拡散性中二偽装症候群
美女の登場です
「貴様、組織の者だな!」
「ちっ、俺の左目が疼きやがるぜ!」
「ふふふ…この魔道書の封印さえ解ければ…」
「し、沈まれ、俺の中の邪龍よ!」
「俺の感覚が告げている、闇は深い…」
「あれは人が触れていいものではないんだ、なぜ皆分からないんだ!」
「私には分かるわ、星辰が告げている、終わりの始まりが来ているのね」
「我の目に映る凶星、せめてこの身にかけでも…」
どうするよ、この有様。
あの場は中二的言動で誤魔化した俺だったが、生徒会側から正式に俺の生徒会入りが発表され、その混乱が収まると「中二なのか、時代は中二病なのか!」との声が高まり、生暖かい目で俺を見ていたはずのクラスメイトは眼帯をしたり、指ぬきグローブをしたり、十字架のネックレスを改造して逆十字にしたり、腕に包帯を巻いたり、日記帳を改造した自作の魔道書を抱えたり、不気味な自作人形と会話したりと見事なまでの中二病博覧会状態になってしまった。
俺が悪いのか?
そりゃ、中二病以外全く特徴の無い俺だから、俺がスクールカースト上位の生徒会に声をかけられた理由として「中二病」がクローズアップされるのはまあ分かる。
だからといって、それを自分でやろうと思うか、普通?
切実な理由があって、やっている俺ですら度々耐え難い思いをしているんだぞ?
なんか、俺がやってるのより生き生きしてるのも腹立たしい。
「あー、俺の偽装なんて大したこと無かったのね」って感じ。
魔道書作ったやつなんか、羽ペンわざわざカラスの羽を探して拾って、それで作って書き上げたんだぜ?
人形なんて綺麗な状態で作り上げてから瞼と唇をわざわざ荒い糸で縫い付けてるんだぜ?
逆に「お前ら本当は隠してたのをカミングアウトしただけじゃねーの?」って聞きたくなる。
「なかなか愉快なことになってるみたいね?」
って、会長も面白半分に煽らないでくださいよ!
「いいじゃない、こんなの学生の特権みたいなものよ、社会に出てからじゃ出来ないじゃない」
ネット上だと居るみたいですけど、大人でも……。
「ごくごく稀に本物も居るから厄介なのよねえ、そっちの監視は。うちじゃ、異能の弱い子のバイトになってるけど」
居るんですか…やっぱ、警察が犯行予告チェックするのと同じ感じにやってるんですか?
「警察ほどオープンに運営サイドに協力求めることが出来ないのよねぇ、公式にはうちらみたいな組織は無いことになってるし」
あー「この書き込み、呪詛になっちゃってるんで削除してください」とか言えないですよねぇ。
「どことは言わないけど、人口の多さだけが取り柄の国なんて人海戦術でコピペでやってるしねぇ」
なんか、コード被りがあるから、あの国のパソコンだと文字化けしませんでしたっけ?
「まあ、国ごとや一定地域から極端に回数多いトコを遮断しちゃうのも手だけどね」
遮断、出来るんですか?
「中枢に近ければ近いほど、うちみたいなとこの影響力は強いからね」
ん……気付けばクラスの視線がこっちに?
「じゃあね」って、この状態で置き去りですか?
マジで?
◆
◆
「産休の高野先生に代わって英語を受け持ってくださるクリスティ・バーンズ先生です」
「Hello,Boys'n'Girls! みなさんこんにちは、短い間ですが、英語を担当させていただくChristie・Barnsです。見た目はこんなですけど、日本語はほぼNativeなので構えないで気楽に話しかけてくださいね!」
教卓に冴えない担任(鼻の下が伸びてる)と並んで立つ金髪美人。
男子学生の妄想の権化とも言うべき存在が具現化している。
清楚な教職らしいタイトな服装だが、その見事なまでな凹凸の破壊力をかえって高めてしまっている。
外人らしいイントネーションや発音の不自然さは全く無く、それが故にテレビのドッキリかなんかじゃないかと辺りをキョロキョロと見まわしてカメラを探している者さえ居る。
「このclassはとってもuniqueな生徒が多いのですね」
嬉しそうに言われてキョドっている中二偽装症候群患者たち。
喜ばれちゃうと素に戻っちゃうよな?
しかし、産休って高野先生ってそんな様子全く無かったよな?
なんかおかしくね?
みんな素直に喜んでるけどさ。
俺が考え過ぎなのか?
「君が麻生くんね……ふ~ん」
俺の傍にわざわざ寄って来ての一言。
ザワついてるクラスの連中には聞こえてないだろうが、「また、あいつか、やっぱ中二なのか!」という視線はビンビン感じる。
今日は生徒会室に避難した方がいいかもしれんね?
◆
◆
「えっと、なんで先生がココに?」
鈍感系ですらドン引きする空気の生徒会室。
牧村は鯉口を切ってるし、坂崎はセーフティ外してるし、副会長はいつも以上に存在感無いし、会長の笑顔はすっげえ怖いし……。
「6=5とか普通。奥で踏ん反り返ってる存在でしょ、なんてもん、普通の高校に送ってくるのよ、アメリカは!」
「友好国としての協力です、Miss」
つまりは、どういうことだってばよ!?
「この先生も裏側の人間ってことです、しかも一人で戦争出来るレベルの」
「半分、休暇みたいなものですよ、お気になさらず」
「ペンタゴンの奥ノ院ペンタグラムがそんなホワイトな職場だとは知りませんでしたわ」
ペンタグラムって五芒形でしたっけ?
「あんだけ、世界中から恨み買ってる国に裏が無いわけないでしょ? 国家の為なら大統領すら排除するアメリカの裏よ!」
うわぁ、現実ってけっこう中二……。
「中二病を微笑ましいものとして見られる様になるわよ、現実知ると」
そっすか、それでウチのクラスで楽しそうだったわけですね。
「はぁ、どうせ、上の上で話はついてるんでしょ? ようこそ、クリスティ先生、生徒会顧問って形になるのかしら?」
「よろしく、家は近くのマンションだから遊びに来て頂戴」
「うわ、金のあるトコは違うわね、あのマンションのこの学校が見えるフロア全部買占め?」
「いえいえ、一部は買えませんでした、坂崎さんが既に」
「校舎内に射線の通る部屋は取り敢えず買っといた。卒業したら売っぱらうけど……」
なんか世界が違う。
どうしてこうなった?
先生の位階はフレーバー(適当)です
なんかわからんが凄い! って感じで




