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召喚ニート

更新は不定期になります

 「し、静まれ・・・俺の左腕よ!」


 プルプルと震える左手を必死の形相で抑え付ける少年。

 自分で巻き付けたのであろう不恰好な包帯が動きにゆるみ、外れそうになるのを必死で防いでいる。

 周囲のクラスメイトの目は実に生暖かい。


 彼らの内心のセリフは「・・・またかよ」一択。


 当事者であるにも関わらず第三者視点で始めさせてもらったが、そんなテンプレ的厨二病患者少年、それが麻生左門、俺の世間からの評価である・・・。



 別段、魔王の生まれ変わりとか特殊な血を引く一族とか全然そんなことは無い。

 代々何かを守護したり封印したりする役目があったりするなんてことも無い。

 どこにでも居る、ラノベやエロゲの修辞的な自称「平凡」では無い真の平凡な一般庶民。

 まあ当たり前の話だな? 現実にあんな「普通」が居てたまるかってんだ!

 断言しよう、結婚を意識する年齢でも無い限り、女性から見て「普通」がプラス評価に繋がることは無い!

 女性にモテる時点でどこかしら、なにかしらが「普通」じゃないのだ!

 ・・・すまん、つい熱くなった。

 受け手の自己投影の為の技法に過ぎないとは分かってるんだが、自分という「普通」の実例と比較するとな、どうにも憤りを感じざるのを得ないのだ。


 成績はおそらく結婚式でしか「優秀な成績」と言ってもらえない成績。

 凄い成績を取る奴らは元々の頭の出来が違うか、勉強を「面白い」と思える感性の持ち主だけ、というのがこれまでの人生で周囲を観察した俺の出した結論だ。

 本当の頂点になると両者を兼ね備えている場合がほとんどだな。

 普通の人間が嫌々やってたら一定のレベルより上には行けない。

 まあ、かといって出来の悪さに教師に目を付けられ、その記憶に留まるほどは悪くは無い。

 成績の両極は教師の記憶に残りやすいもんだろ?

 スペック面も含め俺は完全に埋没型「だった」。

 クラスメイトが卒業後何年かして卒業アルバムを見た際には「こんな奴居たっけ? 誰だこいつ?」と言われるくらい外見には見事に特徴は無い。

 顔は長からず丸からず、エラや頬骨が目立つことも無く、眉毛や唇や鼻が特徴的だったりもしない。

 印象的な顔パーツが全く存在しないことから犯罪をするには向いているかもしれない。

 体型も中肉中背としか言いようが無いしな。

 犯行を複数の人間に目撃されても俺が特定されることは無いだろう。

 まあ、犯罪なんてハイリスクな行為をするなんて、そんな気は全く無いがな?


 血液型は日本人に一番多いA型。

 星座は地味な山羊座。

 聖斗士☆矢には救われた。

 蟹座や魚座の人間には悪いが、山羊座や乙女座や牡羊座の人間にとってはあの作品は救いだ。


 内面で言えば妄想と願望と欲求不満と現実の境界線があやふやになっている訳でもない。

 というかそういう連中を馬鹿にしていたのが元々の俺のスタンスだ。

 馬鹿にされる側になって思うようになったが、そうして積極的になにをする訳でも無く、傍観しつつ馬鹿にするってのもカッコ悪いな、実は。

 どんだけ他者を馬鹿にしようが、自分は全く向上してないんだからな。

 まあ、その辺は半分、自省だ。

 かつては「平凡」だった。

 過去形でしか語れない状況になっているというのを認めることが出来る位には自分を客観視も出来る。

 元々の俺の思考、性格、趣味、境遇、友人、家族、どれを取っても現在の俺のがやらかしている行動の原因は全く存在しない・・・これは今でもそうだ。


 では、何故、こんな恥をさらす行為をしてるのか?


 それは、先週末で終わった夏休みに俺が体験した出来事が関わっている。


 ・・・・・・俺は異世界に召喚されていたのだ。


 そこっ!

 笑って指を指すなっ!

 だから、俺は厨二病じゃないんだよっ!!

 棒読みで「なんだってー!」とか要らないからっ!!



 ◆

 ◆



 ことの起こりは七月末の前日のうだる暑さから少し気温が下がって息をつける様になった金曜日の夜・・・のハズだ。

 というのも金曜の夜にしっかりと自分の部屋で寝たのは覚えているのだが、目が覚めた時にはテンプレ的セリフを言う事を忘れて後で悔しい思いをしたのだが、見慣れない部屋の中だったのだ。

 つまりは金曜の夜に起こったのか、土曜の早朝に起こったのかは爆睡中だった俺には分からないってことだ。

 服装と言えば下は穿き古して勢い良く動くと破れてしまう危険性をはらんだトランクスに、上は実は一曲も聴いた事が無いのに文字のロゴデザインの格好良さだけで選んだアメリカのロックバンドのTシャツのみ。

 寝ている間に勝手に着替えさせられていたり、自動で世界に合わせたものになっていたりはしなかった。

 スマホも腕時計も睡眠中だったから当然無い。

 メガネは元々かけてない。

 かけてたら、ここまで特徴の無い俺だからあだ名は「メガネくん」になっていただろう。

 まあ、腕時計に関しては後々俺の身に起こったことを考えると着けてなくてラッキーだったのかもしれん。

 特にこだわりもなければ奇をてらったりもしてない俺は腕時計を「左手」に着けてたからな。

 足は当然裸足。

 冬場は寝る時に靴下を履くという人も居るみたいだが、俺は冬でも裸足だ。

 靴どころかサンダルやスリッパも当然無い。


 全裸やパンツ一丁よりはややマシ、というのが召喚された時の俺の格好だった。


 石造りの室内は一面にドアがあり、その反対側には薄い布なのか紙なのかが張られていて光がそこから差し込んでいた。

 俺の格好でも寒くないことから冬だったり、気温の低い場所だったりはしないようだ。

 寝苦しいとまでは行かないものの寝汗をかいたりする情況が続いていたその時の俺にとっては、実に快適な睡眠をもたらしてくれる温度だった。


 室内には俺以外誰も居なかった。


 朝一のトイレと洗顔をどうしようとぼーっとした頭のまま考えていたところ部屋のドアがノックされた。

 漫画やアニメなんかだとここは美少女の登場シーンだが、入って来たのはおばちゃんだった。

 若い頃を知る者に取っては劇的ビフォーアフターという変化を遂げるロシア女性のアフターバージョンみたいな感じだ。

 良くドアを普通に通れたなと感心してしまう体型のおばちゃんはメイド服を着ていた。


 俺は置かれた状況も忘れてげんなりした。

 視覚情報としてはこのおばちゃんがメイドなのだと伝えては来ていたのだが、脳がそれを認識することを拒んでいた。

 アニメやラノベといった娯楽にも接する非リア充の若者である俺にとっては、こう、メイドというのはもっと夢とか、萌えとかあって欲しいものだったからだ。

 起きたら見知らぬ場所だったということよりも、このおばちゃんメイドの方に受けたショックの方が大きかったと言えば俺の受けた衝撃をわかってもらえるだろうか?


 現実ってヤツはいつだって俺たちに厳しい。


 いや、違うぞ?

 なんかカッコいい台詞を言ってやろうとか思った結果じゃないからな?

 ただ事実を述べただけだ。


 だから、そんな目で俺を見るなー!


 ふうふうふう・・・少し落ち着いた。

 まあ、そんなメイドさんにトイレと洗面所に案内された。

 洗面所もトイレも魔法を使った俺にとっては初体験の代物だったのだが、トイレはこっちの水洗トイレ、洗面台は駅とかであるセンサー付きのやつみたいな感じでごく普通に使えてしまったために特にそうした意識を持つことは無かった。

 コップも歯ブラシも無かったんで、口に水を含んで指でゴシゴシした。

 口に水を入れた途端のどの渇きを思い出したように感じたが、飲んで平気なのか分からないんで吐き出した。

 スッキリした俺が、あまりにあまりな格好なんでなんか着る物を要求したらトーガだっけか? そんな感じのものを渡され、何をどうしたらいいのかオタついてたら子どもの服を着せる様な微笑ましい表情で着させてもらって、テンプレ的な王の間に案内された。

 俺は「これはもしかして召喚勇者ってヤツなのか?」とちょっとワクワクしてた。

 じゃなきゃ、俺みたいな一般人が、写真でしか見たことの無い様な豪華な「ザ・宮殿」って感じの廊下を通って、「これ持って帰ったら十年くらいは遊んでくらせるんじゃね?」ってくらい豪華な扉を抜けて、ズラズラとならんだお貴族様を横目に王様の前まで歩いてくなんてことは出来なかっただろう。

 王様の前に居たのは俺だけじゃなかった。

 俺の前に四人居て、後から三人やってきて、計八人。

 全員が日本人で、全員が異世界人だった。

 

 「召喚された世界から見りゃ全員異世界人だろう」って?

 いや、違う。

 俺から見ても、全員「異世界人」だったってことだ。

 つまり俺の居る日本とは別の「日本」から召喚された連中だった。

 

 俺の前に居たのはヤンキー、地味女、武士、キモオタ。

 後から来たのは鬼とガキんちょとバブル女。


 ヤンキーはヤンキー漫画からそのまま出て来たような「ビキビキ」って感じのメンチをくれまくりの気合入ったあんちゃんだった。

 王様の前なのにウンコ座りしてた。

 通訳必要なレベルでヤンキー語を喋ってたが、暴走族の抗争とか、番長中心の学校同士の争いとか「警察なにやってんだよ!」ってレベルで荒れた少年漫画的日本世界から来たらしい。


 地味女は女版の俺って感じ。

 向こうも俺のことを「地味男」だと思ってただろう。

 俺と同じ様な日本かと思ったら、「超能力」が当たり前の世界で「分子浸透」という超能力を持ってるんだとか、地味なフリしてそれかよ。隠れヒロインとかじゃね?

 髪形変える程度で何故か物凄く可愛くなるって感じの。


 武士はモノホンの武士。

 丁髷結って大小差して和服着たおっさん。

 なんでも明治維新が無かった世界の日本から来たそうで、今は徳川二十二代目将軍だとか。

 丁髷に刀の武士スタイルのまま国際社会に対応してるらしい。

 どこからどう見ても江戸時代の武士が、平然とハイテク機器(こっちの世界より進んでた、液晶が巻物状に丸められる)を扱うのはかなり違和感を感じた。


 キモオタは大昔のエロゲに出てくる盗撮野郎にそっくりだった。

 「グフフ・・・」となんか妄想してるようでキモかった。

 コンピュータ関連だけこっちの日本に比べて異様に発達した日本から来たらしく、VRMMOが実用化されていて、18禁まであるのだが、認証が非常に厳しくて未成年であるキモオタにはプレイ出来ないことで、そちらの世界の日本政府に対して強い敵愾心を持っていた。


 鬼は服装こそ日本のサラリーマン的なスーツだったが頭にしっかりと角が生えてた。

 他の連中は武士とかは居たにせよどう見ても「日本人」、周囲に居たのは西洋人チックな異世界人だったんで物凄く浮いてた。

 妖怪が普通に人間と混じっている日本から来たという話で、車のセールスマンをしているそうだ。


 ガキんちょはどう見ても塾帰りの小学生。

 眼鏡とかかけて半ズボンにジャケットだったんで「頭脳は大人」な子どもモドキに似てた。

 流石に蝶ネクタイはしてなかったがな?

 見た目は子どもだが、実は俺より年上だった。

 なんでも平均寿命が600歳な世界の日本から来たんだとか。

 その世界では子どもなんで、周囲が子ども扱いしても腹を立てなかったが、敬語を使うべきか俺は悩んだ。


 バブル女はボディコンって言うんだっけ?

 そんなピッチリとした服を着て周りの男の品定めをしてる感じだった。

 当然、俺はスルーされた。

 間接的に聞いた話では日本のバブルがはじけなかった世界から来たらしい。

 一部の超金持ちを除いて男の扱いがかなり酷いことになってるらしい。 


 どう見ても仲良くなんて出来そうも無い連中ばっかりだったんで、正直俺は落ち込んだ。

 コミュニケーションを取る事すら難しい相手すら居る。

 その時はそんな風に思ったりもしたんだが、最終的には別れを惜しむくらいには仲良くなった。

 苦難の旅が絆を深めた?

 いやいや、そんなことは全く無い。


 なんせ、俺たちは勇者でもなんでもなかったんだから。

 

 「時が来れば元の世界に帰す。その時には『お土産』も持たせる」と、王都の外には出られなかったけどお小遣いまで貰っての異世界ニートライフ。


 「ゆっくりとくつろいで滞在して貰えればいい」と下にも置かない扱い。

 相変わらず俺の担当はおばちゃんメイドだったけどな!

 あと一年続いていたら、社会復帰出来ないレベルで堕落していただろう。

 ある意味では勇者としてこき使われるより恐ろしいな。


 そんな堕落しまくった日々の中、ある日唐突に城下で大歓声が上がった。

 城の動きも慌しく、人が動き、出入りしまくって、メイドのおばちゃんもどこか落ち着きが無かった。


 この世界の勇者によって魔王が倒されたのだ。

 「俺らなんで召喚よばれたの?」そう言いたくなる。

 結局、俺らは勇者には接することなく、式典とかパーティーとか行われている間、軟禁状態。

 俺とかはあんまり苦にならなかったが、ヤンキーとか武士のおっさんとかバブル女とかは外に出たがって苛々してた。


 さらに数日過ぎ、城も街も落ち着いた頃、俺たちは王様に呼ばれた。

 一週間後の、なんでも星のめぐりとか月の欠け具合とか位置が丁度いい時に元の世界に戻してくれるという話だった。

 話の後は「お土産」をくれるとのことで城の宝物庫へ案内された。

 真っ先に突入したバブル女は目が血走ってた。

 宝石やら金銀細工やら、豪華なドレスやらがあったからな。

 「全部ちょうだい!」と言って「さすがにそれは」と断られていた。

 武士も剣や刀に目を光らせていた。

 結局、日本刀に近いつくりの細剣を選んでたが、試し切りをしたい様な目付きで周囲を見てたんで近寄る気がしなかった。

 キモオタはなんの迷いも無くゴーレムメイドに突進した。

 「ご主人様」と呼ばせてご満悦で、ただでさえキモい顔が更にキモくなってた。

 ヤンキーは「バイクはねえのか!?」と喧嘩を売る様な目つきであちこち漁ってたが、撲殺用金属バットの様なメイスを見つけて気に入ったのか素振りをしてた。

 鬼は無限収納のスーツケースみたいな鞄を目ざとくゲット。

 「これで仕事も楽になりますねぇ」と嬉しそうだった。

 外見は鬼なのに中身はサラリーマンそのものと最後までそのギャップに俺は慣れず、違和感を感じまくっていた。

 ガキんちょは怪しげな本をパラパラっと見て「これにする」とあんまり考えて無い感じで選んでた。

 どう見ても呪われた魔道書にしか見えないものだったが、あれが原因であいつの世界滅んだりしなかっただろうな?

 地味女は綺麗な細工のサークレットを選んでた。

 早速身に着けてたが急に美少女になるなんてことも無く、地味なままだった。

 他の濃い面子に比べると話し易かったんで一番話をした相手だったけど、最後まで恋愛感情はわかなかったな。


 俺は宝石箱の中に並んで納められた指輪の中から適当に地味なものを選んだ。

 戻った際になんかトラブルがあっても、この程度の物なら隠せそうだと思ったからだ。

 選んだ指輪は触れたものの見かけの重さを増やしたり減らしたり出来る魔法の指輪だった。

 見かけ上というのは、例えば本当に人間の重さを100倍とかにしたら骨格だのの強度が足りなくてベシャっと潰れるけれど、その対象以外の周囲、言ってみれば世界から見ての重さが変わるだけで、対象自体は全く変化していない風に出来るということらしい。

 適当に選んだにしてはチート過ぎず日常的にも使える(重い荷物を軽くしたり)という点でアタリだろう。

 この指輪は今でも俺の「左手」の中指に嵌まっている。


 そうして「お土産」という名のレアアイテムをゲットした俺たちは、残りの数日、名残を惜しんで交流をしたり、ここでの滞在で馴染みになった城下町の店に顔を出して挨拶したり、城の中の人たちにお礼を言ったりして過ごした。


 「いよいよ明日だ」とかなりドキドキしていたにも関わらず、前日の夜はあっさり眠れた。

 実はその日の晩の食事に睡眠薬が入っていたらしい。


 目を覚ますと自分の部屋としてあてがわれた部屋ではなく、天井の高い薄暗い部屋の中だった。

 柔らかいベッドに寝ていたはずなのに、石の様に硬くひんやりとする感触が背中に当たった。

 動こうとして金具の様なもので、手足、胴体、首と固定されていることに気が付いた。

 どうしようも無いし、考えても何故こうなってるか分からなかったので「やめろジ○ッカー、ぶっとばすぞぉ!」と言ったら「余裕ですね」と声をかけられた。

 首まで固定されてるんで声のした方を見ることは出来なかったが、勇者のお供をしてた神官ちゃんの声だった。

 勇者には会わなかったけれど、元々が国に仕えてて王様の指示で勇者の仲間になった神官ちゃんは戻ってきてからは城で暮らす様になっていたので、地味女とかとも会話をしたりしてて、俺も声は聞いたことがあった。

 以下、俺と神官ちゃんの会話。


 「なんでこんな状態に?」

 「必要な儀式のためです」

 「俺、生贄にされちゃうの? そういうのって綺麗な女の子か、男でも美少年の方がいんじゃね?」

 「広い意味では生贄と言えるかもしれません。その事については謝罪させていただきます。しかしながら『目的』のためにはあなたに無事に元の世界に戻っていただかないといけませんし、命には全く影響はありません」

 「あー、異世界ニートと『お土産』は報酬の前払いってやつね、ま、いっか、痛かったり苦しかったりしなけりゃ」

 「受け入れていただけるようで有難いです。あまり反発されますと封印が緩みやすくなるものですから。」

 「封印? なんの?」

 「魔王、正確には魔王の一部です」

 「え? 魔王って倒されたんじゃ?」

 「今すぐではありませんが、このままではいずれ復活します。今回は約400年ふりでした」

 「で、俺に封印すると・・・なんか俺に影響とか出ちゃうんじゃね?」

 「半分の半分の半分で力としては三乗根まで減りますし、貴方が生き続ける限り消費される様になっていますので、どんどんと力が弱まって最終的には誤差レベルまで限りなくゼロに近付いていく見込みです」

 「影響が無いとは言わないのね・・・?」

 「嘘は申せませんので・・・それでは始めます」


 会話してる間に他の人間も入って来たらしい。

 個別認識出来るのは神官ちゃんだけだったけど、まあ、そっち関連の人間たちだったのだろう。

 お経と聖歌をごちゃ混ぜにした、音楽というよりノイズに近い声が俺を取り囲む様に発生すると、体の中のもう一人の俺を頭を掴んで引きずり込む様な感じで俺の意識は薄れ、消えた。


 意識を失った俺が目を覚ますと、非常に見慣れた天井が目に入った。

 スマホを見ると7月末の土曜日。

 「やたら長い夢だったなぁ」と額に当てた手には指輪の感覚。

 「夢じゃねえぞ!?」とばかりに鈍く光っている。


 こうして、俺はこの世界に戻って来たのだ。



生存報告代わりです^^;

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