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かふぇ&るんばっ♪  作者: 鴉野 兄貴
皮肉屋な掃除機さんとの付き合い方

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9/63

新しい履歴書をかかなきゃ……就職活動で気をつけるモノ。煙草代

 ただいま。

私の声が空しく響く。

ポケットに突っ込んだ珈琲ガムを噛む。


 くちゃ。くちゃ。ぷう。

このガムはフーセンガムではない。その事を痛感した。

唇についた紅まみれのガムを再び舌で巻き取ってヒールを脱いでいると。


「おかえり。澄香」二コリ。やっぱ待っていてくれる人がいると嬉しい。人じゃないけど。

「どうだった? 」いうな。お前私の心読めるんだろ。


 すたすた。

玄関から出ようとする私にカレの声。

「こら、澄香。ヒールに消臭剤をかけておけ。あとしっかり手入れしてから入れ」うっさい。

それでもいわれた通りにする。「うがい、鼻うがい、爪まで手を洗って化粧を落とせよ」やかましい。

しかしノロウィルスが流行っている昨今、彼の緊急信号機能を使うわけにはいけない。アレ、ユーザー負担だし。

安いと思ったら自動更新の契約までついていた。酷い話だ。


あらたは納得していたが、お前は契約書を見ようともしなかったからな」使えれば良いでしょ?

「一応、言っておく。生命保険などの人生や、警備会社の契約のように自分の生命に関わる契約書は熟読するものだ」む。


 面倒な洗顔を終えて部屋に入ると、尻尾センサーを振りながら掃除をする丸い物体そうじきがセンサー反応で電子音声で迎えた。「『オカエリ』」言いたくなくても言ってしまうらしい。笑ってやりたい律儀さだ。


「私の履歴書かえせ~~~~~~! 」

とりあえず、八つ当たりと解ってはいるが、彼にクッションを投げる。

彼はひょいとそれを回避してみせた。


 そのまま煙草を取り出そうとする私に。

「煙草は就職活動中は辞めておけ」無理。食費は省けるけど煙草は無理。


 紫煙の香りが部屋に満ちる。そのまま吸おうとして。

ぶっ! 珈琲ガムかんでたんだったっ! 「ふはは」

くるくる回りながら尻尾センサーを動かす彼。



「勢いでやめてしまうからだ。せめて就職先をみつけてから」あらたのいる職場なんて無理ッ!

「学生時代からの付き合いだからな。お前とあらたは」別れてしまうと、逆に顔を合わせたくなくなる。


あらたが心配して、また電話をかけてきてくれたようだが」全部けした。あいつ心配性なんだ。

別れた私に、なんでそんなに良くしてくれようとするのか解らない。

「お前が好きだからだろう」やめてよ。もう別れたんだから。


 煙草の臭いは珈琲ガムの香りなんかよりずっと強い。

彼の言葉より、怠惰に紫煙を楽しみたいときもある。ただ、珈琲メーカーに紫煙の香りがつくのは嫌だ。


 煙草。やめようかな。

煙草。就職活動している限りお財布を圧迫する。掃除機曰く私のお小遣いの可也の割合を占めているらしい。

確かにハローワークの馴染みにあげちゃったりしている。就職が上手くいかずにパチンコしたり、パチンコで玉を恵んでくれた人が……いや、不愉快だからこんなことは考えない。

いくらなんでも人をバカにしすぎだ。男ってサイアク。


 おかげで玉をそこらに撒き散らして店の人にすっごく叱られた。当面あのお店にはいけない。

職場の煙草仲間同士の年齢も性別も上司部下も越えたコミュニケーションは楽しい。

ハローワークにいって煙草を融通しあう他の人と喫茶店に行くのも。


 でも、なんか違うよね。

ねえ。掃除機さん。あなたならなんて言ってくれるのかな。

私が煙草をやめたら、もっと色々お話してくれる?


 私の名前は昆野こんの 澄香すみか

煙草をやめて珈琲を飲めばその答えを言ってくれそうな掃除機。

その傍で煙草を吸うことをやめられない。そんな女。

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