第6回 下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ大賞&冬の童話祭2025
転生したらカレンダーで、この1年を推しみなく。
2024年は366日。今年も予定はびっしりだった。
あなたのことを考えない日は、一日たりともない。
わたしの予定は、常に“あなたのスケジュール”である。
前世でも、わたしは同じことを言っていた気がする。
この家には、至るところに時計がある。あなたはいつも時間に追われてるのではないかと思えてくる。
もしかして、不思議の国のアリスに出てくるウサギなのかな?
小動物だと言われたら、あなたは納得してしまう可愛さなのだ。
その真の姿は、ウサギかもしれないし、ネコかもしれない。ハムスターでハムハムしていても違和感はない。
お友達はきっと、イルカあたりじゃないだろうか?
時間がなくて、いつもスケジュールがないと言っているのに、一体、いつ積み本を読んでいるの?
いつジムに行って、トレーニングをしているの? プールに入っているの?
今この部屋にいる瞬間も、分身がどこかで活躍してるんじゃないかと思えるほど、いつでも、どこにでも、世の中はあなたで溢れている。
テレビからも、ラジオからも、あなたの声が聞こえてくる。
そして今日も、誰かの心を明るく照らしている。
ときめきと、安らぎと、癒しをもたらしてくれる。
おや、晩酌タイムかな?
今日は何をもぐもぐしているの?
もぐもぐしているだけで、可愛いなんて聞いていない。
わんぱく食いもとても良い。
お弁当もぐもぐ鑑賞会とか、どこかで開催されないかな?
わたしはいつも、少年のようにはしゃぐ姿に見惚れている。
酔っ払うと、何故あんなに可愛いのか。
バブみマシマシである。
わたしこういう姿、嫌いじゃないです。
いえ、とっても好きです。
いつも何よりも、ファンファーストで、ファンの喜ぶ顔が見たいからとあなたは言う。
何を着ても似合うし、パツパツの白衣や丈が足りないジャージ姿でも素敵に見えてくるのは何故?
わたしは、推しの魔法にかけられてしまったの?
あなたは、寝落ちしながら寝言をむにゃむにゃ。
「月が綺麗だね……」
え、突然の愛の告白!?
ねえ、どんな夢を見ているの?
もうすぐ、年が明けちゃうよ?
この一年、わたしはあなたにとって、スケジュールを正しく伝えるルームメイトでいられただろうか?
今回の人生でも、わたしはあなたを推していた。
あなたに逢えてよかった。
いよいよ、2025年に“とちゅにゅう”する。
一年、お疲れ様でした。
12月31日、推し様のカレンダーに転生したわたしは、役目を終えた。
またどこかで、邂逅できますように。