第一話 「夢」
今回、はじめての投稿になります。
多々至らぬ点等あると思いますが、
指摘・アドバイス等歓迎しておりますので、
生暖かい目で最後まで、お付き合いくださると幸いです。
ここは深い……深い、暗闇の中。
壊れた瓦礫が散らかる廃墟で、怯えた男の声が響き渡る。
「や、やめろッ……!!」
慌てて逃げるよう動き出した足は躓き、運悪くも膝をついてしまう。男は反撃に転じる様子はない――――どころか、怯え切った体は、すぐに起き上がることも間々ならない。
その姿に同情することなく、ナニモノかは歩を進め、着実に距離を縮めてゆく。
深夜だ。そうでなくともこのような明るみのない場所に、近づこうと思う一般市民は少ない。助けは、こないだろう。
「ひ、ひィ―――ッ! か、体が……ッ!!」
立ち上がろうとも、力も入らず動けずにいる男。
対し、ナニモノかはこの状況を愉しんでいるのか。
コツ、コツ、と。
男を煽るように、この密室で足音を轟かせる。
「お、おもいだした……! お前―――、ッ」
言葉の通り、思い出したように紡がれる男の声。
心当たりのある姿だったのか、それとも。
……男の声がそれ以上、発されることはない。
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―――――
(ジリリリリリリリ…)
目覚まし時計の音が響く。
「…ん」
(ジリリリリリリリリリリリ…)
響く。
「………」
(ジリリリリリリリリリリリリリリリリッ)
(――――ガタッ)
殴るように乱暴に止められた音。
ほどなくして、ベッドからむくりと起き上がる男が一人。
「…はぁ」
またあの〝夢〟を見ることになるなんて……これで何度目だ?
必ず同じ場所で、
必ず同じ人間に、
必ず同じ人間が、
必ず同じ時間に、
と……
考えてもムダか。
支度をしよう。
僕は、東條凛。いたって普通の男子高校生。今年で二年目だ。
当然だが、夢の内容に心当たりはないし、ましてその人物にも見覚えはない。
どこかの知らない人間が殺されたところで、なんだというのだ。
言っておくが、僕はいちいちそれに涙を流すほど、善良な人間でもないし、繊細な人間でもないぞ。
「……まったく」
とにかく、まぁ……所詮、夢は夢だ。
大の男がこんなことで、他人に相談などできるものか。
ああ、そういえば今、時間は……
「ん……9、時……?」
授業が始まるのは9時15分。
いや、走ってここから約10分。ぎりぎり、間に合うか?
「―――行ってきます。」
これまた乱暴に、家のドアを開いては、全速力。
朝から悲惨なこと続き、なんて一日だ。
間に合えば、いいが。
それにしても
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
――――自分が出てこない夢なんて、珍しい。