前日譚。『魔女』
むぅ? 長い毛が落ちている。
これは彼の浮気に違いない。
そうおもいつつも平静を装い、私はリビングでくつろぐ彼の顔をジロジロと眺めてやる。
平凡な顔立ち。男にしては臭くない。声は普通。少し音痴。
一瞬ざらざらした彼の唇の感触が舌に蘇り、嫌な気分になってしまった。
「ねぇ。新」「なんだい。澄香」
「あんた浮気しているでしょ」「澄香より可愛い娘がいたら考える」
はぐらかされた。私より可愛い子なんていくらでもいるでしょうに。
「ねぇ新」「なんだい。澄香」
「あなた浮気しているよね? 」「そうだな。澄香より隣で見ていて微笑ましい女がいたら考える」
意味が解らない。そんなに私がドジだといいたいのか。
「ねぇ。新ってば」「どうしたんだい。澄香」
「叱らないの? 怒らないの?」「たかが炊飯器に洗剤入れてご飯を炊いたくらいじゃないか」
「ねぇ。新。あなた浮気したいでしょ」「ううん。全然」
「この髪、何?」「澄香。お前」私は髪の毛伸ばさないわよ。
彼は少し意味ありげにやさしくほほ笑む。
「お前の家のおばさんに手を出すように見える? ほとんど親子だぞ。僕等」へ?
「お母さん、きているの?」「澄香が部屋はいつも綺麗にしているかとか、元気かとか、週に一回は菓子もって」
私はにこやかに笑いながら新の耳を引っ張った。
「引越ししましょう。今すぐ」
うちのお母さんは美魔女な容姿である。取られてたまるか。
即興小説。制限時間十五分。友人が即興小説に挑戦しているのを見て同じお題で挑戦。
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