レポート2ーキャラエディット、どうしてこうなったー
真弓が夕二にゲームを渡されてから数日が立った。
この日は正式稼働の開始する日だが真弓からは迷惑極まりない朝3時に夕二は電話をかけている。
『正式稼働は10時からでキャラ作り自体は9時から大丈夫らしいからな、それで始まってからなんだが集合は――』
「てめえ、何時だと思ってんだ、あぁ!?」
カーテンの外から日の光が差し込みもしない時間に真弓の声が家に響いた。
案の定、向かい側の部屋の妹から文句を言われる。
「お兄ちゃんうるさい!」
「ごめん……ってまた徹夜ゲーかよ!?」
***
「一応HMDのゲームはやったことあるけど、こっちは実際にゲームするのは初めてだから緊張するな」
真弓は部屋でベットに寝転がりVRSの起動をした。
『ハーイ、VRSの世界へようこそ! 今回はどのゲームをプレイしますカ?』
真弓の視界に広がったのはリアルだがよくみればポリゴンが数多く存在する電子世界である。
耳に聞こえるのは妙にハイテンションな10代くらいの声。
「えっと、ファンタジー・オンライン・ワールドだったかな」
『《ファンタジー・オンライン・ワールド》ですネ! それではダウンロードされたデータをVRSにインストールするので少々おまちくだサイ』
真弓は若干そのテンションに戸惑いつつも目の前にでたパネルのダウンロード進行状況を見ながら待った。
『インストール完了です! それではキャラエディットへ レッツゴー!』
「すぐにか!?」
どんなことが起こるかわからないが反射で身構えた真弓。
そして真弓がいた空間は光りに包まれる。
『それでは、キャラエディットをしていきまショウ。1から作りますか? それともあなたの体をスキャンして作成しまスカ?』
「スキャンのほうで」
真弓は説明書を読んでそれなりにエディットについてはしっており、最初からスキャンで作ることを決めていた。
『スキャン完了しましタ! 髪の色などの微調整は可能でスがどうしますか?』
何もなかった空間に鏡が現れて、真弓のキャラが映し出される。
現実での真弓の姿よりウエストが細くなり少し胸が膨らんでいた。
「なんか女性型のキャラになってるような……」
『本人のカラダをスキャンしてスタイルから判断しましタ』
真弓の中で男と認識できることはもともと声の低さぐらいだったがより一層体が女方面にスキャンされたらしい。
「一応聞いておきたいんだが、アバターとかは女性用男性用とかあるのか?」
『ありますガ、異性のアバターも使用可能でス』
真弓は少し考えてから答える。
「なら、このままでいいや……あ、やっぱり髪すこしこげ茶にする」
『了解デス、では最後に名前を入力してくだサイ』
手元に現れたキーボードパネルを操作して名前を入力した――
ユミ
真弓が昔から使っているネット内用の名前だ。
夕二からは「今回のゲームでその名前だとリアルと同じになるぞ」と先日、言われていたことは忘れている。
『ユミさんですネ、それではゲーム稼働まで残り20分ありますノデ。少々お待ちくださイ』
「キャラ作成に40分も使ってたのか……インストール時間とかか?」
真弓は時間を見ながらキャラエディットを終了してゲームスタート時間を待った。