レポート4ー武器はロマンで選ぶでしょ!ー
ゲームを始めてから数十分たち、ユウとユミはチュートリアルをテンポよく進めていく。
「簡単なものばっかだな。走るとか歩くとか」
「現実と同じだけどアシストとか入るとこうなるぞっていうのを体感しとく必要があるんだよ……多分」
簡単な動作のチュートリアルばかりだった。
「次で最後だぜ。最初にもらえる武器選びも含めて重要なことだ」
「武器ね、まあ何事もチャレンジだな」
「その通りだ。大将!」
そしてチュートリアルNPCに話しかける。
『私が教えられる最後のことです。この世界では危険な動物も数多く存在します。戦うすべを身につけてきなさい』
「戦うすべをか……訓練所でもあるのかな?」
『ここから南に行ったところにある草原でチュートリアルラビットを狩ってきてください。武器をお貸ししましょう』
「この場合どうやって、ってうおっ!? ……こういうところはゲームなんだな」
ユミの手元にパネルが現れた。そこには様々な武器の名前が書かれている。
《剣・斧・槍・拳・杖・弓・ハンマー》の7つだ。
ユミは槍の項目をタッチする。
「そんじゃ、槍にしようかな」
『それではこちらをお受取りください。クリアした暁にはそのまま差し上げます』
そうしてアイテムが渡された。
小さな《アイテム入手》のパネルが目の前に浮かんでタッチするをアイテムインベントリが開く。
そこにはスピアという槍が入っていた。
タッチして装備を選ぶと手元に槍が現れた。
「まさに槍って感じだな。よくゲームとかで見る」
そして槍を右手にもって草原を目指して移動する。
***
草原にたどり着くと先にきていたユウがチュートリアルラビットを狩っていた。
ユミに気づくと近づいてくる。
「おう、大将きたか。ほほう、槍を選んだか」
「そっちは剣か。使いやすいか?」
「まあそれなりにな。槍は結構使いにくいってことで有名だったぜ。とはいえ人気がなかったわけじゃないが」
「まあちょっと使ってみる」
ユミは昔、棒などでちゃんばらした時などを思い出して槍を構えてみる。
「すっげえ、不格好だぞ大将。それで攻撃できんのか?」
「……突くのはできそうだが、薙ぎ払ったりは無理そうだ」
「まあ、ゲームのシステム補助も一応あるし、慣れだろそれは……ていうか槍で薙ぐアシストはなかったからかなり難易度高いぞ。そっち方面は」
「まじか……だが俺はランサー兄貴を目指したいんだよ! 必中の槍かっこいいし」
ユウは右手で剣を持っている。
「まあ何事もチャレンジだぜ! 狩るぞ、大将!」
「あいよ。いくぜ!」
ユウはチュートリアルラビットの1匹に目をつけると飛びかかるように剣を振り下ろす。
そして体当たりされそうになれば一歩引いて堅実に戦っている。
対するユミは、
「はっ! ってそっちからもか!?」
ぎこちない動きでチュートリアルラビットを突くが、その度に横から別のラビットに攻撃される。
どうにか体全体で振り返ってそっちに対処すると先ほどまで狙ってたラビットに攻撃を受けていた。
「こんな序盤で使うことになるとは、ていううか痛くはないんだけど反射的に痛く感じる」
ユミは空中でメニューをだしてアイテムインベントリを開き、初心者用ポーションを取り出して体にかける。
このポーションはチュートリアルの報酬で手に入れていた。
そんな様子のユミにユウが近づいてくる。
「大将、オレは終わったから先戻ってるな。終わったらフレチャ送ってくれ」
「早いな、わかったけどこっちはもう少しかかると思う」
「まあ、慣れるまで時間がかかるものさ。なんかβテストの時の知り合いがいるらしいからちょっと話したりしてくるわ」
「あいよ」
そういってユウは町に戻っていく。
ユウと別れてから十数分たった。ユミはクリアまであと3匹までさしかかり、目標だった槍を振った攻撃も少しだけできるようになった。
「あと3匹……そこっ!」
『キュゥゥ』
チュートリアルラビットが倒れてポリゴンを出しながら消えた。
本来だと剥ぎ取りが可能な状態になればフィールドに一定時間残る場合もあるがチュートリアルのためそうはならないようになっている。
「残り2匹……って同時か」
ユミは1匹を狙って攻撃したつもりだが斜め後ろからもう1匹が近づいてくる。
「それならっ!」
ユミは両手持ちの槍で目の前に一匹を突き、そのまま振り払うように片手に持ち替えて斜め後ろのラビットに攻撃を加える。
突かれたチュートリアルラビットはHPゲージがなくなりポリゴンを散らしながら消えた。
斜め後ろのラビットは体制を建て直してもう一度攻撃をしてくる。
「両手持ちにする時間があるならお前ならもう勝てる!」
体を振り払うときに反転させ、怯んでいる間に両手で持ち直し正面から突き抜いた。
HPがなくなりポリゴンを散らして消える。そして《クエスト条件完了》のパネルが斜め前の空中に現れた。
「ふぅ……もどるかな」
ユミは槍を背負ってユウに終わったことをチャットで伝えると町に戻っていく。
『クエストクリアおめでとうございます。これにてチュートリアルクエスト終了となります』
チュートリアルNPCに話しかけてクエストクリアとなった。
そしてクリアすると同時に報酬として初期防具を手に入れる。
早速装備すると簡素な金属防具だった。
NPCと話し終えてユミがメニューを確認するとユウから返事がきている。
『おう、こっちも終わった。そんじゃ噴水前で集合な』
ユミはそれを見るとすぐにキーボードパネルを使って返す。
『チュートリアルNPCのところにいるから噴水の眼の前にいる』
返信をしてすぐに二人は合流することができた。
「おつかれ、大将。そういえばスキルはどうだ?」
「スキル?」
「ああ、多分最初に使った武器のスキルが手に入れられてるはずだからな」
それを聞いてユミがメニューを確認するとスキルという欄がありタッチすると《槍》というスキルが1レベルになっている。
「技とは違うのか?」
「スキルは使っていくと自動でレベルが上ってく、新しいスキルを覚えるときはSPを使う。そんでスキルの中にある技が《アーツ》ってよばれてる」
「そうやって分けられてるのか。じゃあ槍つかってれば槍のレベルは上がるんだな」
「そういうことだ。つうことでこの後はどうする?」
ユミは少し考えた後に周りを見るとこう言う。
「人が多いからいけるなら次の町行こうぜ」
「まあ正式稼働当日だしそうだよな。次の町が実質の始まりの町だ」
「よっしゃ、じゃあ行こうぜ!」
「おう、大将!」
そういって二人ははじめの町を目指して町を後にした。
「あれ?」
「どうかした? ランちゃん」
「うぅん……お兄ちゃんっぽい人がいたけど。あそこまで女っぽくないし気のせいかな」
「ふーん」