来た 食った 出た……後ろに注意
私の中の熱いものが……身体の中で蠢く。くぅ……はぁっ。
爪を壁に立て、その感覚に身を任せる私。
うっ うぅっ 痛ッ……。
はぁはぁ。
力を抜き、その迸りに耐える。まだだ。まだだ。
うう。はぁぁぁあっ。 熱い。痛い。沁みる。
ふう。
今日は快便だった。
トイレブラシと洗剤で軽く便器内を掃除してその小さな個室を後にした私の足元で掃除機の声がした。
「本当に本当に貴様は残念な子だな」失礼な。食ったら出るもんだ。
そういえばアンタを新が買う前に面白いことがあったなぁ。
「なんだ? 」あんた。私の心が読めるのに聞く必要ないでしょ。
「話したほうが頭の中で論理的に物事が構築されてスッキリする。お前のようにあえて辛いモノを摂取しているような日はな」ありがと。たいしたことないんだ。
「いや、同棲して一年目ってさ。講義サボって新と……うん。色々してたんだよ」
時々美魔女の母がやってくると知ってあのアパートは越したけどな。
私の足元を黙って滑っていくロボット掃除機。その仕草はあくまで優雅で滑らか。
ちょっとだけ当時の新の手つきを思い出すな。あいつの腕は甘い獄だ。
絶対痛いことはしないし、優しくやわらかく支えるようなのに決して逃がしてくれない。そんな腕だ。
だから屈してしまう日も少なからずあった。
カレが本来絶対言わないようなありえない無茶を提案したときは拒否したほうが良かった。うん。
『後ろも試したい』とか。本気で大喧嘩になったし。
アレは本気で事前の準備が必要だ。周囲が汚れる。ヤツはビニールと道具を出してきた。
道具攻めに目覚めたらしい。死ねと思ったがこれは言葉巧みにやられてしまった。
「……新の認識が変わる話だな」
あいつ浮気のかけらもしないからな。
正直そういう変態行為は風俗に行って欲しい。金くらい貸してあげたのに。
あれ大変なんだよな。
シャワーの頭はずしてぬるま湯を弱めに出して、中を洗って何度もトイレとか。
そもそもそれも慣れないと難しいとか、流し込む量が少ないと洗浄しきれないし、多いと腸の奥のぬるま湯が時間差で降りてきて大惨事とか。
「やったのか」おう。若かったからな。
「若いでは済まされないだろう」正直どうかと思う。でも二人とも燃えに燃えてたしなぁ。
トロトロ系のをこまめに補充が理想的だぞ。オ○ナインさんでもいいけど。
「聞きたくないな」ゴムは必須だ。尿道に異物が入るのはお勧めしないもん。ウレタン製は硬くて痛いのでノーサンキュー。
ちょっと位置が高いほうが後がはかどるんだ。
アフターケアでもう一回シャワーいるしな。塗り薬も必要なのさ。
「なぜそこまでして出すところで入れようとする」人間の神秘だねぇ。オナラ出すぎ。
「やめんか」大丈夫。掃除機だって常時後ろから空気が出る。「別問題だ」
あと、大きくする必要はないんだよね。道具はあくまで色々な追及のためだ。
抵抗感がないくらい、それこそ新みたいに念入りに緊張をほぐす相手なら大丈夫。
そうでないヤツ相手は危険だけど。マジで危険。怪我したら洒落にならないよ?
「切れ痔になるのか」ああ。ちゃんとしてたら快便だったかな? 「……」
終わったら締める。デカイのを出したのと同じね。
「……私に脳みそがあったら頭痛を感じていただろうな」
ただ。ちょっと問題があってさぁ。あの時は酷かったね。
「どうしたのだ? 」いや、新と初めてしたときだけど。後ろ。
私、『ジョロキア様』食べてたんだよ。ゴムは当然私が前に針で穴開けててさ。
「……? 」ほら、唐辛子の粉の類って胃腸の粘膜傷つけながらすごい勢いで下るの。酷いときには下痢に。
で、すっごくお尻が痛いから今日はやめようと言ったのに。あいつって聞かないからさ。
股間押さえて悶絶する新を見ながら大爆笑。
後で二人で泣きながらフローリングのお掃除をする羽目に。
「まさかそんな理由で私を買ったとか言わないだろうな」一部そんな理由もある。
私の名前は紺野澄香。
珈琲を飲むと喜怒哀楽がないのに落ち込んだりするロボット掃除機の言葉がわかる女。
まぁ安心しろ。君はそんな掃除には向いていない。「当たり前だ。いい加減にしろ」
ニンゲンって理解不能なことするよね。
「そもそも後ろの穴は出すものだ。なぜ入れる」まれによくあるんだ。うん。
男子諸君に告ぐ。
『後ろを試したければゴムは勿論、彼女がジョロキアを食べたかどうかは確認しろ』




