Chapter2-1:依頼
ナターシャの護衛の依頼から帰ってきて3週間が経った。
相変わらず仕事はこないが、大金のおかげで生活できている。
だけど、そのお金を使うたびにアルレイン城での出来事を思い出す。
そしてその度に、自分の中で怒りが渦巻くのを感じていた。
「それにしても暇だ・・・」
金が結構あるとはいえ、ずっとあるわけではない。
それに少しぐらい貯金もしてみたい。
そんな訳で、俺は仕事が早くこないかなと期待して過ごしている。
「ったく。どうして客がこないんだよ・・・」
店の前に自作の大きい看板も出してあるというのに・・・。
似たような店が近くにあるわけでもない。
もっと大きな宣伝が必要なのか?
街歩いて、大声で自分の店のアピールするとか?
恥ずかしいから却下だな。
「はぁ・・・。仕事するのがこんなに難しいとはね」
コンコン
「あぁ・・・。なんかまた幻聴が聞こえてるよ」
コンコン
「・・・・・・。これは前と同じ展開」
自然に出来てしまう笑みをなんとか堪えながら俺は玄関へと向かう。
久しぶりの客だ。二回目のノックの音が聞こえたら幻聴じゃないはず。
ガチャ
そんな音をたてドアが開く。
それと同時に今回の依頼人であろう人が目の前に立っていた。
年齢は30ぐらい。性別は男性。見た目で分かるのはそれだけだ。
「ここがなんでも屋だと伺ったのですが」
「あ、はい。そうです。えっと、お入り下さい」
「ありがとうございます」
お礼を言うと男性客はゆっくりとした足取りで中へ入ってきた。
「あちらへお座り下さい」
俺はそう言ってソファに指差した。
そして、俺はいつも通りテーブルを挟んで反対側に腰掛けた。
「えっと、お名前の方は?」
「ステア・フレイビアと申します」
「ステアさんですか。俺はルーク・レイフッドと申します」
「ルークさんですね」
「はい。それで、依頼の方は?」
「えぇ。魔法石を取ってきてもらいたいのです」
「魔法石ですか?」
「えぇ。アルレインの首都から南西に20kmほど行ったところにある竜の祠を知っていますか?」
「名前だけは聞いた事があります」
「そこの奥深くにあるといわれる魔法石を取ってきてほしいのです」
「でも、そういうものってもう既に取られてるものではないのでしょうか」
「いえ、それはありません。その魔法石は竜によって守られているのです」
「え?今、竜っって言いましたか?」
「はい。竜がその魔法石を守っているのです」
「つまり、手に入れるには竜を倒さなければいけないと」
「そういうことになりますね」
「・・・・・・」
「報酬は200000グラン用意いたします」
200000グラン・・・。
ナターシャの時の依頼の10倍の金額じゃないか。
拒否しようと思ったけどその考えを拒否だ。
でも、待てよ・・・。
「そんなに出せるなら、どうして俺に頼むんですか?」
「それは、どういう意味ですか?」
「それだけの大金を支払えるならもっと一流の場所に頼む事も出来るでしょう」
「それには、また別の理由があるのです」
「その理由を聞かせてもらうことは出来ますか」
「いえ、それは出来ません」
「そうですか」
「すいません。依頼は別に断っても構いません」
・・・・・・。どうしよう?
一流の場所に頼めない理由っていうのがどうしても引っかかる。
でも、仕事を探していたしあの大金は捨てがたい。
それに、もしかしたら向こうへ行けば理由っていうのが分かるかもしれない。
「分かりました。その依頼受けましょう」
「ありがとうございます」
「期限はありますでしょうか?」
「いいえ。難しい仕事なので特に期限はありません」
「そうですか、分かりました。それでは連絡先を教えてもらえますか」
連絡先を知っておかないと手に入れたとき、渡せないしね。
「それは断っておきます」
「え?でも、それじゃあ手に入れても」
「大丈夫です。私はこれから1週間に1度、この場所を訪れます。その時に渡してもらえればいいので」
「そうですか・・・。分かりました」
変な感じはするけど依頼人の言うことにあまりケチはつけられない。
とにかく、仕事を成功される事を考える事にしよう。
「それでは、私はこれで」
ステアはそう言うと立ち上がり玄関の方へ向かって歩き出した。
俺はその後ろについて歩き、出て行くところまで見送った。
その後は、自分が座っていた場所に座って大きく伸びをした。
「よし、久しぶりの仕事だし張り切っていくか」
自分に言い聞かせるようにそう言って、俺は立ち上がった。
第2章突入しました。
昨日の後書きでも予告しましたがおそらく長くなります。
気長に読んでもらえると嬉しい限りです。
それでは、これからもよろしくお願いします。