ふたり
目の前を2人組が歩いていた。2人は――
知人だろうか
恋人だろうか
きょうだいだろうか
親子だろうか
師弟だろうか
仲間だろうか
或いは、因縁を精算する為に、出会うべくして出会ったふたりなのだろうか
勇者と魔王だろうか
探偵と怪盗だろうか
作家と編集者だろうか。そう、例えば作家は締め切り破りの常習犯で編集者は、ようやく逃げ回る作家を捕まえた。或いは……
私は目を擦る。目の前を歩く者がいつの間にか1人になっていた
幽霊だったのだろうか
幻覚だったのだろうか
分身だったのだろうか
瞬間移動したのだろうか
UFOに連れていかれたのだろうか
高く高くジャンプしたのだろうか。私は空を仰ぎ見ながら歩く。いい天気だった。今日は、アイデア集めに適した日だ
気がつくと目の前を歩く者は2人に戻っていた。私がうつつを抜かしている間に戻ってきたのだろうか。例えば、靴紐を結び直すとかで1人が足を止める。もう1人は歩みを止めることなく前に進む。2人はそういうふたりなのだろうか
袖触れ合う他人だろうか
気の置けない悪友だろうか
交差点、2人組は左に曲がっていった。私は右側に向かっていった。私は横断歩道を渡り切ってから後ろを振り返る
もう2人組はどこにも見当たらなかった。