Chapter2-3:連行
「ふぅ、やっと着いたねぇ」
首都に着きシェインが開口一番そう言った。
俺は適当に相槌を打ち周りを見渡した。
アルレイン家に関係ある人が近くにいないか探しているのだ。
といっても、俺がそうだと認識できる人は少ないが。
「ねぇ、ルークはこれからどうするの?」
「今日はもう遅いからどこかに宿を取ってそこで休憩かな」
「そっかぁ」
「あぁ。シェインはどうするんだ?」
俺は何気なくそう尋ねた。
この発言が自分を地獄へと導く事を知らずに・・・。
「僕はこのままアルレイン城へ向かうよ。あ、そうだ」
「どうかした?」
「うん。いいこと思いついたんだよ」
「いいこと?」
「うん。ルークも僕と一緒にアルレイン城においでよ」
「はぁ?」
何を言ってるんだ、こいつは。
今、俺が行きたくない場所ぶっちぎり1位の場所に誘うなんて。
「やめとく。俺、ああいう場所嫌いだから」
どうだ?この完璧な断り方ならきっと大丈夫だ。
普通の人間なら嫌な事を無理矢理、させないだろう。
「えぇ、でも僕、もっとルークと話したりしたいけど」
「そういわれてもな」
お前と話してもナターシャの事ばかりだろ・・・。
「う〜ん。それなら僕が宿に泊まろうかな」
「あぁ、それなら別に構わないけど」
「そっか。それならそうしよう。じゃあ、さっそく宿探ししよう」
10分後・・・。
「不運だね。こんな時に限って宿屋に空いてる部屋がないなんて」
不運なんてもんじゃねぇよ。
もう、嫌がらせにしか思えない・・・。
「じゃあ、やっぱりアルレイン城に泊まるしかないね」
「それはやめとく。俺は今日も野宿するから」
「えぇ。僕は野宿なんかしたくないよ」
「シェインはアルレイン城に行けばいいだろ。ここでお別れってこと」
「・・・・・・。駄目」
「はぁ?」
「駄目。ルークも連れて行く」
「嫌って言ってるだろ。俺は王家に行きたくないんだよ」
「えぇ。でも、僕ルークともっと話したいけど」
「それはさっきも聞いたよ」
「それにさ、ナターシャにも会ってもらいたいんだ」
「はぁ?なんで王女様に会うんだよ?」
「僕やナターシャはさ、同じ年代の友達が少ないんだ」
「あぁ、それで?」
「だから、ルークもナターシャの友達になってあげてよ」
「無理無理。俺の場合は身分が違いすぎて友達じゃなくて下僕になる」
「大丈夫だよ。ナターシャはそんな風に人を見ないから。それにルークは僕の友達だし」
なんか、だんだん何を言っても無駄な感じがしてきた。
でも、抵抗をやめたら地獄が待っている。
「とにかく俺は嫌だから。シェインには悪いけど」
「・・・・・。体縛」
あれ?なんだか体がまったくもって動こうとしない。
もしかしてなくても魔法にかけられたみたいだ。
「ごめんね、ルーク。少しの間だけど我慢してね」
「・・・・・」
声を出そうとしても何も言えない。口が動こうとしない。
「浮遊」
シェインが魔法を唱えると突然、俺の動かない体が宙に浮いた。
どうやら、これで俺が城へ行くのは決まったようだ。
「本当にごめんね、ルーク」
歩きながらシェインが俺の方を向いて言った。
その顔は笑顔だ。どうやら、ちっとも悪いとは思っていないようだ。
こっちは最悪な事態が待っているというのに・・・。