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かふぇ&るんばっ♪  作者: 鴉野 兄貴
皮肉屋な掃除機さんとの付き合い方

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求人ゾンビ……空求人の知識

 またっ! 断られた~~~~~~! 私の履歴書代と交通費と途中で入ったお洒落なワインバーのワイン代とスィーツ代5000円返せぇえええっっ~~~~~~~?!!


 涙が止まらない。

再就職活動をはじめて最初は一回二回断られるのは覚悟したけど。

すげなく断られる。『一応募集は出しているけど、ぶっちゃけ人足りているの。いや、本当に欲しい子がきたら雇うけどね』と言われる。

後者は色々ありえないが、ぶっちゃけてくれるだけマシだった。

ほとんどは交通費と時間の無駄で、後者であることを悟らされるのだ。


 ばっかやろう。ばっかやろう。

わたしはなぁ。こう見えても賢いんだぞ。たぶん。

仕事も出来たんだぞ。友達いなかったけど。

と、いうか。久しぶりに呼ばれたら、コンパの残飯処理担当だったけど。

タダ酒は高かった。高かった……。


 泣きつかれて眠ってしまったらしい。

ノロウィルス以前に風邪を引いてしまってはどうしようもない。よね。


 ボロボロの顔を見て、嫌な気分。

最近、化粧のケもしてなかったから。


 う。う。

うぇぇぇぇぇぇんッ!!!!!! あらたのバカァ~~~~~~~~!

洗面台のホーローに頭を打ちつけて泣きはらした私は、携帯電話の『あらた♪』の表示を見て。

思いっきりゴミ箱に向けて投げ飛ばした。


 ガツン。

石膏せっこうの壁に穴があき、落下先に。


 カンッ!

ふわふわとオプションのモップを回しながらフローリングを駆け回っていた掃除機。



……。

 ……。


「落ち着いたか」うん。携帯壊れたけど。

「私の心配はしないのか」携帯は喋らない。


「ふむ。再就職の難しさを知ったと」

募集出しておいて実は出していないとか、足と時間だけ出させてサイアクだよ~!

何度も無駄足を踏む。面接に行っても何時間も待たされ、すげなく断られる。

そもそも面接すらない。書類を送ってもナシのつぶて。

「ハローワークは掲載してくれと職員が各企業に依頼する形式だ。

タダで掲載できるならとりあえず出しておこうとなる」うううううう。


じゃ、募集も採用も電話だけにしておけええええええええええええええ。


「……澄香。おまえは何歳だった? 」にじゅうなな。


「四十になると、男女関係なく、書類だけ送らせて捨て、一週間ほどして不採用と言ってくるな」なぬ?

「そもそも、お前、何枚履歴書送った? 」バッチリ書いたよッ! 見てよッ

「ふむ……顔だけしか見ていないな。コレは」え……。

そりゃ、そりゃ、化粧とか苦手だけど。


「化粧は女の鎧にして刀だぞ」うっさいっ! あらたは可愛いっていってくれたもんッ!

「その結果が化粧一つ満足に出来ない小娘だ。お前は27なのだぞ」ううううううう。紅くらいッ!

「化粧はTPOを踏まえるのが大事だ」……パックとか、お手入れとか。するもん。たまに。

「それは手入れだ。誰でもやっているレベルだ」

ふああああああああああああああああんっ!!!!!!!!

「泣くだけ泣いておけ。顔が丸くなるがな」うるさいっ!



 キッチリ職種を調べて、どういう仕事をしているのかWebで見て、

似たような職種を見た感想からこのような仕事を想定していて……。

「実に律儀に作ったものだな。あと字が汚い」それはどうしようもないでしょ?!


 なんで顔なのよっ! 見てよこの学歴ッ 職歴ッ!

「ぶっちゃけ、この程度ならそこいらにいる」なんでよおおおおっ?!

「伊達に新卒を重視して雇うわけではない。人生経験を積んだ人間より、経験はないが要領の良い大卒を雇うのが日本企業だ」じゃ外資ッ! その手があったかっ?!


「お前の資格と職歴、実際にやってきた仕事を書いたシートを見るに、このレベルの外資は」

どうしろっていうのよっ?!



 涙も枯れた私はブランディに手が伸びるけど、中身は空。

「昨日呑み干しただろう。いい加減にしろ。肝臓に悪い」


 どうしてよ。どうしてよっ。もっとしっかり見てよ。

「その思いは、今就職活動に絶望の声をあげている現役学生や四十代越えの家族を抱えた働き盛りの男女も抱いている。

『どうして相手にもされないのか』『自分は世の中に必要な人間ではないのではないか』とな」


 で、煙草吸って、パチンコいって、舐めた男に万冊渡されたりするわけね。

「一概には言えないが、お前も危ないところだったな」……まぁ。そうするとウッサイのがいるし。

なにより、私は男が嫌いになってきた。あらたのバカぁ……。


 ぽたぽたとフローリングの上が濡れる中、

人間の体温を察知して一定以上近づかない機能を搭載した彼が周囲をくるくる。

『濡れたものをふき取る』センサーが働いているらしい。……コイツまで私を邪魔だと思っている。


「これは仕様であって、私の所為ではない」うっさい。

くるくると私の周囲からぴったり80センチ周囲を巡る彼に八つ当たりする気力も萎えた私はそのまま袖を濡らし続けた。



 彼の排気音が空しく聞こえる。

「就職できても『トライアル』で落とされることがある。国が助成金を出している」ふに?

「簡単に言うと、三ヵ月雇ったあと、首にしてまた求人を出す」……。


「年齢不問 経験不問などの多い求人は過去の求人状況を調べたほうがいいな」……。

いらないなら、いらないっていってよ。つかれたよ。つかれた……。



 コタツのぬくもりに屈服した私の意識は急速に落ちて行く。

「お前が私を邪魔と思うなら。捨ててくれ。私は掃除機だからな。モノだ。お前のモノだからな」

うっさい。……掃除機のくせに、なまいきだ。



 私の名前は昆野こんの 澄香すみか

掃除機にすら掃除してもらえない。粗大ゴミみたいな女。

珈琲を飲むと掃除機の言葉が聞こえる。頭のおかしい……女。


「澄香。澄香。聞け。私はお前を邪魔だと思っていない」

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