ぱじゃまでおじゃま……緊急女子会
珈琲がすきなの? そう聞くと順子ちゃんはにこりと笑って呟いた。苦いから嫌いだよ。と。
彼女が怖い夢をみて怯えていると、和代ちゃんが蜂蜜を温めて、
あったかいミルクを入れて、重曹とインスタント珈琲を入れてくれたらしい。
その異常に甘い泡立つものを飲んでみた。意外といける。
バターも入っているんだよとのことだが。
太るじゃない。あなたの胸みたいに。
「ひっどーい 澄香さん」あはは。
「眠い。お前ら早く寝ろ」布団に包まっているもう一人の女の子に苦笑い。
ぜんぜん、お姉さんになれていないのよね。私って。私よりこの二人のほうが大人だ。
「規則正しい生活は美貌の基本」「これ以上美人になるの? カズちゃん」
そう。この二人、容姿もすごくかわいい。気がついたら私ももうすぐ三十路なんだよなぁ。
ああ。若さがうらやましい。
「怖かっただろ? 俺が隣で寝ていてやるからよ」和代ちゃんって男の子みたいにイケメン発言するんだよねぇ。
「えええ。澄香さん。カズちゃんから離れて」「あのね。キミたち」
私は呆れた。仲のいいこと。あと、私は結構色々気にしない性格だから。
……たぶん明日には大丈夫。そう思ってね。二人とも。
「ねね。澄香さんって学生時代はどんなことしていた? 」「……」
急に黙り込む和代ちゃんに「ごめん」と呟く順子ちゃん。どうしたのだろう。
「姉は病気だった時期があって、今私と同級生なの」……いろいろあるのね。
昔の話って。新の話がほとんどなんだけど。あのころは新はかわいかったなぁ。
「聞かせて聞かせて」「俺もちょっと興味あるな」
「澄香さん。聞いて聞いて。あのね。他所の学校の男の子たちから告白されたんだけど」「いいことじゃない」
「友達だと思ってたし、そんなの考えられないよ。どうすればいいかな」「それを悩めるだけその子たちが大事だと思ってるでしょ」「そんなことないよ」
「俺も告白されたわ。順子の世話で手一杯だから断ったけど」「なにそれ。聞いていない」そういって落ち込む和代ちゃん。
なんでも女の子に告白されてしまうらしい。わかる気がする。
「おれはかっこいい男の子や知的なおじ様が好みなのに」渋い趣味ね。
私は年下がいいなぁ。紹介してくれないかな。
「あ、かわいい子が知り合いにいるよ。女の子みたいな見た目だけど」ほうほう。詳しく。
「ああ。なんか言いたいのに口に出せない」わかる気がする。
「そうそう。怖い夢といえば俺も見た。順子が他の女と仲良くしていると包丁もって迫ってくるんだ」「そんなことしない」「いや、夢だって」
そういう夢って、若いころよく見る。ただ好きではなく、頭の中が理屈づいていく過程で一番二番が決まっていくんだ。
若いころって。いいよね。
皆が一番好きで、順番なんて考えられなくて。
大人になると言葉で自分の気持ちがわかってしまう。
人の好き嫌いも順序を決めて。同じ好きでも二番目でいいなとか。
一番を捨てて、二番目を諦めて。三番目を一番にしようとか。
だからって子供のままなんて迷惑だし。子供たちを護るのは大人の仕事だ。
だから。ゆっくり大人になればいいんだ。キミ達は。
二人ともしっかり者だから私より大人だと思うけど、気持ちはまだまだなんだね。
二人とも大好き。襲うわ。
「ちょ?! 澄香ちゃん?! 」「うわっ?! 澄香さんがキス魔になったっ?! 」
じゃれあう私たちに落ち着いた声。
「この分なら、私がいなくても大丈夫だな」うん。でも時々支えてね。
私の名前は昆野澄香。
珈琲というものを冒涜したような甘く苦いバタービールを手に、年下の友人たちと戯れる女。
珈琲を飲めば、私を励ましてくれた『彼』の声が。今でも時々私を支えてくれる気がする。
だから私は辛いときも悲しいときも大丈夫。
「多くの男は死ぬより怖いものを自ら見出し、勇気の糧とするが。
女というものは命を生み出す過程で死や痛み。苦しさも悲しさも元より知っているのだ」
じゃれあう私たちに『彼』の声が響く。
「世界で一番幸せになる瞬間が女にはある。その瞬間に気づくか否かで人生は変わるのだ」
ちょっと。枕ぶつけないでよ。それダウン入っていて高いんだからっ!?
ああっ もうっ! 反撃してやるっ! あははっ!!!
「澄香。人間は完全にはなれない。辛さも悲しさも愛せる人間になれ」
うん。そうだね。私の幸せな瞬間って。君や新と過ごした時間だと思う。
「介護でもボケでもばっちこい! 全部持ってやろう! 」
「意味わかんない。澄香さん」「既にボケが始まっているな」
うっさい。私だってキミたちみたいに理不尽で人の考えを無視して自分の思うことを言い放ちたい日があるのだ。
「もういい加減寝ようよっ 澄香さん」「うっさーいっ! 恐怖体験した傷心の私につきあえっ! 」
だから、もうちょっと付き合ってね。『あなた』も。やっぱり一人でいるのは怖いんだ。




