「良かった」
俺はそう返事をしながら周りを見渡した。
もう1人の敵は隠れているらしくなかなか見つからない。
相手が見えないんじゃ魔法を使ったって意味がない。
とにかく相手がしかけてくるまで待つしかない。
「ナターシャ、俺から離れないで」
「えぇ」
5秒ほど経っただろうか。
俺の視界に敵が入ってきたと同時に相手は魔法を放っていた。
それは俺の目の前に飛んできて俺は簡単に交わせると思った。
実際には体もしっかりと動き始めていた。
しかし、俺は途中でその動きを止める事になった。
後ろにナターシャがいるからだ。
このままよければナターシャに攻撃が直撃する。
それは避けなければならないと思った俺は左手で相手の攻撃を受ける。
「くっ・・・」
火の攻撃魔法であったため左腕は燃えるような痛みを感じた。
俺はそれをこらえながら目で追っていた相手に剣を構えて迫った。
相手は俺が動けないと思っていたのか突然、迫ってきた俺に驚いていた。
俺は相手のそんな顔を見ながら相手に切りかかった。
「げ、峰打ちするの忘れちまった・・・。まぁ、死なない程度だしいっか」
相手は腹部から血を出しながら地面に落ちていきそのまま気絶した。
「もしかしたら、死んだかもな・・・」