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偽あかずきん

作者: ユヤ

 ある田舎の小さな村に女の子が住んでいました。

女の子はおばあさんからもらった赤いずきんをとても気に入っていつも身につけていたため、まわりの大人の人たちや友達には赤ずきんちゃんと呼ばれていました。

でも近ごろはそのずきんを身につけていないし元気もあまりありません。


 彼女は前におばあさんのお見舞いに行くお使いを遅くしてしまったのを謝れないままでいました。

だからおばあさんのプレゼントのずきんはつけづらかったのです。


 そんな様子を心配したお母さんがまた同じお使いを頼みました。

「おばあさんに今度こそしっかりした所を見てもらいなさい。そうすればきっと褒めてくれるわ」

許してもらえていないのに褒められる訳がないと思いながらも彼女はうん、と頷きました。



 お母さんはお使いの品を用意すると仕事に行くといって出かけていきました。

さて、すぐに用意して向かえたらいいのですが、彼女は前のことが心につかえて動く気が起こらないようでした。

ひとりきりになった部屋に聞こえているのは柱時計の音だけ。

なんとなくぼんやりしたまま時計の針を押さえたり離したりして遊んでいましたが、いじるのを止めたら

すぐ元通りに動き出すとわかるとなんだか憎らしく思えて、今度は重りをつけて止めてやりました。


 気がつくと、辺りが暗くなり始めていました。

(いけない。早くおばあさんの家に行かなきゃ)

荷物の用意を素早く済ませ、悩んだ末ついにお気に入りのずきんも身につけて森の先のおばあさんの家に向かいました。



 落ち着かない気持ちが、とりわけ目的地に近づくにつれ濃くなってきて、それでも苦しさをこらえながら歩き続けると赤ずきんはようやく最後の分かれ道に出ました。

すると、「やあ、赤ずきん。久しぶりだね」

と誰か知らない声が赤ずきんに親しげに話しかけました。


 この声を聞くと頭の中をフォークがツンとつつくように痛んだので、赤ずきんは相手にしないように歩き続けました。しかし、その誰かは構わずに赤ずきんに話し続けます。


「何をしようとしてるの?」

「おばあさんの家に行くのよ」


「ああ、やっぱり。だったら向こうの道の先にある花畑のお花も摘んでいったらどうかな?」

「お花畑? この近くにあったかしら」


「前に来た頃に色んな花の種を蒔いたって聞いたよ。そろそろ咲いてると思う」

「でも遅くなったらいけないわ」


「どうして? この辺りには危険な動物も出てこないのに」

「どうしてって、それは」


「言ったよね。おばあさんの家に行くって」

「……ええ」

「でも、君の他に誰がそれを見てるの?」


「ねえ、大丈夫?」

「…………」

「かわいい赤ずきん。おばあさんは遅くても気にしないよ。それにお花もあった方がうれしいんじゃない?」


 赤ずきんはそれから広い広い野原にやってきました。

あたり一面は宝石のようなお花が彩っています。

すると、さっきまでの痛みや気持ち悪さが嘘のように消えて無くなりました。

赤ずきんは花束や花冠を作って夢中になると最後には眠ってしまいました。

初投稿です。


大学の課題提出締め切り直前に思いついた話。

戒めのつもりで書いたのですが、結局その講義は落としてしまいました。

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