Chapter2-6:謝罪
ナターシャの部屋に入り適当に座ってと言われた俺は近くに椅子に座った。
ナターシャはテーブルを挟んで反対側の席に座った。
なんとなくナターシャと初めて会った日の事を思い出す。
「ルーク、本当にごめんね」
「え?どうしてナターシャが謝るんだ?」
「だって私があなたをここに連れてきたから辛い思いさせちゃって」
「別にナターシャが悪いわけじゃないよ。あれは、あいつが悪いんだから」
「アルスのことやっぱり怒ってるの?」
「そりゃあね。永遠に許すつもりもないよ」
「彼も悪気があったわけじゃないの」
「分かってるよ。そういうのが仕事なんだろうし。それでも、許せないから」
「そう・・・」
「あぁ。簡単に割り切れるようなことじゃないから」
「そうよね・・・」
「そういえば俺も、ナターシャに謝らないといけないことがあるんだった」
「私に?謝れるようなことはされた覚えは・・・少しあるかも」
う〜ん。この場合はどっちを指すんだろう。
着替えを覗いてしまった事か?それとも嘘のことか?
顔が微妙に赤くなっているからおそらく前者に違いあるまい。
「ナターシャ、着替えのことではないよ。勿論、そっちも謝らないといけないことだけど」
「え?それ以外に何かあったかしら?」
「うん。俺が城を出て行った時、ナターシャと最後に話したよね」
「えぇ。覚えているわ」
「その時に俺、ナターシャに嘘ついたから」
「・・・・・・」
思い出したのだろうか?
ナターシャは黙り込み俺の話に耳を傾けている。
「また後でなんて言っておきながらそのまま逃げた。最低だとは思ってたけどどうしようもなかったんだ」
「・・・・・・・」
「本当にごめん」
俺は謝ってから深々と頭を下げた。
頭を下げて3秒ほどしてナターシャの声が聞こえてきた。
「いいの、ルーク。顔をあげて。あの時、一番辛かったのはあなたなんだから。私は気にしてないわ」
「でも・・・」
「それにあなたは約束を守ってくれたわ。今、こうして私とあなたは一緒にいるのだから」
「・・・・・・」
ナターシャの優しさに涙が零れそうになった。
でも、それを必死に堪えて俺は無理矢理、笑顔を作った。
そして最後に消え入りそうな声でお礼を言った。
「ありがとう」
お互いの謝罪のあと、俺達はいろんな話をした。
小さい頃の話だったり、いろんな話を。
そんな話を始めてから1時間が経ったころ、ドアをノックする音が聞こえた。
「誰かしら?」
「う〜ん、分かんない。エレインじゃないかな」
俺の返事を聞きながら立ち上がったナターシャはドアの方へと近付いていく。
ガチャ
ナターシャがドアを開けるとそこにはシェインが立っていた。
う〜ん。俺、微妙にシェインの存在忘れてたかも。
「あら、シェイン。お久しぶりね」
「久しぶりナターシャ。会いたかったよ」
そう言うと、シェインはナターシャに抱きついた。
ナターシャは一瞬、びくっとしただけで逃げ出す事は出来ずしっかりと抱きしめられていた。
「やめてよ、シェイン。ルークもいるのよ」
「久しぶりなんだからいいじゃん。僕たち許婚なんだから」
「駄目よ。とにかく離れて」
「分かったよ。ナターシャは相変わらず照れ屋なんだね」
どちからというとシェインが周りの目を気にしすぎてないだけって感じだけど。
まぁ、突っ込んでもしょうがないことだから、口には出さないでおく。
それにしても、さっきは気にならなかった許婚という言葉がやけに気になるのはどうしてだろうか?
「それにしても安心したよ。ナターシャが元気ないって聞いてたからさ」
「心配してくれてありがとう。でも、もう大丈夫よ」
「ねぇねぇ、僕が会いに来てくれたから元気になったの?」
「それはどうかしらね?」
ナターシャはシェインの質問を適当に流し、さっきまで座っていた席に腰かけた。
シェインは俺とナターシャの間にある、椅子に座ることになった。
「ルーク、さっきはごめんね」
椅子に座ったシェインが何の前触れもなしにそう言った。
「え、何が?」
「ここに無理矢理連れてきちゃって。僕はあんな事があったなんて知らなかったから」
「いいよ、気にしないでも」
「でも・・・」
「それに今は来て良かったと思えるから」
「本当に?」
「本当。だからシェインに感謝したいぐらいだよ」
「そっかぁ。それなら良かった」
この後、俺達は3人でいろんな話をしていた。
話は尽きる事なく、エレインが夕飯の呼びに来るまで続いた。