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かふぇ&るんばっ♪  作者: 鴉野 兄貴
かふぇ&るんばっ♪ えきすとら

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金縛りさんと私の珈琲タイム かふぇ&るんばっアフター2

 夜中に目が覚めた。

手足が動かない。じわりじわりと周囲を蠢く気配。

窓に人影ってこれって強盗? 叫ぼうとしても声が出ないことに気がつく。

なんだ。また金縛りかよ。寝る。寝させろ。というか本気でしんどい。何故腹の上に乗るの? バカなの? 死ぬの?! 私は産後でまだ子供たちが寝ているんだからせっかく子供たちが寝ているときくらい寝かしてよバカあああっ?!


~ 金縛りさんと私の珈琲タイム かふぇ&るんばっアフター ~


 昏い闇の中、動かない手足に本能的恐怖を感じながら私は金縛りを解こうと手足に力を込めて動け、動けと心の中で叫ぶ。

金縛りっていうのは脳みそが動いているけど身体が覚醒しない状況で脳が幻覚を見ることで起きるんだってあらたが言っていた。新って言うのは私の夫だ。美形だ。カッコいい。あげないからな。ざまぁみろ。

 痺れる手足を無理やり動かそうとする私。

誰か助けてッ 掃除機さんッ?! 珈琲メーカー?!


……。

 ……。

 金縛り中失礼。お久しぶりです。もしくは初めまして。

私の名前は旧姓・紺野こんの澄香すみか。現・あらた澄香すみか

夫の新真あらたしん、双子の生まれたての娘と暮らす元医療事務だ。

私の『人間』の家族は私を含めて四人なのだが、前述のようにうちには人間外の家族がいる。

ひとり(?)は掃除機。私の相棒のロボット掃除機だ。

何故か人語を喋るが私と夫の新……もとい真しか聞こえない。

もうひとり(?)は珈琲メーカー。新の相棒でこちらも何故か人語を喋る。

以前は珈琲を飲めば相棒の声が聞こえていた私だが今では日常的に聞こえて可也うるさい。

それでも二人(?)とも子育ての手伝いをしてくれるだけましだ。手足がないからなんとも頼りないが。

「澄香。どしたの?」あなたはツクモガミの癖に幽霊が見えないわけ!?

「澄香。幽霊などこの世にはいない」ツクモガミのアンタがいうなっ?!

おばかな会話をする珈琲メーカーと自分の相棒に舌打ちしたいが相変わらずわが身は絶賛金縛り中だ。

ついでにいうと腹の上にもやもやさんが乗っている状態。重い。どけろ。

新~! 帰ってきて~~~~~~~!??? 


 しかしうちの夫である新は緊急救命病院に勤める安月給の身。

その月給は聞いて驚け数万円!! バイトの勤務を含めてほとんどまったく家に帰ってこれない。帰ってきても数時間で舞い戻る日々だ。

子育ての負担は私と実家の母にかかるので困る。

時々歳の離れた友人の順子ちゃんが手伝いに来てくれるが。

こんなろー! どけろ~!!! 役立たずの掃除機に珈琲メーカーめぇえええっ?!


「だから、幽霊などいないと言っているに」


 電源オフモードの掃除機は面倒くさそうに答え、同じく電源オフ状態の珈琲メーカーは人間臭く欠伸をする。

「というか、澄香。寝かせてよ。眠いんだからさぁ」珈琲メーカーのくせに眠いのか?!

「私には省電モードがある」「いいなぁ。私スイッチ切ってもらうだけだ。あ、ら、た、にッ? 言っちゃった。きゃは♪」

お前らは絶賛私の腹に乗っているもやもやさんが見えないのかぁ?!


「ええと。無視するな」


 もやもやさんの悲しげな声が心の中で罵り声をあげあう私たちに響いた。

「幽霊なんていないのに」掃除機さんの言葉に「なら私はこの女の妄想なのか」と肩を落とすもやもやさん。

「澄香。もやもやさんに珈琲を入れてあげてよ」……飲むの?


 うーん。無理だ。手が動かん。金縛り中の人間に無茶ぶりするな。

鉛のように重く冷たい手を震わせ、呻くように声を出す。「珈琲は如何?」


 少し手が動き、枕元の珈琲メーカーさんに手が届く。スイッチスイッチ。

手探りでスイッチを探ろうとするが電源が入らない。

「あんた、感度落ちたんじゃない」心の中で悪態をつくと「女の子に失礼じゃない?!」と叱られた。いや、アンタは機械だから。「それって侮辱! 侮辱! 花をも恥じらう女子高生に?!」何年前から言っているのよその台詞。

「あ。フィルターに珈琲豆入ってないや」絞り出す声に肩を竦めるもやもやさんとうちの相棒の掃除機さん。

「悪いけど、金縛り解いてくれないかな? それとも私の代わりに豆取ってきてくれる?」

身体が勝手に動き、豆のおいている場所に動く。その過程で掃除機さんに脚をひっかけた。小指が当たってクソ痛い。

「それだけか。お前はそれでいいのか」

うっさい役立たず。動けたら蹴り入れてやる。

というか、子供たちは寝ているし、新は相変わらず夜勤だし、誰かなんとかしてくれ~!


 こぽこぽと珈琲の心地よい香りが場を満たすと私のうっとおしい力が覚醒する。

具体的に言うと私は命の危機に瀕したり、珈琲の匂いを嗅いだり、その他の理由でスイッチが入ると周囲のツクモガミたちの声が聞こえるのだ。

「澄香~。こっち埃たまってる。後で掃除して~」金縛り中だって言ってるでしょ。

「澄香殿。私は雛人形として既に歳だが新殿のご友人の処に赴きたいと思う」へぇへぇ。でもそういう場合じゃないから黙ってて。


「やかましい家だな」


 呆れるもやもやさんにため息をつきたいのに絶賛金縛り中の私。

もやもやさんに操られて珈琲を何故か淹れています。どうしてこーなった。

珈琲を口に含んで嬉しそうなもやもやさん。確かに幽霊になっちゃ怖がられるだけで珈琲を勧められることはないかも。


「どうですか。私の珈琲は美味しいでしょう」「げろんぱ」


 気取る珈琲メーカーと悪態をつく掃除機に呆れる私。怖いの半々。呆れ半々。

「実は調べ物をしてほしいのだが」私の脳裏に沸いたイメージは黒い綱みたいなもので構成されたムカデみたいな生き物が世の中を埋め尽くしていく妙なイメージ映像。

結果的にインターネットにアクセスしたり、百科事典で調べたり、どうしようもない調べ物を朝まですることになった私たち。寝かしてほしいんだけどなぁ。

ああ。眠い眠い眠い。子供を産むのは大変だよね。うん。貴重な睡眠時間に何をやっているんだか。


……。

 ……。


 気が付くと有線ラジオの音楽とその音楽に合わせて歌う珈琲メーカーの声。

枕元で優雅に音楽に合わせて踊るように滑るロボット掃除機。そして。


「なんか散らかっているけど」


 双子を抱いてあやしながら呆れる夫。あらたしん

跳ねるように飛び上がって彼の首襟をひっつかみ、昨夜の恐怖体験を告げると夫は明朗闊達めいろうかったつに『幽霊なんているわけないじゃないか』と答えた。


「というか、面白い夢を見るんだね。澄香は」


 そういってキスされた。

なんか腹たつし。というか妻が困っているというのに。

私の名前は紺野澄香。おっと。旧姓・紺野澄香。現・新澄香。

珈琲を飲んでゆっくり夫と子供たちとくつろぎ、何故か聞こえる掃除機や珈琲メーカーたちの声に囲まれて過ごす女だ。

もし近くを通ることがあったら一杯飲んでいきなさい。

幽霊だって悪魔だって大歓迎なんだから。


~ 金縛りさんと私の珈琲タイム かふぇ&るんばっアフター おしまい♪ ~

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