ゴーホーム・あろーん……掃除機の脱走には気をつけて
部屋に溢れる香り。湯気が鏡に映る私の姿を曇らせる。
私は息を吸い、喉から、鼻からその蒸気の味を堪能する。
温かな感触が掌を、足の裏を。すねの裏やひざの裏を断続的に包むかのように。
腿のうちから足のつま先に温かな滴りが伝う。
「ふあぁ」寝起きでまだ醒めやらぬ意識を無理やり内から開こうとするその甘く優しい刺激に思わず声が出た。
私の髪を伝い、耳の裏を撫で、首筋の生え際を包む肌触り。
きもち。いい……。
胸がざわめき、何も食べていないおなかが少しうごいた。
背筋を伝い、舐るほどよい熱。にふわふわとした気持ちがクリアになっていく。
背中を上下に、腰から上に。胸の下と肋骨の間。そして下腹から。
やっぱ朝からシャワーはスッキリするよね。
気分さっぱり。バスローブを羽織って外に出た私は気がついた。
玄関開けっ放し。
そして。普段掃除をしているロボット掃除機がいない。
「脱走??????! 」そう。ロボット掃除機は稀に部屋の外に出て何処かに行ってしまうことがある。
「ちょ?! ちょ?! ちょっとぉ????????! 」
彼を探すべく、机の上の珈琲飴を口に放り込むと、私は部屋の外に駆け出し。
ぱたぱた暴れるロボット掃除機を捕獲した大屋さんと目があった。
「澄香。酷いカッコウだな」あんたのせいでしょ。
大家さんから若い娘がなんて格好でうろついているんだとたっぷりお叱りを受けた私の名前は昆野澄香。
珈琲飴を舐めると、ロボット掃除機の言葉がわかる女。




