ペーパー むーん? ……脂肪は減らない脂肪比率は減る
電波発言を行う掃除機はふるふると身体に絡まったコード類を振り落とそうとしている。
「まず、筋肉は脂肪になる」そういえば逆は聞いたこと無いな。
「運動したり、エステティックサロンに行くと体重が落ちるな」
うん。運動したり、マッサージしてむくみや脂肪を燃やしてもらうモンね。
「馬鹿者。汗をかくから体重が落ちるのだ」……。
「一番痩せるのはエステティシャンだ」……そりゃそうだけど。
「そんなものに前金五十万も使うな」うっさいいいいいいいっ?!
「人間の構成物質のほとんどは水だ」うん。66%くらいだったっけ。
「塩を減らせ」はいっ?! 砂糖じゃなくて?
ふわふわ。ふわふわ。
オプションのフローリング磨きを回転しながら彼はあっさりと告げた。
「塩と共に腎臓を通し、尿として人間は老廃物を輩出する。
要するに尿を出す。塩をとらない。これでいい」えっと?! ちょっと? ちょっと?!
「あるWeb作家は三日、朝昼晩350ミリリットルのビール一杯づつだけ飲んで体重を大幅に落としたらしい。総計1050ミリリットルだな。
本人は『人間の体重の一割はうんこ』と抜かしているが」はあ。
「ビールには利尿作用もある。合理的だ」む?
「そもそも、身を削っているのに苦しくないはずがないだろう。
体重を減らすのは辛いし健康に悪いのだ。現代のダイエットは栄養失調を繰り返しているようなものだ」うん。
「むくみを解消したり、通じを良くしたり、骨や筋肉を矯正するストレッチは健康にいいが」あい。
「ビールは糖質だ」そういえば。
「おつまみなどで脂質が加わることで、脂肪になるが……人間はアルコールを脂質に出来ない」よし、ビールだけ明日から呑む。
「三日目に内蔵がおかしくなって辞めていたらしいから、辞めろ。あと貴様は酒癖が悪い」うううう?!
あの。
私の買った、ダイエット本とかは?
「林檎だけやキャベツだけを食べて痩せるのはただの栄養失調と食物繊維の摂取だ。肥満も栄養失調だ」
特定の栄養素の欠乏で起きる。らしい。特に女の子は鉄が不足しやすいとのこと。
バカ高い運動器具……。
「脂肪を男女の美観に適うよう美しく支えるには筋肉も必要だ」
「人間は、激しく運動を行うと水分を排出し、運動に耐えられるように筋肉をつける。
ここで、塩分と水分を大量に消費して、体重が減る」はぁ。
「筋肉を破壊され。限界まで使い潰した肉体は超回復を行う。
期間は二十四時間から四十八時間に及ぶ」だね。
「ここで、相撲取りは食事を行い身体を休めて身体を作る。
ボディビルダーは上半身を鍛えたら次の日は上半身を休めて超回復させつつ、
下半身を鍛えてサーキットトレーニングするが」うん。
ここでサボる。らしい。塩分を取って水を吸おうとする身体に、塩分を与えない。
水は飲んでいいの? 「塩分が足りないから尿としてそのまま排出される」な、なる。
「体質もあるが、腎臓に負担がかかるから、腎臓の弱い人間は注意しろ」なるほど。
「食事の代わりにアメ一個でも舐めて唾液を出しておけ」アメ?! 甘いものじゃない?
「飴を舐めると唾液が出る。その後くちくなった歯を舐めて更に唾液が出る。すると胃腸が動く」はぁ。
「脂肪を燃やすのに必要だ。ビールの代わりに利尿作用がある珈琲でもいい。
一日何も食わずとも人間は死なない。むしろ一日三食必ず食べている現代人が異常なのだ」あの。そんなこと本には。
「唾液を出すのが重要だからな。珈琲には砂糖を入れず、アメとは分けろ」ええっと……砂糖を食べて痩せるわけが……というか、そんなこと誰が言ったのよ。
「痩せられたら本が売れない」理解しました。凄く。
「だいたい、20キロ、30キロあっという間に痩せる芸能人連中は人外なのか? 」
掃除機ではないわね。少なくとも。
ええと。まとめると、
「水呑んで運動。ストレッチはしっかり。ここまではいつもと一緒」うん。
「人間は一日何も食べずとも死なないから、超回復の日は必要な栄養を身体に与えず、アメでも舐めて唾液出して寝ておく」はあ。
「長風呂して、足の裏や掌、脇に痩せたい部分、背中に下腹に水をかけて、30分以内に一時間でも良いから寝る。基礎代謝が良くなる」はぁ。
「塩が足りず、水が尿として流れる。体重が落ちる」……。
「プロレスラー体型のオカマが女性も羨む身体を手に入れるために、
一度筋肉を全て脂肪にしてから痩せている事例もあるぞ」……えっと。
「相撲取りは程度の差はあるが引退すれば現役より痩せる」……。
「たいして太ってもいない現代女性が、多少運動したところで脂肪が減らないのは至極当然だろうな」ぶち。
私は、彼の周りにコードをクルクル巻きつけてみせる。「こら、やめろ澄香」
さっさとその話題を言わんかあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ?!
「身体を削り、健康を削る行為だ。
体重を落とす行為をお前に言わないのはあたりまえだろう。澄香。
お前は少々脂肪比率が大目だが、女性としては標準体型だ。
どうしてCGやコラージュで作った偽者の女を目指す?
お前は『本物の女』だ。『本物の、現実の』幸せや体型を掴めばいい」
うっさ~いッ! 明日からやっぱりビールだけ飲むッ! おつまみは我慢だッ?!
「お前のことだから絶対余計なことをして逆に脂肪がつくがな」じゃかましいっ?!
私の名前は昆野澄香。
掃除機の言うことが本当か嘘かと、ごはんも食べずに砂糖とミルクのない珈琲を飲みながら飴を舐める。
騙されやすくて自分で調べないものぐさな女。
「かたづけのしっかりした家は、行動半径が広がり、痩せやすくなるぞ」
そして彼の口車に乗って、すき腹を抱えて部屋を片付け、掃除機を当てている。そんな女。
「全部嘘だがな。お前は素直で面白い」
この言葉は、私には聞こえなかった。
フィクションと言うことでスルーお願いします。
作者は起床したら、すぐ部屋着にしてベルトを締めてます。
本編は作者の経験談的な話なので、間違っていると思います。