アイスと誠……コタツでアイス
ふみゅ~。
私は珈琲メーカーからの珈琲の蒸気を眺めつつ、その白い物体を口に運ぶ。
爽やかな甘み。突き抜ける冷たさと快感。白い塊は私の舌の上でとろけ、喉に吸い込まれ。
脚をポカポカと暖める快楽と身体を優しく包むぬくもりに何処までも落ちていきそうな。
「コタツでアイスとは」風邪でコタツでアイス最高。
あ。ちょっと珈琲とって。
「無理をいうな。私には手足はない」むう。
ふらふらとたちあがり、珈琲を器に入れる。熱は下がったので鼻水とタンが邪魔で香りはほとんどわからない。
鼻がヒリヒリするので水道の水で直接鼻をかんでいる。ついでに鼻うがいも。
のどに百円ショップで買ってきた蜂蜜を流し込み、ボサボサの髪を掻く。
そういえば、最近煙草吸ってないなぁ。吸いたいなぁ。でも買いに行くの面倒だなぁ。
よろよろふらふら。
また冷蔵庫の中に入れたお餅でくるんだアイスを取り出す。
新の好物で、沢山貰った。餌付けされているかもしれない。
「平安時代に雪を食べた記録はあるようだな」ふうん。
「世界史で見ると初期は滋養強壮のため温存した氷を兵士に食べさせたそうだが、
純粋な嗜好品として食したのはローマのジュリアス・シーザーらしい」ふはは。ならば私は皇帝か。
「皇帝……まぁよい」何かいいたげな掃除機を無視して珈琲を啜り、アイス入り大福を口に運ぶ。
くぅ……。最高ッ!
「旨そうだな」
私の周りをくるくる掃除してまわるロボット掃除機に差し出してみるが。
「餅が危ないから無理だ」ふん。つまんない。あんたは爺さんか。
するするする。下がった彼は電源に自らをセッティング。
充電モードに入ったらしい。つまんない。
「ちゃんと布団で寝ろよ」はぁい。
くるくるとスプーンで薄切りしたアイスを丁寧に珈琲に入れると薔薇の形になって中で踊る。
上手に出来ただろ。ほれほれ。「うむ。腹を壊すなよ。折角持ち直したのに腹を冷やすのは良くない」
でも風邪のときは身体を温めてアイスとかバナナとか美味しいんだよなぁ。これが。
ああ。コタツでミカンとアイス最高!
私の名前は昆野澄香。
珈琲を飲めばロボット掃除機の言葉がわかる。
風邪引きで一人暮らしの寂しいときにはちょっと嬉しい力を持つ女である。




