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五話 思衣-しい-

人々が生まれ持って纏うようになった目には視えない衣、思衣しい。伝承の薄れた現在、再び衣を脱ぎ捨てるようになった理由とは。

「そして現代。この街の歴史の影で思衣しいを脱ぎ捨て、能力者となるものが現れ始めた。現代人の持つ思衣は脱ぎ捨てると必ず能力を発現することも分かっている。その能力はその人間の一番強い思い出に起因することも分かっている」

リーダーである乃南さんが逸話を踏まえ、思衣について話してくれた。ここで一つの疑問が湧き上がる。

「一つ、質問していいですか?」

「ああ」

「どうして、衣を脱ぐ人間が再び現れたんですか?」

「思うに、逸話のように思衣を大切にしようと伝えてきた人間自体が減ってしまったこと。そして、もう一つ」

「もう一つですか?」

「能力を悪用しようとする集団が現れたことだ」

その時だった。ドアが開き、女性が入ってきた。天音さんだ。

「能力者集団、Heartsハーツね」

「お疲れ様です。鈴原先輩」

乃南さんが一礼する。周りも合わせて挨拶をした。

「もーう、天音さんのほうがいいって言ってるのに」

ぷすっとした表情で天音さんは言った。

「そうはいきませんよ、先輩」

笑みを浮かべる。少し意地っぽくみえたのは気のせいだろうか。

「ホント、総一郎くんはカタいなぁ」

天音さんと目が合う。

「ああ、朝の追われてた子。綾川くんだったね。メッセージ、解けたみたいね」

「結構悩みました」

「無事に部室に来れたみたいでよかった」

「鈴原先輩、部室じゃなくて本部って言ってますよね。部活じゃないんですから」

「もー細かいことはいいじゃないの」

大体の二人の関係性は分かった気がする。

 天音さんもシラトリ先輩のいるソファーに座る。

「で、現状はどこまで彼に話したの?」

「伝承と、現代の状況までは」

「Heartsで止まってたわね。代わりに話そうかしら」

「それでは。お願いします」

 天音さんが俺をみる。

「綾川くんは、彼の胸元を見たかしら」

彼の胸元がどういう関係があるのだろうか。記憶を思い出し、反芻する。彼の胸元を見たのは、確かフェンスをあの大きなハサミで壊す前だった。

「あ、変な意味じゃなくて。彼の胸元の入れ墨」

思い出した。

「ハートマークを手でつかんているようなものが見えました」

「そう、それ! それがHearts団員を示すマークなの。能力者集団Hearts。彼らの目標は、能力によって、世界を"本来の形"に戻す事」

「"本来の形"ですか」

「多分、昔の人間同士の戦争の際に広がっていた思想だろうけど、思衣を破ることで得た能力には絶対的な力があると考えているようなの。そして、その力こそが本来の世界へと導く力だと考えてるみたい。そして、私たちには詳しくはわからないけど、今の世界は間違っていて能力を使って本来の姿へと戻すことを指名にしているらしいの」

「なんでそんな集団ができたんですか?」

「時代の中で、信仰が歪んでいくことなんてよくある話でしょ。彼からすれば、彼らのやっていることは、世界を本来の形に戻すこと他ならないのよ。宗教戦争って知ってるでしょ。あれと同じよ

 綾川くんが追いかけられたのは、多分話を聞いたと思うけど、能力者を集めるためなの。たとえ、能力者であろうとエッグであろうと、彼らはありったけの能力者とエッグを集めて自分たちの正しさを教え込み、目標のための兵士に仕立て上げようとしてるの」

つぎに続く

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