この現実はフィクションです
意外とまったりな展開
「はい」と会長が貼ったお札らしきもの。
ひび割れた腕の表面が元に戻っていく。
うわっ、臭ぇ!
なに、これ?
「え? 湿布剤に真言書き込んでお札化したものだけど?」
え? それで通用しちゃうの?
「耐久度考えなきゃトイレットペーパーでも行けるわよ?」
俺がぶち壊した生徒会室のドアも、切られた俺の制服の袖もお札一枚で回復。
いいな、それ、一枚くれない?
「完全修復は売値だと500万円ね。まあ、大体まとめ買いにしか対応してないから単価とか意味ないんだけどね」
売ってるんだ。
「私も買ってる。たまに重機関銃とか撃った後始末に便利」と坂崎。
拳銃レベルに留まらないのね?
アンチマテリアルライフルとかも個人所有してそうだな?
「当然! ネタ武器のジャイロジェット・ピストルすら持っている私に死角は無い」
……そっすか。
あれ、反動無いんだから大口径にすりゃいんじゃね、って思うのは素人考えなのかな?
「作りそうな知り合いは居るねぇ。っていうか、試作品倉庫に転がってそう」と副会長……居たんだ?
あの後、確保された俺は生徒会室の応接セットに座って、お茶(玄米茶だった)をいただいている。
お茶請けは葛桜。
和菓子はいいよね、コンビニでしか最近買ってないけど。
「単なる現状確認と状況確保のための生徒会入り打診だったんだけどね、ちょっと調子に乗っちゃったかな? かな?」
テヘペロとか、評判に反して随分俗っぽいじゃねーか、生徒会長さんよ!
「いやあ、照れますねぇ」
褒めてねえよ!
「うーん、あっち……ってどこの異世界かは知らないけど、あっちの人の技術が凄いんで、『アホ』が手を出して来なけりゃ安定してるから、大丈夫だとは思うんだけどねぇ。流石に8分の1とはいえ、『魔王』ともなるとね、完全放置って訳にはいかないのよ、まがりなりも裏の関係者としては」
あー、やっぱあるんすか、「裏」って?
「うん(にっこり)、聞きたい? 聞きたい?」
うわあ、すっげえ嬉しそう。
「ウチの家系はこの地方の裏を統べる家系でね、この辺は実は宮内庁の管轄なのだ! 古墳(ということになっている遺跡)なんかと一緒だね! うちの国は伝承とかも割ときちんと残ってるし、守護やら鎮守やらの家系も残ってってその辺の管理がしっかり出来てるからいいけど、近くの国なんかはその辺無茶苦茶になってるから、謎の伝染病(ということになっている呪い)なんかで村とか地図から消えたりとかも良くあるしね」
道士とか居そうなんですけどね?
「偽者が多過ぎるからねぇ。表がその辺まともに把握出来てないし、本物は今は台湾かカナダかオーストラリアに逃げちゃってるんじゃない? 西洋系はキリスト教ベースが多いからそういった活動は出来てないと思うけど」
ああ、もはやDNAレベルにしみ込んだ偽者無双ですね、分かります。
本物の功績を権力者と手を組んだ偽者が取り上げるとかもやってそうですしね。
「あっちの人っていい意味でも悪い意味でもポジティブだからねぇ。根拠の無い自信は世界一じゃない? 人が出来る事は自分も出来て当然だと思ってるから、偽者も自分が偽者って意識がまったく無いし」
うわあ、あっちに生まれなくて良かった。
「ま、その辺は置いといて、どう、生徒会入らない? 別に権力とかは無いけど、校内でお酒以外は飲食自由な唯一の場所である生徒会室使えるわよ?」
それが勧誘の言葉ですか?
「いや、だって、別にねえ。既に生徒会としてやるべきことはやっちゃったし、イベント時は多少は忙しいとはいえ、生徒会って基本暇だし。監視はこっちの都合だし、そっちのメリットってそれくらいじゃない?」
やるべきことはやったって何したんです?
「マラソン大会の廃止! 優秀な短距離走者である私は長距離は向いていないのだよ!」
え?
もしかして、そのため「だけ」に生徒会長に立候補したの?
「当然! 誰もやってくれなきゃ、自分でやるしかないじゃない?」
なんか、噂とは裏腹にそこはかとなく「残念」臭が、が、が!
◆
◆
結局、生徒会執行委員になった。
年度によって居たり居なかったりするお助けキャラみたいな役職だ。
生徒会長は「会計監査心得補佐見習代理」という役職を与えたがっていたがな。
いや、あの人残念過ぎるだろ。
うん、完璧な人間なんてこの世には居ないってこったな。
牧村もクールじゃなくて微コミュ障だったし。
剣構えて対峙してればそれなりに喋るんだが、剣を納めると途端に単語レベルまで口数が減少する。
坂崎はガンマニア通り越してガンフェチといっていいし。
米軍基地顔パスで基地トップ認定で武器の横流し受けてるとか、国防総省の方にも手を打ってあるとか、金の使い方が激しく間違ってるし。
副会長?
全てにそつの無い人みたいだけど、存在感無さ過ぎて居る事を忘れられる人だしな。
出席でも教師が気付けないから、今じゃ返事無くても「居ること」として処理してるらしいし(テストの回答などから真面目に授業を受けているということは教師にも分かることからくる措置だとか)。
「入会サービスね♪」と普通、生徒会入りには使わない言葉でお札をくれたが、腕に貼った湿布剤のものと同じものはともかく、「修復」のお札は非常に有難い。
湿布のお札もこれ貼ってるせいか、会長が近付いて来てもうずかないんだけど、やっぱ修復のお札がね、有難いわけですよ、「裏」があると知っちゃったら余計に。
このお札って破壊されたりとかにしか使えないのかね?
散乱とか汚れに使えりゃ汚部屋の掃除とかに使えんじゃね?
あ、単価が高過ぎるか。
せめて100分の1の価格になりゃ、欲しがる業者とか増えそうだよな?
生徒会役員専用のスマートフォンまで支給された。
電波が届かない所でも使用出来る「裏」仕様のもの。
「なんで、電波が届かないのに通話出来るんだ?」とは思ったが説明されても分からねえだろうし、使えんならいいんじゃね?
なんか、平穏な生活からえらい勢いで遠ざかってね、俺?
かといって人生からログアウトしないために厨二病まで偽装してんのに、ここで生徒会と派手にやり合ってもねえ?
「目の届く範囲に置いている」ってことで「他」を抑えてくれてるみたいだし、変な実験とかしようとしてる訳でも無さそうだし、今以上に日常が過ごし辛くはなりそうだが、破壊されるレベルにまではいかなそうだしな。
「裏」の事情なんか全く知らない俺にしてみりゃ受身にならざるを得ないし、マシなんじゃねーかな、と思うんだがどうだろ?
さーて、どうやって説明したもんやら、と教室に戻った俺は、興味津々なクラスメイトを前に現実逃避した。
銃はともかく、装備品なんかは意外とあるんですよね、横流し品
ソ連崩壊直後なんか、表の市場に流れちゃいけないレベルのものまで流れてましたし
(; ・`д・´)<元素記号 UとかPuとか!