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かふぇ&るんばっ♪  作者: 鴉野 兄貴
掃除機さん 掃除機さん あなたに微笑む顔があれば

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32/63

スパビタミンX……ビタミン欠乏はむくみの原因にも

 じゃらじゃらじゃら。

プラスチックの瓶から出すのはダイエットサプリ♪

乾パンタイプのサプリをかじる。

最近これで済ますことが増えてきたからなぁ。慣れると美味しいし。

色々な味があって悪くは無いんだ。チョコ味とかあるし。


 チョコ味をかじり、チーズ味を頬張る。

フルーツ味もいけるな。ああ。この抹茶味もなかなか。

ほのかな苦味と甘い味……うん?


 私は思わずそのサプリを噴出しかけた。

舌に触るクッキーの感触をミルクで飲み干そうとして喉に詰まってあえぐ。


 これ珈琲味じゃないのっ?!

咳き込んでいると足元を滑る掃除機と目があった気がした。やつには目は無いが。


「お前は異物に目が無いな」おい。


 皮肉の聞いたジョークを放つ掃除機。

ああ。私は珈琲を飲むとコイツの言葉がわかるのだ。なぜか。

カフェイン摂取のしすぎの狂気ではないかと悩んではいるが、コイツのおかげで精神的にかなり助かっているのも間違いないわけで。


「野菜を取れ。安いときにまとめて茹でて保存していた野菜はどうした」

外に出しててすごいことになってた。それにビタミンって切ったら少しずつなくなるって言わない?

「摂取しないよりマシだろう」うむむ。


「そもそも生より茹でた方が胃にやさしいし消化しやすい。量も取れる」ああ。それはわかるけど。

ラジオの音楽にあわせてくるくる踊りながらフローリングを掃除するロボット掃除機を眺めながら私はため息をついた。


「また変なものを食べている」美味しいもん。

「ならお菓子を食え。大して代わらない。そして安い」太るじゃん。

「ムチムチ澄香ちゃん。ぼくの天使。もっと太って」あらたのアホォぉぉ?!!

元カレの物まねを始めた掃除機に思わずサプリの一錠を投げつけた。


 ベルトを締め、服装をただし、鏡の前に立って乱れをチェック。

百円化粧と重要な化粧を使いこなして戦闘準備完了。


 私はあのころの黄金の体形を取り戻すのだッ?!

「身長159のウエスト65でDとか。普通にスタイル良いといわないか」うっさ~い!?

「太ったのなら素直に認めてブラを買いなおせ」やかましいっ! ブラはちょっと痩せたらすぐスカスカになるんじゃ~!?


「垂れるぞ。それも痩せて貧相になって垂れるぞ」うおおおおっ?! それはヤダッ?!

「澄香たん。綺麗な形のおっぱい大好き。痩せようとして垂れたおっぱいも大好きハァハァ」あらたマジ自重。


 大体なんで奴は隣にコイツがいるのにこんなこっ恥ずかしい会話してるのよっ?!

「防音マンションを契約したのはお前たちだ」それはそうだけど、なんであの時はしゃべらなくて、あらたと別れてからしゃべりだしたのよっ?! 


「お前が望んだからだが」望んでないッ


 するすると私の横をすり抜け、サプリを『ずぽ』『ずぽ』と吸い込んでいくロボット掃除機。

「これはビタミンサプリか?

確かにビタミン欠乏はくる病に脚気、夜盲症などの原因になるが、現代日本では少ないな」

現代人にはストレスとか生活習慣の変化とかあるのよ。


「なら、サプリメントはあくまでサプリメントで主食ではない。食生活の偏りは栄養失調を引き起こす。たとえ多少のビタミンが入っているとしても普通に食事をしろ」う……。


「寝てもさめても疲れが取れない。なんとなく常時だるい。イライラする。動悸息切れ食欲不振。これらは『潜在的ビタミン欠乏症』というが」なら食べていいじゃんっ そのサプリ高かったんだぞッ?!


「お前の場合、更年期障害の可能性があるな」……。


 私はまだ二十七歳だぁぁああああああああああああああああっ?!

私の投げたサプリメントの瓶はカレを直撃した。


 私の名前は紺野澄香こんのすみか

珈琲味のサプリを食べてもロボット掃除機の声がわかる女。

だれがおばさんだ~!!!!! 私は若いッ?! 

「昨今は三十路や三十路前の女性の更年期障害も増えているのだぞ」

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