Chapter1-1:出会い
「おいおい、どうして仕事がこないんだよ」
なんでも屋を始めてもう既に2ヶ月が経った。
10日に1度仕事が来たらいい方で最近はかなり暇だ。
「このままだと餓死の恐れもある・・・」
実をいうと、既に2日何も口にしていない。
とりあえずどんな仕事でもいいから来て欲しい。
まだ18歳なのに餓死は洒落にならねぇからな・・・。
コンコン
あれ?今、ノックの音が聞こえたような気が?
いや、人生そんなに甘くないはずだ・・・。
多分、幻聴だ。空腹が幻聴を生み出したに違いない。
こんなのが聞こえるとはそろそろヤバイな・・・。
コンコン
「・・・・・・・・・」
今度は幻聴じゃない。
俺の願いが届いたんだ。神様、あんたもまだまだ捨てたもんじゃないな。
餓死してそっちへ行ったら殺してやろうかと思ったが許してやる。
「はいは〜い、今行きま〜す」
久しぶりの仕事の依頼だから嬉しさのあまり声が上擦ってる。
まぁ、気にしない。この嬉しさをわざわざ隠す必要はない。
ガチャ
俺は勢い良くドアを開いた。
すると、そこには俺と同い年ぐらいの女性が立っていた。
「あの、ここはなんでも屋なんですよね?」
「・・・・・・。あ、はい」
思わず無言になってしまった。
だって、こんなに綺麗な人が現れるとは思わなかったからな。
特に長く伸びた金色の髪はあまりにも綺麗でかなり見惚れてしまう。
「あの、どうしたんですか?ボーっとしちゃって」
「あ、いえ。なんでもありません。それより依頼ですよね?」
「えぇ」
「じゃあ、中にお入りください」
俺はそう言って彼女を中へと導く。
彼女はお礼を言って中に入ってきた。
「そちらの椅子に座ってください」
俺は彼女にそう言って自分はテーブルを挟んで反対側の椅子に腰掛けた。
「えっと、最初に名前を伺ってもいいですか?」
「えぇ。私の名前はナターシャ」
「ナターシャさんですか」
「えぇ」
あれ?どっかで聞いたことがあるような名前だけど。
まぁ、深く詮索して逃げられたら困るしほっとくとするか。
「で、依頼の方は何でしょうか?」
「私をある場所まで送り届けて欲しいの」
「護衛ということですね?」
「えぇ、そういうことになるわ」
「えっと、その場所はどこですか?」
「この国の首都、イシュトーラまで」
「イシュトーラですか」
俺のいる国であるアルレインの首都イシュトーラ。
首都だけあってこの国一番の都市だ。
確か、ここブルグからは50kmほど離れたところだ。
ちなみに俺はまだ1度も行ったことがない。
前々から行ってみたいと思っていたのでこれはチャンスだ。
「最後に護衛を頼む理由を教えてもらえますか?」
これはこの仕事を引き受ける上で最も重要なことだ。
もしかしたら、誰かに狙われてる可能性だってあるからな。
「私、追われてる身なの・・・」
見事に的中してしまった。
敵がいるとなると護衛の仕事はかなり厄介になる。
1人で守りきるのは難しいことだからだ。
だけど、この仕事を手放すわけにはいかない。
飢え死には嫌だからな。
「追われてるというのは?」
「私は首都からここまで連れ去られたの」
「・・・・・。はい?」
「誘拐されたの」
誘拐ときたか。信じるべきか?
「それで逃げ出してきたのですか?」
「えぇ。ついさっき、なんとか逃れたの。多分、今頃は私が逃げたことに気付いたと思う」
「つまり、敵さんはあなたを探している頃だと」
「そう。あの、もしかして信じてない?」
「え、あ、いや、信じてますよ」
これじゃ信じてないって言ってるようなものだな・・・。
「やっぱり疑ってるみたいね。本当は言いたくなかったけど話すことにするわ」
「え?何をですか?」
「私の名前はナターシャ・アルレイン。この国の王女よ」
「・・・・・・・・」
王女?どうりでどっかで名前を聞いたことがあった気がしたのか。
なるほど。王女なら誘拐っていうこともありえるな。
「どうしたの?急に黙っちゃって」
「え、あ、何というか王女様だったなんて余りにも驚きで」
待てよ・・・。相手は王女様なんだよな?
だったら俺はもっと頭を下げるべきなのか?
いや、でも急にそんなことしたら退かれるに決まってる。
よし、今のままでいこう。
「それで、引き受けてくれるの?」
「はい。あなたを必ず首都イシュトーラまで送り届けましょう」
「ありがとう、助かるわ」
「いえ、これも仕事のうちですから」
俺はそう答えながら早く出発の用意をしなきゃなと思った。
それと同時に依頼達成の報酬の事を考えていた。
初めての作品はファンタジーなりました。
未熟者ですが、これからよろしくお願いします♪