表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
かふぇ&るんばっ♪  作者: 鴉野 兄貴
素敵な掃除機さんの飼い方
7/63

くす。 按摩 したい……按摩と書いてマッサージと読む

 大きく息を吸う。


 つぅっと自らの左の中指の先が右肩の上の中央に触れる。軽く肩を揉む。 中指で肩の中央を押す。

 人差し指をつうと横にそらして。

 そえた親指を物憂げに動かし、首沿いに鎖骨の上をなぞる。


 思い出したように小さく、細く息を吐く。

 けだるい動きで私の右手を動かす。

 鉛のようにおもく緩慢な動作で右の太ももの外側を軽く掌で押える。


 寝巻き越しに右の親指の動きが、腰骨をなでる中指のさきの感触。

 右の中指を肩のうえに這わせる。


 背を軽くそらして軽く天を仰ぎ、瞳を軽く閉じて息を止める。

 ひざを軽く立て、そちらにかるく手を這わせて今度はうつむく。

 左手の肘が軽く胸の上にふれ、肩に添えた左手と膝の少し上をねぶる右手の指先で軽く押える。


 鼻先から残った息が重く抜ける。

 私は炬燵こたつから身体を投げ出すように、フローリングの床に身を任せた。


 ん……。

 あっ……。


 右肩の凝りをほぐす左手の中指の先。その心地よさが胸奥を突く。

 さわさわと重い鍵盤を押すかのように、指を。首を緩慢に揺らす。

 胸の奥は重く、臓腑はつらく。心臓の音は聞こえない。


 はぁ……。

 左右の膝の先を求めて右手の先を動かすも、少し届かず。

 さわさわと夜着のシルクの上を私の指先が這うのみ。


 腿をつたって血行をほぐす指先がきもちいい。口元が緩む。

 不精で伸ばした右手の先を鎖骨から首筋にうごかし、あごを伝わせて乾いた唇を慰めるように爪でなでる。

 カサカサ。

 外風にさらされ乾燥した唇の先が細やかな音を奏でる。

 爪の冷たさ越しに指先のぬくもりを唇に感じる……。

 

 ふう。

 自らの頬に肩を寄せた。

 背骨がなる。最近外を出歩かないからなぁ。


 ざらついた感触を指先と唇で確かめあいながら、腰骨を、腿の外側をさする。

 太もものむくみをほぐすように、寄せ合う肩。不精で太くなった二の腕が下着を着けていない胸を圧迫する。ちょっと苦しい。


 う……ん。

 腿をよせ、左に倒し、上半身は右に逸らせた。背中がぽきぽきなって。


 きもちいい。


 ため息がもれ、ますます脱力していく私は指先の動きをとめて余韻に溺れる。

 忘れたように右に膝を倒すと、ひねった表紙に当たった右手首の冷たさが唇に心地よい。そのまま動きを止め、身体の鳴る音を聞く。

 投げ出した左手の指先がお尻の先に少し触れた。


 ん……あぁ。

 大きく伸びをして、力を抜き、また伸びをして力を抜く。

 体中が心地よい痛みを訴え、口元が緩む。


 腕を緩慢に戻し、フローリングの床に身体を再び任せる。


 ふう。

 はぁ。

 ふう。

 はぁ。


 小さな自分の吐息が静かな部屋に聞こえる。


 膝をゆっくり抱き上げ、掌で膝の上を撫で回しながら私は何度もため息をする。

 冷たい指先を脛に這わせる。


 ふぅ……んんっ。


 足首に届かないので軽く腹筋の要領で静止する。

 そのまま足のむくみをほぐして行く。


 足を投げ出した私はまた伸びをして、止まる。

 ため息と共に身をひねり、今度は右手を左肩に伸ばした。



 ジリリーン! ジリリーン!


 古風な音と共に携帯がなる。これは実家の。


 アンタ なにやっているのよ

 母からの涙声。なにって普通にマッサージなんだけど。


 鬼のような金切り声でキャンキャンと叱る母を宥めすかしながら珈琲を入れ、どういうことかと『彼』を問い詰める。


「私は、週に一度、安否確認のために親元に画像を送信するオプション機能がついている」

 尻尾センサーをパタパタさせながら、お節介な掃除機はそう告げた。


 私の名前は昆野こんの 澄香すみか

 親に誤解されるような厄介な機能を持つ掃除機と、珈琲を飲めば会話できる女。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ